2択

転移魔法で運ばれた場所は、すでに牢獄の中だった。


そして、刺客は、ここまで連れてくると、何も言わないでどこかに行ってしまった。


(まさか、何も言われないで、そのまま牢獄に連れてこられるとは…)


最初に、アインの前にでも出されて、罪状を言われるかと思ったがそんなことはなく、直接牢獄に連れてこられるとは思っていなかった。


それに、最後に魔術師を攻撃してしまったせいで、一切の弁明を受け付けてもらえないらしい。


(ここからどうなるだろうか…)


もともとは贅沢をするために税を上げた結果、今では、牢獄の中で、何も与えられていない。


別に罪人に対しての対処が悪いということではないが、それでも、何の説明もなく、自分がこれからどのような責任を取らされるのかわからないというのは、怖いものがある。


そんなことを考えていると、奥から全身装備の者がきた。


「哀れ。自身の欲の為に行動をして、まったく欲を満たせない状態まで陥るとは…

まぁ、それはいい。

今回はお前への罪が決まった。

貴族として、税金を勝手に上げてしまったことに関しては、普通の法律違反で、少しの罰金だけにしておこうと思ったが、今回、貴様は注意をしに行った魔術師を殺そうとした。

あいにく、その者はバルバロット帝国の軍人だったので大丈夫だが、それでも国の方から正式に送られているものを殺そうとしたことは、完全に国家反逆に関するものになるだろう。」


「つ、つまり…」


「罪は国家反逆罪、そして、判決は、最後に貴様に決めさせてやろう。」


「な、なんだと?」


「とはいっても2択だがな。

1つは死刑。2つ目は終身刑だ。

この国では、今はまだ人口不足には困っていないが、それでも、少しの人件費で、動かせる終身刑の者はできるだけ多いほうがいい。

しかし、罪の大きさ的に死刑でもおかしくない。

どちらを選ぶかは、任せよう。

また少ししたら来る。」


そして、装備を着たものは帰っていった。


(終身刑か死刑だと!

普通に考えて、終身刑を選ぶに決まっているじゃないか!)


もちろん彼も、人間だ。


死刑という確定した死よりも、まだ寿命で死ねる可能性がある終身刑のほうがいい。


(それに、終身刑中にこの国に革命でも起これば、もしかすると出してもらえるかもしれない。)


実際、過去にほかの国で、革命時にその政権によってつかまっていた囚人が解放されたということはあった。


その後、その政権は、度重なる粛清によって崩壊してしまったが、それでも最初のころは熱狂的な者たちによって絶好調だったが、それでも崩壊してしまったのだ。


(もしかすると、この国もそのようになるかもしれない。)


そのような淡い期待を抱きながら、彼は終身刑を決めるのだった。

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