拷問

結局終身刑を選んだのだが、ここからも問題があった。


「こ、ここまで過酷とは…」


すでに、こちら側を人間と思っていないとしか思えないような過酷な労働条件だった。


今回、バルバロット帝国側としては、終身刑の者に対する労働を収監所のほうにすべて任せてある。


彼らには、すでに人権はなく、国側の者が、何の理由もなく終身刑者を殺してはいけないというだけで、何かしらの問題があったら、殺してもいいことになっている。


そして、終身刑者に関しては、生産に関しては、この国は困っていないし、それどころか、終身刑者に関しては、収監所のほうが、食事を用意してあげなくてはいけないので、どちらかというと、終身刑者に関しては、邪魔でしかない。


しかし、殺せない。


ならば、どうすればいいか。


理由を作ればいい。


というわけで、この収監所では、とある労働をさせていた。


それは、穴を掘らせて、その穴を埋めさせるというものだ。


これは、ロシアのドストエフスキーが考えた最もつらい拷問というもので、人間、自身のやっていることに意味を見出せなくては、やる気を失ってしまう。


しかし、これは上からの命令ということで、聞いておくしかないのだが、自身がやっていることがまったく意味がないことに気が付いてしまっては、自身の存在意義が分からなくなってしまい、精神が崩壊し始めてしまうのだ。


「できるだけ早く狂ってほしいのだが。」


もしも終身刑者がくるってしまった場合は、殺すしかないということで、殺害の許可が出てくる。


つまり、今回の労働は、理由を作るためにやっていることなので、まったく意味がない労働なのだ。


(それにしても、こんなことをやらせて何の意味があるのだ?)


今はまだ、彼もなぜこんなことをやっているかはわからないが、それでも命令ということで、素直に従っている。


しかし、そのうち自分のやっていることがまったく意味のないことが分かってしまうだろう。


そうなってしまった場合、今までの労働はなにも意味がなかったということに絶望をして、発狂しなくても、少しは精神にダメージを与えられるだろう。


こうやってじわじわと心に負担をかけ続けて、いつか、寿命の前に殺してしまって、だんだんと収監者の数を減らそうとしているのだ。


「まぁ、これは禁止されていないしな。」


バルバロット帝国が、収監所に任せきっているので、起こってしまっているのだが、もしも発見されても、これに関しては禁止されないだろう。


何故なら、終身刑者に関しては、結局死ぬ未来しか残っていないのだから、できるだけ早く新たなる世界に転生させてあげたほうがいいと思っているからだった。


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