ファイアーボール

その後も、彼らは必死に特別ボスとの戦いを繰り広げていた。


しかし、特別ボスも、ただただやられているわけではなかった。


「なるほど…俺の劣化みたいな能力を持っているのか。」


そういったのは、ソロ部門での敗者復活を成し遂げたものだった。


彼の能力は、一度見た攻撃ならば二度と食らわず、その上、相手がもう一回同じ攻撃をしてきた場合、その攻撃を受け流して、カウンターを入れられることだった。


そんな彼の劣化というのは…


「このボス。我々の攻撃をだんだんと学習してきている。

そして、その上で自身の肉体を無理やり変化させている。」


この特別ボスに関しては、彼の言った通り、学習能力がついている。


それは、彼の能力ほど優れたものではないが、それでも少しずつ敵の攻撃を覚えて、相手の攻撃をよけられるようになることだ。


そして、モンスターだからこそできる対策法というのもあって、あえて自身の攻撃を止めて、回復に専念することによって、挑戦者が放った魔法に対する抗体も少しずつだが、でき始めていたのだ。


「だからか…うちの魔術師の攻撃でなかなかひるまなくなってきているのは気づいていたけど、そういうことだったのか。」


実際、彼らには見えていないが、ダンジョンマスターであるアインからは、ボスの体力ゲージのようなものが見えている。


それはだんだんと回復をしている。


しかし、このスペシャルステージに関しては、どれくらいダメージを与えられたかによって決まるので、別にボスの体力が回復しているからと言って、彼らの特典が減るわけではない。


しかし、最初のほうでは、回復が追い付いていなかったのが、今では完全に回復が追い付いてしまっている。


これは、ボスに当たっている攻撃が少なくなったうえで、彼らの説明していたように、このボスの魔法に対する抗体の向上によるものだろう。


(しかし、少しだけ自我を持たせただけで、ここまで強くなるとは…)


もともとダンジョンのモンスターに関しては、自我は基本的にない。


しかし、アインが自分の神力を使って、あえて少しだけ自我を持たせたのだ。


それでも、殺しをしてはいけないといったような倫理観などは与えていないので、このように攻撃をしているのだが、それでも自我によって、自分はどうやったら彼らの攻撃から耐えることができるのかを考え、そして自分の解決方法を見つけてしまったのだ。


(さ、ここまで学習したボスに勝つことはそう簡単にはいかないぞ。)


本当に、そこからは、だんだんとボスが挑戦者たちの動きを覚えるようになっていき、最後のほうでは、全然ボスに攻撃が与えられなくなってしまった。


そして、ボスは、最後にとてつもない疲労をしてくれた。


『ふぁふいれーほーう。』


全然喋れてはいなかったが、それでも挑戦者側が、牽制の意味を込めて使っていた、ファイアーボールを使ったのだ。


その威力は、その巨体に見合った大きさで、一瞬にして、残っていた者たちを業火の中に包み込んでしまったのだった。

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