報酬
「くそ!何が起きたんだ。」
挑戦者たちはいっせいに吹き飛ばされてしまったが、それでも魔力耐性が高く、その上、ちょうど、後ろにいったん退避していて回復をしている戦士が、何とか生き残ったのだ。
「こ、これは…」
彼が見たのは、仲間や共闘していた戦士たちが光になって消えていっている景色だった。
「そういえばあいつは!」
彼が振り返ると、初めての魔法で疲れた様子をしているボスが後ろにいた。
「い、一撃でこれをやったのか…」
しかし、今はボスも疲れている。
さすがに倒すことはできないが、それでも少しでもダメージを与えて、少しでもポイントを上げることができるのではないかと思った。
それに、今、ためらっても結局は1人ではボスに太刀打ちできないものなので、少しでもポイントを稼ごうと思ったのだ。
「や、やってやる。
少しでも死んでいってしまったみんなのために。」
そう言って、彼はボスに向かって走り出した。
しかし、それを簡単に許すボスでもなかった。
『ボォォォォォー』
だんだんと声帯を得始めたのか、最初に比べて積極的に声を出そうとしていた。
しかし、まだ会話という技術を得るほどの知識は得ているわけではなく、ただ、声を出せるようになってきて、新しく身に着けた技術を早く使いたいといった感じになっていて、叫ぶだけになっていた。
しかし、これはだんだんと知能が上がってきていることで、ボスは戦士に攻撃をした。
「さすがにこんな攻撃食らうわけ…なっ!」
ボスは攻撃を右によけられると分かった瞬間に、攻撃の手を関節の向きを無視して、無理やり戦士のほうに手を持っていったのだった。
そのまま彼は吹き飛ばされて、簡単に脱落してしまった。
『以上で、すべての挑戦者が脱落したことになります。
この後は表彰式、並びに賭けのほうの報酬のほうに入らさせていただきます。
しばらくお待ちください。』
今の攻撃でダンジョン内のすべての挑戦者がいなくなったことによって、あらかじめ撮ってあった音声が流れだして、大会の終幕が近づいていることを報告した。
それに、これから脱落した挑戦者たちにはしっかりとその結果を伝え、その上で彼らには報酬を与えなくてはいけない。
今回の大会で、彼らは強大なモンスターと戦って、心を痛めただろう。
しかし、その心の傷を上回るような報酬金を出してしまえば、彼らはこれからも参加し続けてくれることになるだろう。
「それに…」
今回、アインは自分が送り込んである冒険者ギルドの総本山のほうにいる者に声をかけておいて、この大会では、冒険者たちの評価にもつながるようにお願いをしておいた。
そして、冒険者以外の物たちに関しては、普通に商会の方の力を使って、それなりに欲しいものを渡せるようになっていた。
さすがに無理なものもあるが、それでも大抵のものに関しては、渡すことができる。
そのためにも、今回の大会では事前に欲しいもののアンケートをとっておいたのだ。
「それじゃあ、僕のほうも表彰式の準備をしようかな。」
そう言って、アインは、正装に着替え始めたのだった。
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