2人の森妖精
妖精というだけあって、綺麗な羽と不思議な雰囲気を纏っている。それに顔も整っており、ぶっちゃけ超タイプ。欲を言えば、もう少し育っていて欲しかった。いや、変な意味じゃなくて、年齢の話だ。
「さて、そろそろ話してもらえるかな?」
「は、はい!えと、サクラはサクラというのです!」
初めに名乗り出した彼女はサクラというらしい。淡いみどり色の髪に、白い肌、露出度の高い服は正装なのだろうか。
それにしても、この子は一人称が名前のタイプか。
とてもロリッ娘感があるな。俺はロリコンじゃない!
その後、全員の自己紹介が終わり、俺の番になった。昔から自己紹介って苦手なんだよな。
「あー、俺はエンドゥー・コース。冒険者なりたてほやほやだ」
「なりたて?」
「ほやほや?」
「暖かいの?」
反応がもう幼い。最後のやつ、暖かいの?って。その首を傾げながら言うのを止めろ、可愛いから。
「ああ、暖かくないから。それにしても何でこんなところに?」
「それなのですが…」
お、幼い見た目のわりに話が出来そうなのが出てきたぞ。ロングの髪を後ろで1つにまとめている。あれだな、大人っぽいことをしたい年頃なのかな?
「えっと…カノ、だったっけ?」
「はい。カノと申します。それで、此処にいた理由なのですが、簡単に言うと長の
「長?
「はい。この付近にある蘇生アイテムが必要だそうで」
蘇生アイテム?そういえば少し前にあった広場でそんなのを採ったような気がするぞ。
俺はストレージボックスを開き、アイテム欄から蘇生アイテムを探す。
えーと、蘇生アイテムの名前は『復活の枝』だったかな?…なんだこれ?『服従の首輪』?『幻影玉』?
スネイクドラゴンの群れを倒したときのドロップ品か。今は要らないな。
多くなりすぎたアイテムの中から『復活の枝』を選択し、実体化させる。普通の枝にしか見えないんだけどな。
「もしかして…これか?」
「そっ、それです!」
「…いる?」
「いいんですか?!」
手を胸の前で合わせ、ずいっ、と顔を近付けてくる。
森の妖精だからだろうか。自然の匂いがする。あああ、落ち着く匂いだなぁ。
「あのー?」
「っは!俺は…一体何を?」
「は?はぁ」
「お兄ちゃんが何を言っているのか分かんないけど、その枝欲しいなあ」
横からサクラが入ってくる。右腕を掴みながら、上目遣いで目を潤ませながら。
「よし!あげよう!」
「わぁー!お兄ちゃんありがとー!」
そんな目で見られると断れるわけないだろ。
他の妖精たちも飛び上がったり、文字通り飛び回ったり、様々な反応をしている。
それに両手に柔らかいものが…、両手?
右にはサクラ、左にはカノ。…え?カノ?!
「わぁーい!」
「わぁーい!」
なんかカノがサクラみたいになってる。元々子どもだろうけど、精神年齢が一気に下がってるぞ。
頬を腕に擦り付けながら、ただひたすらに喜んでいる。もうみんな落ち着いてるんだが。
「えへへへ」
「カノさん?」
「えへへへへ…へ?」
ようやく我に返ったらしいカノは頬を一瞬で真っ赤に染め、
何をするのだろうか?
「う、う、う、うわああああああ!」
カノの叫び声と共に俺の視界は歪み、次の瞬間、俺とカノは南国ギルドにいた。
「コース?」
それも、食事をしているハノナとグリアと相席をする形で。
「それで?コースはその娘を口説いていた、と」
「まて、それは違う」
「くどっ?!」
俺は今、ハノナとお話し中だ。ハノナはかなり不機嫌で、剣に手を掛けている。いつでも戦えるぞ、と言わんばかりの威圧感だ。戦わねえよ。
「そうですっ!私がこんな男に!」
「そうそう。お兄ちゃんはサクラのなの!」
うんうん、お兄ちゃんはサクラのものだぞ。賢いなー、サクラ…は。サクラ?
「さっきまで居なかったよな?」
「あ、ああ。あたしも今の今まで気付かなかった」
ハノナも気付いていなかった。気配を消していたのか?
「うんっ!さっき魔法で来たの!」
「何っ?!それは転移術か?!」
グリア、うるさい。ハノナも冷たい目で見ているぞ。カノなんて怖がって俺にしがみついている。
サクラは気にしていないが。
「うんっ!そうだよ!」
「そんな!馬鹿な!あれは最高位魔術師である
そうなのか?と、俺はハノナに視線を送る。ハノナはそれに気付いたのか、頷いて返事をした。
「へー?そうなの?まあ、どうでもいいや。ね?お兄ちゃん?」
「こ、こらっ!離れなさいサクラ!」
「えー?いいじゃない。ほらっ、カノも反対の腕空いてるよ?」
そう言いながら、俺の腕に抱きついてくるサクラは柔らかかった。余計な肉が付きすぎていない、かといって全く付いていないというわけでもない。
「コース!デレデレするな!」
「してません!」
何故俺が怒られる。世の中理不尽が一杯だな。なんて黒い世界だ…。
「そんなことより、サクラ。他のみんなはどうしたの?」
「うん、里に帰ってもらったよ。サクラたちはお兄ちゃんに付いていくって連絡済みだからね!」
「「「「…え?」」」」
全員の声が重なった。
「え?…お兄ちゃん?もしかして嫌だった?」
目をウルウルさせながら俺を見つめるサクラ。こうなれば俺に拒否権はない。全く、幼女は最こ…何でもないです。
「いや、大丈夫だぞ」
「やったぁ!」
こうして、森妖精族の精鋭がパーティに加わった。
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