蛇龍の王と雷の龍
俺達がリアイアしたクエスト『緑の妖精大捜索』はちょっとした問題になっていた。なんでも、クエストを受けた冒険者たちが次々に傷を負ってリアイアしたとか。
リアイアの理由は俺達とは違うようだが、誰一人としてクリアした者がいないらしい。
今、俺達がいるギルドでは、その話で持ち切りだ。
「しかし、あのクエストは何だったのだ!」
「まあまあ、でも確かに酷いクエストでしたね。依頼主も姿を見せないし、謎ですね」
この騒動、依頼主が姿を眩ませているために余計な疑惑まで出始めている。「このクエストの真意は『冒険者潰し』だ!」とか言ってる奴も居るほどだ。
俺はリアイア印の押されたクエスト用紙に目を落とした。
報酬:1500000G。ただの悪戯にしては莫大すぎる金額だ。この世界ではクエストをクリアすると同時に冒険者のストレージボックスへ報酬が送られる。つまり、クエストを依頼した時点で指定した金額は無いものと考えておかしくない。
なら、この依頼主は悪戯でクエストを発注したという可能性は低いな。後の可能性は、本当に1500000と言う金額を支払うだけの難易度を持ったクエストだった―?
だとすれば、今も毒沼に緑の妖精たちは居る―?
「おい?コース、大丈夫か?」
「どうしたのだ?」
考え込んでいると、ハノナとグリアに心配された。
本来ならば、ここで考えを話して一緒にクエストへ戻るのだが、今回に限っては俺の推測だ。グリアはどうでもいいが、ハノナを危険な目に会わせるわけにはいけないしな。
「いや、なんでもない。気にするな」
今回は俺一人で行こう。
クエストを受けるとパーティメンバーにも知られてしまうだろうな。探索という形で行くか。
「すまない、新しい武器の注文に行ってくる」
「あ、ならあたしも―」
「いや、俺一人で大丈夫だ」
俺はギルドを後にした。
さて、戻ってきたは良いが、早速だな。
俺は今、
俺は焉刃ラグナロクと黄昏一千を取り出し、群れへ勝負を仕掛けた。
『なんだこの童は?!』
『まずい!群れが壊滅するぞ!』
『逃げ―』
次々に言葉を発しながら息絶えていくスネイクドラゴン。戦闘開始から僅か2分と数秒。14体いた特別危険個体種は塵と化した。
今の戦闘でかなりの金額とアイテムを入手したが、気にしていられない。
ラグナロク、黄昏一千を仕舞い、俺は先へと進んだ。
数百メートル進んだ辺りで、広場のような場所に出た。中ボスモンスターの登場かと思ったが、特に変わった事はない。広場の真ん中で花を開いている樹を除いては。
「なんだ?あんな樹、見たことないな」
俺は樹の元まで足を進めた。
手を伸ばし、触れてみると、樹の枝が折れ、アイテムへと変化した。『アイテム名:復活の枝』、蘇生薬のようなものか。
どうやらこの広場は、このアイテムを入手する為のもののようだ。入手出来るのは確定か確率か、どちらにせよレアアイテムであることに変わりはないだろう。
俺は再び走り出した。
走った、と言っても素早さ9000オーバーの俺だ。馬よりは速い。この世界の主な交通手段は馬、または魔法だ。まあ、ぶっちゃけ俺が最速。
更に数キロメートルほど進んだ。
途中でスネイクドラゴンの群れと出会った以外は特に何も無かったな。いや、何か特別危険個体種とか言うのは強いって言ってたな。あれにみんなやられてたのか。
なんて事を考えながらスピードを上げると、すぐに大きな扉に辿り着いた。
「でっけぇ」
俺の第一声はそれだった。他に感想は出てこない、とにかくデカイ。
扉を開けると、中には紫色の沼と、その周りに見たことない草が生えていた。いかにも毒!って感じだ。スライムとは別の意味で気持ち悪い。
「さて、緑の妖精ちゃんは居…」
たけど。居たけど何か変色したスネイクドラゴンみたいなのに追われてる。
levelは34?!今までの敵とは別格じゃないか!妖精たちのlevelは8か。助けに行くしかないな、元からその予定だったし。
俺はラグナロクを取り出した。
(獄炎!)
『むぅ!何者だ!』
「ルーキー冒険者だ」
変色したスネイクドラゴンと妖精の間に獄炎の壁を張った。流石に消えない炎に突っ込むほど馬鹿ではないらしい。
獄炎の壁によって妖精たちが視界から消え、ターゲットを俺に変更したらしい。
じりじりと近寄ってくる。
『我はキングスネイクドラゴンだ』
安直だなー。何か考えなかったのか。
『貴様の名は何と言う』
「エンドゥー・コースだ」
『そうか。では!我から餌を奪った罰を受けよ!』
(断罪!)
俺はスキルを使い、その全てを斬り払った。
斬り裂いた毒玉は獄炎の方へ飛び散るが、同時に蒸気となって消えていく。なるほど、消えない炎とはこういうことか。
俺は視線を蛇王龍へ戻し、目を合わせた。
『ほぅ、あれを防ぐか。なるほど。中々面白そうだ。我も本気を出そう』
蛇王龍は背中の羽を使い、浮き上がった。今まで飾りだと思っていたから少し驚きだ。
『喰らえ!これが蛇龍族最強の技だ!』
「こ…れは」
蛇王龍は口から特大の毒玉を吐き出した。色からしてかなり濃度の高い毒だろう。
そして、俺の視界は紫に染まった。
足元を見ると、地面だった場所はドロドロの液体となっていた。だが、俺の身体は何ともない。何故だ?俺のスキルにそんなものは無かったし、装備品も初期…あ、インビジブルコートか。
忘れていたが、結果オーライと言うことで。
俺はラグナロクを仕舞い、神威を取り出した。
「はっ!」
神威で毒玉を斬った。
神威は封印中だったが、誰も居ないし、街じゃないし今回は良いだろ。
『馬鹿な!貴様、何をした!』
「何って…斬った」
『そんな…。ふざけるなぁぁぁぁ!!』
奥の手が破られて平常心を失ったか。
仕方ない、直ぐに終わらせよう。
「秘奥義―『雷切』!!」
俺は神威を振った。西国を本当の意味で壊滅させたスキルを再び発動し、蛇王龍を仕留めにかかる。
だが、神威から溢れだした雷は西国の時の比ではなかった。明らかにあの時より強い…!
俺は神威を振り抜かず途中で止めたが、既に溢れだした雷は龍を作り出し、蛇王龍を襲っていた。
『な、なんだ!この龍は!強すぎ―』
神威が作り出した雷の龍は蛇王龍を食い殺し、天へ昇っていった。
残された雷の残留は地面を這い、毒沼の姿を一瞬にして変えていった。
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