三十六カウント目:反逆者誕生


あれからまた数百の月日が流れ、人間の中で戦が起きるようになった。

人間はとても頭の悪い生物だった、自らの行動で人を殺し力でねじ伏せ。

自分が一番になりたいという欲望の赴くままに、争いを続けている。

天下の統一などという、くだらない人間の夢物語など、アスタルテ達神からすれば本当にくだらないことだった。

一億五千という月日で三しか進まなかった手の甲のカウントがもうすでに三十五になっている、気がつけばこんな数字になっているが。

九十九、そして百は、到底望みのない神に課せられた試練だった。

無理にやる必要は無いものの、この世界では人間が望めばたとえ神でも拒否権は無い。

ただ人間が神になるという形で不死になっても、それは肉体に負荷が掛かり永遠ではない。

持って二百と十年、五回の命だろう。

定命の物が不死になるのは、神に与えられた物でもなければ不可能だろう。

人間が神になるということは、代わりにその代償リスクを背負うことになるということだ。


「アスタルテ様、噂レベルの情報なんですが」

「なんだ?」

「一部の神が反逆を目論んでいるという情報が」

「主犯者はわかるのか?」

「トラント・スィスという神が」

「よかろう、その実が実ったときに実力の差という物を教えてやろう」

「さ、流石は神名を二つお持ちのアスタルテ様です」

「下がっていいぞ」

「は、はい」


神になってから気苦労が多い、威厳を保ったりしているのもそうだが、誰にも知られていないが神名ももうすでに一つ失ってる。


「ユーリいる?」

「はい、いますが」


先ほどの話を盗み聞きしていたのか、ユーリが近くにあった支柱からひょっこりと出てきた。


「もし、反逆が起きたときはユーリ君だけでも逃げろ」

「いえ、私はアスタルテ様と一緒に居たいです」

「すまない、私はカウントを100まで進めるつもりでいるのだ。君に神名を譲り渡した日から、心に決めている」


その時に創造神が居なければ、世界は終わってしまう。

その破壊を止める役をユーリは出来るはずだ。


近いうちに訪れるであろうと予感している自分の最後に、アスタルテは恐怖を感じては居なかった。

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