三カウント目:大切な者の存在


長い月日を経ったが一つ大きな問題が起きた、予定より相当早い五千年程で人類が誕生してしまったのだ。

大きくずれた計画は、結果的に今の人間が束になっても勝てないような生物を絶滅させるという最悪な選択をせざるを得なくなった。

神による生物の意図的な絶滅はやろうと思えば簡単だったが、だからこそ禁止されていた。

アスタルテの考えは簡単な物だった、意図的ではあっても存在を後の人類に伝えれば問題はないと。

そしてその考えを達成するためには、消滅させるという選択肢が消えるのは重々承知の上だった。

しかしその選択を皆に伝える前に馬鹿騒ぎされてしまったのだった。


「アスタルテ様一体どうするおつもりなのですか」

「このままでは人類の生存なんてものは完遂できませんぞ」

「騒ぐな、今人類の敵になり得る生物はどれほどいるんだ」

「生物の初期生成を行っていた者の話では、恐竜という生物くらいだと言っておりました」

「ならば大まかにわけて、山でも作って生き埋めにすれば良いだろう。そうすれば骨くらいは残る」

「流石はアスタルテ様、しっかりと後の時代まで存在を残す選択をするとは」

「世辞は言い早く行動しろ」

「はっ!」


一斉に動き始めた部下を見ながらゆっくりと肩の力を抜いた、そして全員がその場からいなくなると椅子に座り込みため息をついた。


「はぁ、やっと気が抜ける」

うつむいていると一人の部下がゆっくりと近づいてきた。

「お疲れさまですアスタルテ様、お茶を入れましたのでどうでしょうか?」

「ありがとうユーリ」

「私はノームです、名前などという名称はありません」

「名前くらいあった方がいいと思うけどね、他人に名前で呼ばれるって小さな幸せじゃない?」

「いえ、私のようなノームをわざわざ置いて下さっているなんて、それだけでも私は幸せです」

「そう言って貰えると嬉しいかな」

「それに不死にまでしてくださりましたし」

「それはユーリと一緒に居たかったからってだけだよ」

「ありがとうございます」


頬を赤らめていた、ユーリを見ながら入れて貰ったお茶をすすった。

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