反乱
なぜ、ギュッヒン侯は反乱をおこしたのだろうか。
軍でのギュッヒン侯の地位は絶対で、軍人なら誰でも敬愛するような人物である。
さらに、王を選ぶ七人の選定侯の一人として、
「噂では、ギュッヒン侯もすでに
シルヴィオのいうことが本当だとすれば、かつての英雄は歳を重ねて
息子が
「シルヴィオ君、ギュッヒン侯は反乱をどうおこしたんだ。そして、なぜ失敗したんだ」
またシルヴィオの、いたずらっ子のような表情があらわれた。自分だけが知っている秘密を、もったいぶって教えないときの子どもの顔だ。
「ローハン隊長、話せば長くなります。大隊長からの手紙もありますので、天幕に戻りませんか」
旅の疲れはどこかに行ってしまった。はやる心を押さえながら、うなずくと、私たちが使っていた天幕に向かう。バター茶が用意され、三人は毛皮の上に腰をかけた。これで話が長引いても大丈夫だ。
「よし、シルヴィオ君。反乱の経緯を説明してもらえないか」
なぜギュッヒン侯が反乱を起こしたか、それは誰にもわからない。だが、反乱の口実は「贅沢のために民から税を貪り、軍を衰退させて王国を周辺国から侮られる存在にした愚王を
は、五年前に十個軍団を四個に減らし、都に近衛軍団を置いて軍を半減させたので、たしかに軍を弱くしたということは事実だろう。しかも、その浮いた軍費がどのように使われているのかわからない。不満を持つ軍人が、ギュッヒン侯を頼った可能性もある。
ギュッヒン侯は、自領に駐屯していた北方軍団を
現在は国王側と反乱軍が対峙しているが、反乱軍が外国勢力を導き入れれば、わが国の存続すら危ぶまれる事態なのが現状だということだ。
「教官殿、俺たちが羊の世話をしているあいだに、本国ではとんでもないことになってますよね」
事前にきいていたであろうジンベジは、なぜかワクワクしたような表情で私を見つめた。
え、こいつは何を期待しているんだ?
国を二分する大戦争に、羊飼いの我々がなにをできると思っているのだろう。
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