二章 羽ばたく勇気

プロローグ 木の葉

 いつだって後悔している。

 あの日、あの場所、あの瞬間。

 こう言えばよかった。

 こうすればよかった。

 こう選べばよかった。


 そうしたら、きっとこんな思いもないのに。

 そうしていれば、動かなかった自分を責めなくて済むのに。


 お母さんの死に顔なんて、見たくはなかったのに。


――小川を流れる、木の葉のように。


 それは、お母さんの言葉。


――善き人々というゆるやかな清流に乗って、遠く遠くへ至りなさい。


 穏やかな陽だまりの縁側で、微笑むお母さんは頭を撫でてくれました。


 ……なら、流れることも流されることもできずに。


 未だその激情を憶える事も忘れる事も。

 あの光景に目を塞ぐ事も目を開く事も。

 この記憶から逃げる事も立ち向かう事もできずに――


 淡々と過ぎ行く水流せかいの中。

 あなたの死というを足に絡めて立ち止まる私は、誰なんでしょう。

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