たいへんご迷惑をおかけします
私は、自分を悪い存在だと、頻りに思っています。
何をやらかして自分を責めるのか。そう訊かれてしまいますと、おずおずと肩をすくめて顔を俯け、ただただ縮こまることしか出来ません。言葉で発するには中々に勇気のいることばかりなのです。ちょっとした失敗談ならいいんですけどね。
これもご迷惑はお掛けしていますが、ちょっとした失敗談ということで許して頂きたいです。
ただいま、彼の扉の前で土下座中で御座います。
「入れるから止めろって!人に見られちゃうから!早く入れ!!」
「ぼ、おんどに、ずみ、すびばぜんんんん!!(* ほ、ほんとに、すいません!)」
ここ最近で一番情けない姿だと思います。情けなさならベスト1です。記録更新。きっと、私が生きている限りこれからも更新していくことでしょう。出来る限り精進させていただきます。
さて、場面はポンっと変わり、先ほどの可愛らしい炬燵の前で再び彼と向き合ってます。
私は泣き止んで、扉の前で土下座していた理由について説明します。
「実はその、ここが何処だかわからなくて...」
「はい?」
うぅ...疑念の眼差しが辛い。あとちょっとした言葉でもビクビクしてしまいます。
「何処かわからないって...じゃあアンタ、どうやってここまで来たんだ?」
当然の疑問でした。駅はどっちですか。とか訊いても、電車を乗り継いでここに来たわけではありませんし、車を運転して来たわけでもないのですから、何処其処の駐車場までの道のりとかも訊けません。教えてもらっても私にはどうにも出来ません...
「そ、その現在地を教えていただければ、それで十分...ではないですね...出来れば地図を見せてもらいたいのですが」
「...そもそも、どうやって俺の部屋がわかって...あ〜...」
彼は顔を両手で覆って、あーうーと唸っています。
「教えてもらえれば、直ぐに消えますので。それだけでいいんです」
「わかったよ...いま、パソコン起動するから...」
そういうと別の机にあるノートパソコンに電源を入れました。
「なんで今どきスマホ持ってないんだろうなー俺」
力なく、独り言なのか私に向けているのか分からない言葉を発する彼をみて、申し訳なく思う他ありませんでした。少しでも返答できれば良いのですが、ビクついて声が震えっぱなしでは、余計に苛立たせてしまうかもしれないと思うと、何も言えないのです。
「ところで...」
「はいぃ」
「地図を見せる前に、ちょっとその帽子の中身見せてもらえないか?」
「えっえっ...り、理由は?」
「アンタ、さっきそれに話しかけてただろう。なんか、もう、色々と気味が悪いんだけど、今一番気持ち悪く感じるから。ハッキリさせといた方が良いのかなって」
「あっ、はい」
とても胸がズキズキ傷みますが詮無いことです。
「一応言っときますが...たぶん、理解しがたいと思います」
「もうどうでもいいから見せてみてくれ...」
あ、白目剥いてる。
所謂、SUN値直葬に近い状態なのかもしれません。後で処置を施さなきゃ。せめてものお詫びです。
「えっと、じゃあ...カイくん。出ておいで」
と、帽子を脱いで被る方を上に向けて呼びかけます。
カイくん。私の大切な家族で、私の最初の悪行の証拠です。
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