第5話〜家を買おう!〜
「うわっ、デカ!」
俺の目の前には豪邸が広がっていた。
それは3時間前のこと…………
「そう言えば俺女神さんから家買うための金もらってたわ!」
治療所を出た俺はシーラから金をもらっていることを思い出し、そんなことを口にした。
「えっ!?お金あるんですか!先に言ってくださいよ!」
まあ、当然ユイには怒鳴られた。なんせあんな目にあったしな…。とはいえ、俺もコイツに言いたいことは山ほどあるぞ?まあ、それは後でたらふく言ってやるか。
「という事は私の出番のようですね!」
俺が考え事をしていると、突然ユイはそんなことを言い出した。
「は?どういう事だよ?」
「フッフッフッ…、実は私、知り合いに不動屋の店主がいるんです!」
へぇー、この世界にも不動屋あるんだ。ってえぇ!ユイの知り合いに不動屋の店主がいる!?マジか!コイツが遂に役に立つのか!
「マジかユイ!そんじゃ早速行こうぜ!」
「はい!」
そして俺たちは1時間ぐらい歩きやっとたどり着いた。なんかめっちゃ汚ぇ訳あり物件しか紹介しなさそうな、まぁなんというか…、ヤバそうな不動屋に!
「なぁユイ、ここ大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ!私の知り合いですよ?絶対安心です!」
なんでそんなに自身満々なの?逆に不安なんですけど……。
「あ、うん…」
そんなやり取りをしていると店の中から40代ぐらいの貧相な格好をした男の人が出てきた。
「いっらしゃいませ〜!おやおや、ユイさんじゃないですか〜!どうしたんですか?」
「あ、こんにちはおじさん!今日は家を買いに来たよ〜!」
「おぉ!それは嬉しいな!さあさあ入って入って!」
俺たちはユイに「おじさん」と言われた男の言われるがままに店の中に入った。そこで俺は思った。
本当にここの店は大丈夫何だろうか………。「ようこそ!アスカ不動産屋へ!」
入っちまった…。
そう、俺たちは今、家を買うためにユイの知り合いであるアスカさんの不動産屋に来ていた。ていうかアスカって…。名前を悪くいう訳では無いが、中年男性、少し老けた顔、そしてちょっとぽっちゃり、これ程の要素を持ち合わせた人の名前が「アスカ」…。何だろう、コレジャナイ感が凄い…。
「お、お邪魔しま〜す…」
「さあさあ、このパンフレットに家が載っているから、気に入ったのがあったら声をかけてね〜!」
名前はコレジャナイ感が凄いのだが性格は良いっぽい。そして、俺はそのパンフレットを見て、良さ気な家を探し始めた。
そして、20分ぐらいが過ぎて俺は「これ良くね?」と思えるような家を見つけた。それは、4LDK、そして2階建て、家具は一式全て揃っているにも関わらず100万円!幸い俺は200万ぐらいは持っている。しかも、俺達が住むには少し広すぎるぐらいである。
「あの〜すいまっせ〜ん!」
「はいはーい!少々お待ちを〜!」
俺はアスカさんを呼び気に入った家が見つかったことを言った。
「この家ですね!OKです!それじゃあ早速購入といきましょ…」
「えっ、いや、ちょっと待ってくださいよ!下見とかないんですか?」
「えっ!いや〜…、あっ!隆吾さん!ほら外!日が暮れできましたよ!早く買わないとヤバいですよ!」
「えっ!いや、ちょ…、下見ぐらいさせろよーー!」
俺は反抗したのだが、アスカさんの気迫に負けて家を買ってしまった。
「やりましたね隆吾さん!念願のマイホームですよ!」
ユイはとても嬉しそうである。いいなぁコイツは。こんなに気楽で。俺はストレス溜まりまくってんのに!
そして何やかんやあって歩く事1時間。夜の7時ぐらいになっていたがようやく俺たちは家に到着した。
「うわっ!デッカ!」
外見は凄く立派な屋敷だ。
そして俺たちは家の中に入った。その直後に見た光景を俺は生涯忘れる事は無いだろう。
壁は染みだらけで、床は穴だらけ、家具は少し汚れたりしているが壊れてはいない。まあ、要するに、
「クソ汚ぇ……!これ片付け終わった頃にはもう日明けてるぞ!?」
俺は振り向いて、ユイにそう言うと、
「ほあぇぁ〜」
なんか変な声を発しており放心状態である。そして俺は思った。コイツに頼るとろくな事がおきん!
しかし、俺はそんなことを言っていても時間の無駄だと思い渋々掃除を始めた。
「し、しんどい……」
俺は家の窓を開け、上を見上げた。そこには雲一つない青空が広がっていた。
そう、俺は今、昨夜買った家の掃除を一睡もせず、徹夜で頑張っていた。そして、この家を買う原因になった張本人は最初に掃除を終えた寝室でぐっすりと眠っているが……。
しかし、周りがゴミで溢れかえっていて、なんか異様な臭いがする部屋で寝ているのだから怒る気も失せ、むしろ感心してしまう。
しかし、俺にも限度というものがある。
ユイは俺より年下だ(まあ、直接年齢を聞いたことがないので確証は無いのだが)。なので、7時間位寝るのならば許せる。多分、ユイも疲れているだろうから。
しかしだ、今は午前10時、そしてユイが寝たのが昨夜の午後10時。つまり12時間もねている。という事は、12時間俺は休みもせずに家の掃除をしていることになる。
まぁ、何が言いたいのかというと、
俺は我慢の限界だ!!!!
「起きろーーーーーー!!!ユイーーーー!!!」
「ひゃいっっ!!!」
鼓膜が破れるかと思うぐらいに叫んでユイを起こし、30分間の制裁を与えた後に昼ご飯兼朝ご飯を作ってもらった。
「よし!やるぞ、ユイ!」
「はい!この家を綺麗にしましょう!」
昼ご飯を食い終わりただ今午後1時、俺達は掃除を再開した。後残っているのは、部屋2つと、洗面所である。夜までには絶対に終わるな。俺はそう思い部屋の掃除をした。
そして、部屋の掃除が終わったのでユイの様子を見に行った。そこには想像を絶するような光景が広がっていた!
「ユ、ユイ……、何やってんだ…?」
「おぉ!これは隆吾さん!いやぁー、掃除をしていたらよく分からない虫達がうじゃうじゃ出てきたので集めてたんですよ!」
そして、俺はユイの足下をみた。そこには見たこともない気持ち悪い虫達が沢山いた。
俺はそいつらを見た瞬間にそいつ等を認識することを止め、即座にリビングへ逃げ出した。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そう、何を隠そう!俺はだいの虫嫌いだ!のにも関わらずなんか後からユイがその虫を持って、追いかけてくるではないか!
「や、やめろーー!俺は虫が苦手なんだーー!」
「えっ?なんて言ったんですかーー!?よく聞こえませーん!」
いや、聞こえるだろ!俺は心の中でツッコミを入れ逃げまくった。そして、追いついてきたユイをスルりとかわし目の前の壁にぶつけてやった。
「捨ててこい…!」
「す、すいません…。調子に乗りすぎました…。」
そして、午後7時。俺はリビングに立っていた。そう、なんやかんやあったがやっと掃除が終わったのだ!丸1日かかったが……。
「やっと終わりましたね!隆吾さん!」
「あぁ!そうだな!明日からはゆっくり暮らせるぞ!」
ユイは笑顔ではしゃいでいる。そして、俺はこの1日の事を思い返していた。とても大変でしんどかったがなんだか楽しかったなぁ。しかし、明日からはゆっくり家で過ごせそうだ!
俺がそんな事を考えていると、ユイが話しかけてきた。
「そう言えばお金はあるんですか?」
「そりゃあもちろん!この家が安かったおかげでほら!この財布の中に100万円ぐらいあるぜ!」
そう言いながら俺はユイに財布を渡した。
「当分はクエストに行かなくてもいいな!」
俺が笑顔でそう言うと、
「あれ?この財布の中身空っぽですよ?」
は………?
「ちょっと見してみろ!」
そう言い、ユイから財布を奪い中身を見てみると、
「なんで…!中身が空なんだーー!?」
そう叫ぶと同時にある事を思い出した。
そう言えばこの家を買う時に100万円数えるのが面倒くさくて財布ごとアスカに渡したんだった………。
「やっちまったーー!」
「ど、どうしたんですか!?隆吾さん!」
「ユイ、明日から仕事頑張ろうな………」
俺はその場に倒れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます