第6話 湖の都
その頃、ガルは湖の国の野営地で一人用テントに居た。眠れなかった。早く高貴な品を届けなくては。しくじれば、ラッカード全ての首が飛ぶ。砂漠の旅は予定通り続けられた。だが、安全地帯に入った以上、ぎりぎりまで二人を待ちたかった。盗賊にとらわれた場所から一番近い安全地帯はここだ。隙をついて逃げたなら、この野営地を目指す可能性が高い。
テントの入り口から、声がした。
「伝書鳥が着きました。お手紙です」
ガルはテントを飛び出した。
隊の者が見守る中、手紙を受け取り開封した。
読むなり、その場に座り込み、立てなかった。飼育係が駆け寄り、ガルから手紙を受け取って読んだ。飼育係は、喜びの叫びをあげた。
「アシャも、ヴェンも無事だ。砂漠の都の屋敷に戻った」
歓声が上がり、泣き出す女たちも居た。
飼育係は続けた。
「湖の王子の換羽の儀に向かう砂漠の王の一行とともに、二人はこちらに向かうそうだ。良かった、タフトの世話に困っていた。やっとヴェンが来るか」
冗談めかしながら、うれし泣きする飼育係に、誰かが言った。
「あなたが世話した方がいいわ。お腹が引っ込むわよ」
「貫禄が無くちゃ、ガル・ラッカードの商隊の威厳を保てない」
飼育係が言い返す。
「大丈夫だ、どんなに頑張って汗水たらしても、お前が痩せるより早く、ヴェンが戻る」
ガルが軽口をたたくと、皆は笑い声をあげた。
「娘アシャと、末息子ヴェンのために、皆には心配をかけた。今夜は祝いの酒をふるまう。心ゆくまで飲んでくれ」
ガルは祝宴の開催を告げる、自分用のテントに戻った。絨毯の上に膝をつき、竜を模った銀製のネックレスを額に当て、西に向かって祈った。
ガルがアシャの養い親になった経緯はこうだった。
今から十七年近く前の事だ。
ガル・ラッカードは、ある夜、砂漠の王宮に呼び出された。夕刻に王子が生まれた褒美として、今すぐ宝石を王妃に与えたいと王が言ったからだ。
ガルは金庫の宝石をいくつか取り出し、王宮に向かった。王と王妃の会話に付き合い、お二人をほめそやし、にこやかに笑いながら宝石(いし)の説明を繰り返した。全ての宝石を買ってもらう事になったのは、深夜だった。
いつもなら危険な深夜の移動は避け、王宮の商人控室で朝を迎える。都の門は朝日と同時に開かれ、日暮れと同時に閉ざされる。王の特別な命(めい)が無い限り、開けてはもらえない。だが、その夜は違った。どうしてもすぐに屋敷に帰りたかった。二人目の妻は卵を産んだばかり、心配だった。共の者は城に残し、開門許可証を携え、屋敷に向かった。
一人目の妻は、ヴェンが孵化した半年後に、流行り病で死んだ。
妻は一人で十分だと思っていた。だが、長としての立場や、周囲の勧めに折れ、ヴェンが三歳になった後、二人目の妻を娶った。
卵が産まれる少し前から、騒がしい息子たちは湖の屋敷に行っていた。今、砂漠の屋敷は人が少ない。不用心だ。ガルは大急ぎで屋敷に戻った。
ガルが屋敷に着いてみると、門の一部が壊され、門番は片足の先を残して消えていた。庭に駆け込んだ。庭には、引き裂かれた衣類と血しぶきが点在していた。ざわざわと泡立ち波立つ胸を押さえながら、屋敷の奥に進んだ。屋敷の中も同様だった。屋敷の者は誰もかれも食い殺されていた。腰の剣を二つとも抜き、低く構えて奥に進んだ。
屋敷の一番奥にある、卵守と妻が眠る寝室も、その例外ではなかった。妻が今朝身にまとっていた緑色の薄布は、細かく引き裂かれ床に散っていた。開けた扉が起こした風で、布の残骸が舞い上がる。ガルが巻いてやったはずの赤い宝石の首飾りは、千切れてバラバラになっていた。蝋燭の灯りをちらちらと赤く反射するのは、宝石なのか、妻の血なのか。
濡れた赤が一番多かったのは、いつも卵守が寝ている場所だった。かんざしが落ちていた。卵守は寝室から引きずり出され、奥の廊下でやられたようだ。引きずられた血痕があった。卵守の体は何一つ残っていなかった。卵の殻が、床に転がっている。中身は喰らわれ、全て舐めとられたのだろう。床のその部分だけ、まだわずかに湿っている。ほんの少し前に、この惨劇が行われたはずだ。
あと少し、帰りが早かったら。
腸(はらわた)から何かが湧き上がる。獣のような声があたりに響く。自分のものとも思えないその叫びを、止められなかった。
どんなに叫ぼうとも、誰も答えない。残っているのは、止まった空気に漂う、甘い血の匂いと、無残な痕跡、砕けた殻だけだった。
ガルは、床に崩れ落ち、右手で床を殴った。拳が切れ、床を朱に染めた。
叩きつけた拳の横で、模様のあるかけらが揺れる。妻が付けたヘルダの印だ。ガルはそれを拾い、額を押し付け、懐に入れた。
それからしばらく、ガルは我を忘れていた。誰が見ても砂漠狼の襲来だと分かるのに、砂漠狼の仕業に見せかけた悪人の仕業を疑い、盗人や流れ者達を調べあげた。まじないで砂漠狼を操ったのではないかと、占い師や呪い師も調べ上げた。
都の門の外に居れば、砂漠狼の襲来の危険がある。都の護りの外にしか住めない行商人や農村には、良くある事だ。しかし、今回のように、都の門のすぐ手前まで砂漠狼が入り込み、豪商の屋敷に侵入したのは初めてだ。その夜、襲われたのはガルの屋敷だけではない。何軒かの商人の屋敷がやられた。
砂漠の竜は、砂漠の民と砂漠を旅する商人の守り神だ。竜を怒らせる悪事を働いた商人は、砂漠狼が差し向けられると昔からの言い伝えがある。豪商の屋敷に蓄えられた食料の中に、人間が手に入れてはいけない竜の香草が混じっていたせいだとか、掟を破って、卵を抱えた卵守の取引をした罰が当たったとか、そのような噂で町は持ちきりだった。
ガルは、一般の人が知っている噂より、少し詳しい事柄を知った。襲われたのは、卵を抱えた卵守のいる屋敷。そして、卵守は全て殺された。
同じ時期、ダルチ王も悲劇の最中に居た。
孵化した翌朝、王子は忽然と消えた。王子を連れ出した犯人を追っているのか、連れ出した張本人なのか、宰相ボロー・オビスも、東に向かったまま行方不明だ。幾人かの側近とボローの息子も居なくなった。
二つの悲劇は関連付けられ、町の噂はさらに大きくなった。王は神を鎮めるため、砂漠の竜が住む西の果てに、生贄と貢物を携えた神官を旅立たせた。
葬儀が終わった後、ガルは怒りに飲まれた。砂漠狼を退治する計画に執着した。周囲の意見を聞き入れず、同じ目に遭った豪商数人と、何度も砂漠の奥まで狼退治に向かった。
ある日の帰り道、砂漠をさまよう男たちをガルは助けた。彼らに水と食料を分けた。彼らは水の代わりに金銀を差し出した。自分たちとは別行動で都に戻って欲しい、必ず迎えに行くから卵守を預かってくれと頼んだ。何を言われても、自分以外の者には絶対に卵守を渡さないように、男は繰り返し頼んだ。ガルは男の願いを受け入れ、卵守をこっそり屋敷に連れて帰った。
卵守を預かってから、喪失の苦しみや狂暴な感情が凪いだ。湖の都の屋敷から息子たちを呼び戻し、これまで以上に子供を慈しんだ。
まだ小さくて事情が呑み込めない息子たちは、偶然やって来た迷い卵守は自分たちの新たな兄弟を抱えていると思ってしまった。義理の母は産卵のせいで死んだと捉えた。息子たちにとって、その方が辛くない。初めは否定しなかった。本当の母親が傍にいないせいで、卵が孵化するまで丸二年かかった。母親が傍にいないと、卵守は自分が本当の母親だと錯覚してしまう。卵守の子供は、丸二年、母の育児嚢にいるからだ。やっと孵化したアシャが、見るからに砂漠の民ではなかったため、ガルは改めて息子たちに真実を説明した。それでも、アシャはラッカードの娘として受け入れられた。
ヴェンは誰よりもアシャを大切にしていた。
噂によれば、ガルに卵守を預けたと思われる男は、都の門の衛兵に捕まり、城に連れていかれたらしい。王子が行方不明になっている事件と関係があるとかないとか、噂を伝えてきた者もはっきり知らない口ぶりだった。兵に捕まった者なら当然のことだが、男は帰って来ず、アシャの命を守るため、ガルも口を閉ざしてきた。
ラッカードの隊の者以外、アシャの出生の真実を知る者は居ない。混血の家系は、時として、見た目が親兄弟と全く違う子が孵化することもある。だから、珍しがられることはあっても、とやかく言われることはなかった。
ヴェンは、ガルの最初の妻の忘れ形見。面差しもよく似ている。ガルは溺愛していた。体力の弱った妻が産んだせいか、ヴェンは幼い頃、とても病弱だった。今は強い男になり、体が小さい以外、かつての病気など嘘のようだ。線は細くても筋肉は強くしなやかで、動きも早い。弓や剣での戦いはめっぽう強い。
身軽さを武器にして、当代一の鳥使いと呼ばれるほど騎鳥に長けるまでになった。ヴェンは、誰もしなかった類の騎鳥をする。砂漠鳥に跨り走るだけでない、空を飛ぶ鳥にまで乗るのだ。大きな猛禽類ウルン、中でも特に大きいタフトの影が地に落ちると、砂漠の人達は空にヴェンがいると知る。その影を見るだけで、暴漢に襲われている者は安堵し、悪事を働いていた者は慌てて逃げ出し物陰に隠れる。鳥に乗って商隊の仲間や砂漠の民を助けるヴェンは、若くして、既に伝説の人だ。
だが、病気の影響は少なからず残っている。砂漠の男は十四にもなれば換羽を終え、十六で卵を儲けられる。しかし、ヴェンは十七になってやっと換羽を終えた。見た目も歳よりずっと幼い。母親に似た整った童顔と小柄な体格のせいで、既に十九だというのに少年に見える。本人は気にしているが、その姿を好ましく思う娘たちも多い。
ヴェン自身はおてんば娘のアシャの世話にかかりきりで、自分に向けられた娘たちの視線に気付いていない。
アシャとヴェンは仲の良い兄妹として育った。成長しても変わることなく、絆は深い。幼い頃は、それでよかった。
時は過ぎた。ヴェンの見た目がいくら若くて中性的でも、中身はただの十九の男だ。もう子供ではない。二人の距離を取らせるべきだ。わかっていながら、踏み切れないでいた。
晩熟の可愛い末息子のヴェン。何よりも大切なヴェン。命が無事だったのは、幸運だ。しかし、・・・・・・。
ガル・ラッカードは、小さくため息を吐いた。
あと数日で換羽の儀。湖の都は、各地、各国から集まった人でごった返していた。
湖の国の王室では、何世紀もの間、換羽時期まで王子が命を長らえることはほとんどなかった。まず、孵化できない。しかし、リュイ王子は健やかそのものだ。王室はそれを祝し、これまでになく盛大に儀式を行う事にした。
湖の国の換羽の儀は通常、十年から十五年ほどの間隔で行われる。換羽を迎える王族の少女たちが儀式に参加する。儀式の最後に、彼女たちは湖に入る。湖で育つ天然の真珠貝を探し出し、斎場に戻る。貝を開き、一番大きく美しい真珠を見つけた者が次の王位を継承する。
だから、湖の国の王位は直系とは限らない。
今回は十七年ぶりの開催で、王子と共に四人の姫が参加する。
王子はもう十六歳。二か月後に十七になる。王子の換羽は、十四の夏にすんでしまった。湖の民の男子としては早い。換羽前後のきゃしゃな姫たちの中に立てば、長身で筋肉質の王子は目立つだろう。換羽の儀が遅くなったのには、理由があった。王子は泳ぎと真珠選びが苦手だった。儀式を行える程度に泳げようになるまで、開催を見合わせたのだ。王子は、王位継承者選出の儀式を辞退したがった。通常の時期に、他の王族たちだけで開催してもらうよう提案してきた。だが、王子の資質を認める王族や家臣が、参加を説得し続けた。
王子は国民からも愛され、国民が王子の儀式参加を熱望している事実も、開催を遅らせた大きな要因だった。王子は他の面で、特に学問や武術では素晴らしく、おおらかで明るい。国中が熱狂する湖の国の王子としての地位に胡坐をかかず、謙虚で努力家。その人柄に人気があった。王族にもかかわらず不得意なものを公表していること、そして、努力で克服していく姿に、民は共感できた。
遠くから見聞きする民でさえそうなのだ。近くにいる者は、その魅力にあらがうことはできない。
今日は、砂漠の豪商ガル・ラッカードが、換羽の儀の金の冠を王宮に納めに来ていた。
「面を上げて楽にしてください」
ウリ・ヤルブ女王自身は、三十歳を超えた。多くの女性はすでに結婚し、いくつか卵を産んでいるはずの歳だが、女王はまだ独身。金の冠と、換羽の儀で自分が見つけた桃色の真珠の首飾りしか、宝飾品は身に着けていない。質の良い布で衣装を作らせるが、床を引きずるようなスカートやマントは嫌いだ。簡素を好として、華美を嫌う王室でありたい。
ガルは、優美な紺色の地に銀糸で刺繍を施した短い裾の服を着ていた。ほかの商隊の長より一歩先を行った服装だ。女王の好みに合わせてきたのだろう。思わず目を細めた。
「お目にかかれて光栄です。陛下」
「わたくしもうれしいです、ガル・ラッカード殿。今日は、リュイ王子の冠を持ってきてくれたと聞いています」
リュイ王子は慌てて否定した。
「何をおっしゃいます、ウリ女王、王冠は私のではなく、次の王位を継ぐ者の王冠なのですよ」
「正しくはそうです。でも、リュイ王子、あなたに違いないと、わたくしは考えています」
「王冠はこちらに」
ガルは青と白の蔓模様の木箱を取り出した。組紐をほどき、手袋をはめて、中の品を取り出した。品を包んだ白い柔らかな布をゆっくりと取り去り、前に据えられた台に乗せた。
「簡素な中に優雅さがありますね。良い品です。リュイ王子、手に取ってごらんなさい」
「はっ」
王子は短く答え、がっちりした手で布越しに冠を取り上げた。
「優美であるのに、勇ましさを感じ、かつ格調高い冠です。素晴らしい。しかも、見た目に比べて重い。金の量が多いようですね」
「おっしゃる通りです。王子様は武勇に秀で、絵画や美術、文学に造詣が深いお方だとお聞きしています。その内面に見合う冠をと、職人に頼みました。硬度を保てる限界まで、金の含有量を上げさせました」
「ありがとう、ガル。換羽の儀にぴったりの品です」
「装飾品と言えば、湖の民が最も得意とする所。湖の国の職人が作った品々と比べることなく、私の品に決めてよろしいのですか」
ガルは驚いたようだ。
思わず、声を上げて笑ってしまった。
「誤解させてしまったのですね、ガル。在位が長い国や、同じ冠を代々使用する国なら、何人かに品を作らせて選ぶでしょう。しかし、湖の国は、ほぼ十年ごとに冠を用意します。一人の在位に、一つの王冠。だから、今回の換羽の儀の冠を依頼したのは、ガル、あなただけです」
「これまでの依頼は全て湖の商人にしていました。私が、ガル・ラッカード殿を女王におすすめしたのです」
王子ははにかみながら説明した。リュイ王子とガルが並ぶと、叔父と甥のようだ。王子の瞳は、ガルと同じ褐色、皮膚も黄色く、髪の色も濃い。二人はよく似ている。不思議なことだ。
「リュイ王子様が望まれたのですか。まことに、光栄です」
「鳥使いのヴェン・ラッカード殿も来ているのですか」
「申し訳ございません。ヴェンは現在、ダルチ王の一行と旅の途中です」
「彼に会いたかった。私も鳥に乗って空を飛んでみたい」
「リュイ王子、いけませんよ。危険ですから」
眉をひそめてしまった。賢い王子なのに、時々、幼い子供のように冒険したがる。
リュイ王子は、前女王である姉の息子に当たる。リュイ王子の母、長女の前女王フフ様と末娘のウリ女王とは、大きく歳が離れていた。突然のフフ様の死で、急遽、換羽の儀が開かれ、ウリ・ヤルブは思いがけない若さで女王を継いだ。換羽の儀から一月後、まだ十三歳だった。
優しかった姉に、リュイ王子の換羽の儀を見せてあげたかった。フフ様がこの日を迎えられなかったのは、極めて残念だ。リュイ王子は誰もがほれぼれするような若者になり、王家の誇りだ。
「換羽の儀を済ませたら、もう大人です。鳥にだって乗りますとも。保護者も必要なくなります。ですから、女王も、女性としての幸せを見つけてください。ほら、ここに居る、ラッカード殿に、婚礼の衣装を注文してはどうですか」
王子は軽口をたたいた。言い返せないでいたら、ガルが助けてくれた。
「王子様、何よりも一番近いのは、換羽の儀です。その時のご衣装は、女王様はすでにご用意されたことでしょう。華美なことはお好きでない女王様には、さらなるご衣裳のご相談よりも、儀式当日の必需品のご相談の方がよさそうですね。すでに、準備は万端でしょうが、何か急に必要となった品がございましたら、いつでも、このラッカードを思いだしてください。どんな品でも、力の及ぶ限り、ご期待に応えさせていただきます。時間の迫った、最後の最後まで、対応させていただきます」
「ラッカード殿の言う通りですね。すぐに換羽の儀。私も、最後の最後まで、準備に心がけましょう」
「そうですね、王子は儀式のおさらいをされないと。さあ、財務大臣、こちらにお願いします。王冠を、神官に届けてください。契約の通りの費用と旅費を、ガル・ラッカード殿に支払ってください」
「は、承りました。ラッカード殿、こちらへ」
財務大臣はガルを連れて退出した。
「準備は順調ですか、リュイ王子」
「やっと、真珠がある貝が見分けられるようになりました。真珠の大きさは・・・・・・正直、自信がありません」
「あなたは王にふさわしい。だから、期待はしています。でも、結果を気にせず励みなさい。王位を継がなくとも、王子が治世に深くかかわるのは、既に決まっています。王位など、この国では形式的なもの。換羽の儀は、時代を一区切りするだけの儀式です。それに、換羽の儀が済めば、奥方の選定ができます」
「私より、女王の婚儀が先でしょう。きっとお美しい式になるでしょうね。その幸運な人は誰ですか?誰も教えてくれません」
リュイ王子は、視線を湖の向こう岸に飛ばした。
「わたくしは心に決めた人がいますが、その方とはこの世で結ばれることはありません。だから、誰にもその名を明かしませんし、誰とも結婚はいたしません」
「私も、です」
「貴方はだめです、リュイ王子。幸せになってください。貴方の母もそれを願っていたはずです」
「ウリ女王。女王こそ、幸せにならねば」
リュイ王子は湖から視線を外して、こちらをじっと見詰めた。王子がバルコニーから一歩近づいた。一歩、後退り、壁に背中が着いた。
「財務大臣に会ってきます」
ドアに向かった。
湖の都は、森の王の一行、貴族、商人たちでごった返していた。めったにない、王子が参加する換羽の犠は、これまでの換羽の儀とは規模が違った。王族の男子が健康にここまで育つなど、何百年ぶりだろう。正確な記録がないくらいだ。湖の国だけでなく他の二つの国からも、驚くほどの見物客が集まっていた。森の民は砂漠の民の数倍はいた。
湖の領土は広く、豊かな穀倉地帯と小さな池が点在し、池の中で育つ魚や甲殻類、貝類、砂漠との境目では油が取れる実をつける樹木や、衣服を作るための繊維質の実をつける植物、家具や小物を作るためのつる植物が多く育つ。布を織り、衣類を作り、美しい装飾品を作り出し、絵画や音楽が溢れる国だ。果物も豊富だ。
静かで神秘的で、鏡のような湖が国の北側にあり、その南湖畔に王城はある。都は湖の南に東西に広がっている。都は城壁や門で守られていない。砂漠の都や森の都のように、危険な動物が生息していないためと言われている。
街道を南西に行けば砂漠の国。東に行けば、さらに、緑が深く山岳地帯もある森の国だ。
森の王の一行が着いたのは二日前。彼らは森の商隊の屋敷で過ごし、入りきれない者達は町中の宿屋に居た。
そして、今日の夕方、やっと砂漠の王の一行が到着した。中一日で、湖の王子の換羽の儀となる。短期間滞在の強行と言ってもいい旅程は、砂漠の国の財務状態のためだ。王の一行のいつもの滞在先はガル・ラッカードの屋敷だが、宰相ブセア・ケルスの意見で、今回はテルーの屋敷に滞在することになった。ガルの商隊はガルの屋敷に滞在する。同行した小さな商隊はテルーとガルの屋敷に別れた。
ハナの商隊はテルーの屋敷だった。テルーの屋敷は森の商隊の屋敷が居並ぶ地域にあった。ハナの商隊は、森の国に紛れ込んだ異邦人の様だ。それは、王の一行も同じだった。
「何だか、様子が変ね。どうして宰相は、王の居所をいつも通りにしなかったのかしら」
ハナは不思議そうに言った。それは、誰もが感じていた。
いつものように、ダルチ王の滞在準備をしていたガル・ラッカードは、誰より理解ができなかった。ガルは、娘の様子を見る口実に、到着した王の一行を訪問した。
テルーの屋敷に着くと、用向きを言わないうちに、ガルは王の居所に案内された。流石、テルーが仕込んだ者達だ。ガルの屋敷よりずっと豪奢で重厚な屋敷の内部を眺めつつ、王の居室に連れられて行った。
「砂漠の商隊、ガル・ラッカード殿がお目通りに来ています」
テルーの部下が伝えた。すぐに戸が開かれ、ガル・ラッカードは中に招き入れられた。王座の左には小鳥の止まり木が有り、青い小鳥がとまっていた。王座は空だった。椅子の前には、繊細な織柄の絨毯がひかれ、森の宰相ムアド・テクムーが砂漠の宰相ブセア・ケルスと立って談笑していた。
ガル・ラッカードは、敵陣に入ったような緊張を覚え、手が湿った。
「これは、これは、ガル・ラッカード。こちらにはなんの用かな」
砂漠の宰相ブセア・ケルスが笑顔で迎えた。
「王様が御着きと聞き、ご挨拶に参りました。こちらには、わが娘も逗留しておりますので」
ガルは頭を深々と下げた。
「王はお疲れだ。休んでおられる。お目覚めになったら、訪問を伝えておく」
ブセアは鷹揚に言った。ブセアとガルの年齢はほぼ同じだ。商人とは言え、ラッカードは誇り高き一族、王族を祖先とする。王子の一人が、王家を離れて冒険に出てからラッカード家が始まったのだ。ラッカード家は貴族と同等の権利を持ち、ヘルダの印も姓の一字ではなく特別な印や家紋の使用を許されている。ラッカードの最初の妻も今の妻も貴族の娘だ。これまでは他の商隊より各上の扱いだった。伝言を残す機会を与えられず、追い返されたことなどない。ブセアの年に似合わぬ若い顔を、姿勢を低くしたままガルは見上げた。ブセアは情に篤くない。だが、儀を立てる清い人だと言われていた。とうとう、儀ではなく利権に溺れたのか。
「初めまして、ガル・ラッカード、今度は森の都の王宮にも来ておくれ。残念ながら、今日は、私もお前も門前払いだ。二人で戻ろう」
森の宰相ムアド・テクムーは、右手を差し出し、ガルに歩み寄った。ガルの緊張は高まった。ムアド・テクムーは、残忍な策略家で裏切り者だ。にこやかに親密さを示し、片手で握手したまま、反対の手の短剣で相手の心臓を貫くと言われている。今の地位を得るために、少なくとも三人の暗殺の実行と、いくつかの罠を仕掛けたと噂に聞く。だから、ガルは森の都に商売で訪れても、王宮との取引は行っていない。ガルは意を決し、その手を取った。
「ありがたきお言葉。ムアド・テクムー様に、そのようなお言葉をかけていただけるとは」
表情が出ないように気を付け、じっとムアドの灰色の瞳を見た。大男のムアドは、赤い髪を揺らすほどの勢いでガルの肩を叩いた。
「硬くなるな。そなたにも、鳥使いで有名なそなたの末息子にも、ずっと会いたかった」
「過分なおことば、ありがとうございます。ヴェンは、明後日の儀式で、ダルチ王の警護に付けます。お目にかける事ができるでしょう」
ガルはもう一度深くお辞儀し、一方は肩に回され、もう一方は握手したままの分厚い手のひらからするりと逃れた。ヴェンの名が出た所で、突然、小鳥が嬉しそうに鳴いた。
「おや?」
ムアドは振り返った。
「あの王の小鳥は、ヴェン・ラッカードが仕込んだのです。ヴェンの名前を聞くだけで、歌いだすとは」
ブセアはムアドに説明した。その顔は決して喜ばしい表情ではなかった。
ヴェンの名で良い顔をしないとなると、ブセアがラッカードを遠ざけようとしている噂は本当なのだろう。ラッカードは国の財政にも口を挟める立場だ。ブセアは森の宰相と組み、テルーの商隊を砂漠の王に同行させる代わりに、空っぽの国庫を埋める金を受け取ったのだろうか。森の宰相ムアド・テクムーと森の豪商マキシ・テルーの不仲は、以前から有名だ。修復不可能な所まで来ているらしい。テルーは、良くも悪くも正直な人間だ。自分の欲にも、正義漢としても。彼女の信念に反する行いを、ムアドは森の国で進めたいのだ。テルーを森から遠ざけるため、ブセアと取引したに違いない。ガルは僅かに目を細めた。その国一の豪商が二つ共存できるほど、砂漠の市場は大きくない。
そちらがそういう計画なら、ラッカードも生き残る手段を模索するだけだ。ガルは、森の宰相ムアドに商売用の最大級の笑顔を向けた。
ヴェンから教えられた鳥使いの合図をした。短い口笛を吹く。青い小鳥は止まり木から勢いよく飛び出し、さえずりながらガルの周囲を飛び回った。ガルが差し出した左手の人差し指にとまり、くちばしを少擦り付けた。ガルは小さな声で小鳥に語り掛けてから、腕を勢いよく振って、小鳥を飛び立たせた。小鳥はガルの周囲を一周回った後、止まり木に戻った。ムアドは手を叩き、ガルに笑顔を向けた。
「鳥使いはヴェンだけではなかったのですね、ガル殿、是非とも、食事でも・・・・・・」
「こちらのお屋敷に、マルの商隊と一緒に我が娘が滞在しています。顔を見てまいります。ムアド殿、ご一緒できず、申し訳ございません」
ガルは一礼すると、旅のマントをひるがえして退出した。
青い小鳥のメルが指にとまったとき、くちばしを擦り付けるようにして、足輪に挟んであった丸め紙をガルの手のひらに落とし込んだ。ガルはそれをしっかり掴んだ。これにはどんな意味があるのだろう。ガルは手中の薄紙をさりげなく懐にしまった。
マルの商隊は庭で動物の世話をしていた。アシャは、真っ白で巨大な砂漠馬を洗っていた。ガルは見事な馬に見惚れ、また、アルビノであるのを惜しいと思った。砂漠馬のアルビノからは子供が生まれない。この砂漠馬の立派な体格と落ち着いた性格を受け継いだ仔馬が得られないのは、とても残念だ。
「アシャ、元気だったか」
ガルは背後から呼びかけた。
「父上!」
アシャは振り向いて叫び、水色の瞳を大きく見開いた。満面の笑みを浮かべ、手にしていたブラシを放り投げて、ガルに駆け寄った。
飛びついてきた大切な娘を抱きしめてから、その腕を緩め、顔を覗き込んだ。
「また背が伸びたようだ。怪我もなさそうだ。今度の武勇伝も聞いたぞ。私の寿命を縮めるつもりなら、大成功だ」
笑いながら、頭をぐりぐり撫でた。アシャは途端にしおれた。
「今回の事で、父上にはご心配をおかけして申し訳なかった。反省している。わたしのせいで・・・・・・」
「アシャ、お前にバルナの花を取りに行く許可を与えたのは、私だ。この父にこそ、全ての責任はある。」
「父上に認めてもらいたくて、花を摘む提案をした。隊の中に薬草が必要な者はいなかったのに。だから、砂漠の竜が戒めたのだ。功を立てるだけのために、貴重な花を摘もうとした罰だ。罰はわたしだけが受けるべき。なのに、ヴェンを巻き込んだ」
アシャは長いまつ毛を伏せた。
「盗賊に捕まったのは、運が悪かった、それだけだ。だが、逃げられたのは、お前の功だろう?違うか?星読みのアシャ、夜目が利くアシャ、お前でなければ、ヴェンは父の元に戻れなかった。息子を助けたのはお前だ、アシャ。ありがとう」
アシャは顔を上げると、ガルをハナの所に連れて行き、あわただしく、馬の世話に戻っていった。
アシャが立ち去るのを待って、ガルはハナに、アシャを預ける礼を言った。
「少し兄弟たちと距離を取らせたくて、占いの技を授けると預かった。丁度、弟子が一人いてね。上品な外見に反して武術がめっぽう強い。アシャは毎日、彼女に武術を習っている。占いそっちのけ。でも、元気になった」
ハナは、お茶を持ってきたエミナを紹介した。二人は握手と笑みを交わした。
「初めまして、エミナ・レイです。ヴェンのお父様ですか。よろしくお願いいたします」
ハナは、ガルが誰か、エミナにまだ説明していない。二人は驚いた。ヴェンは亡くなった母親にそっくりで、初めて会ってヴェンとガルを親子だと見抜く人はまずいない。
「すごい素質だね。ハナが弟子にしたがるわけだ。ヴェンとアシャの父親、ガル・ラッカードだ」
「アシャのお父様?それはないです」
エミナは淡々と言った。
「エミナ、失礼を言ってはいけない」
背後から近づいた大きな男が、慌てて嗜める。ハナとガルは顔を見合わせた。
「エミナ、世間的には、アシャはガルの娘。兄弟とは母親違いで通している。養い親とは、公表していない。占い師は、見通せても全てを告げない。わきまえなさい」
ハナは珍しく真剣に言った。
「申し訳ございませんでした。以後、心します」
エミナは深く腰を折った。
ハナとガルは商売の話や、儀式の相談をした。ガルが帰る時、ハナは言った。
「アシャとヴェンは、かつての宰相、ボロー・オビスゆかりの者に捕らわれたのかもしれない。盗賊から逃げる時に奪った水筒に、オビス家の印が在った」
「本当か」
「占うようにと、マルがあたしに水筒を預けた。盗賊の左手首に同じ印があって、名はタオだとアシャは言う」
「タオ・オビス?ボローの息子が生きているのか。真相を知りたい」
ガルは声を潜めた。
「占ってみた。タオは、換羽が過ぎた頃の娘を探しているみたいだ。見つけ出す期限が迫っている。だから、焦って毒を使ったのだと思う」
「誰を、何のために探しているのだろう」
「分からない。何を手掛かりに探しているのかも分からない」
ハナは深くため息をついた。
「それから、重大な卦(け)が出がた。ガル、アシャが養い娘だと公表した方がいい」
「そうだな、アシャの換羽お披露目の時に、公表しようと思っている」
ハナがなぜそのような進言をしているか、ガルは分かっている。
「一日も早い方がいい」
「その通りだが、今すぐは無理だ。公表前に、解決すべき問題がいくつか有る」
「だめ。今すぐ」
急かすハナの言葉に、ガルは躊躇った。占い師を問いかけるように見つめる。ハナは動じず、見通した真実を告げずに問い返した。
「ガル、公表に問題でも?」
「この旅の間は、兄弟たちの結束が必要だ。公表でそれを崩したくない。それに・・・・・・」
「・・・・・・王の命の危険が去るまでは無理か。残念だけど、それなら仕方が無い。誰が謀をしているか教えてくれるかい?そこまでは、見通せない」
「やはり、王の身に危険が迫っているのだな。こちらは、まだ、何の手掛かりもない。テルーの屋敷で、王の周囲を探ってくれないか」
ハナが小さく頷くのを確認すると、ガルはテルーの屋敷を後にした。
満月が東の山から浮かぶころ、ガルは自分の屋敷に戻った。荷ほどきも落ち着き、夕食の支度も整っていた。砂漠の竜に、旅が無事に終わった感謝をささげ、庭で宴を行う。
「皆の者、遠路、ご苦労だった。良く働いた。今宵は、湖の国の旨い物を楽しんでくれ。ただし、酒は二杯まで。まだ、片道だけだ。戻るまで、気は抜けない」
ガルは杯を高く持ち、乾杯した。料理は、魚や貝、瑞々しい野菜や果物が豊富にあった。味気なかった旅の食事の後では、旨さは格別だ。
ガルは、再会を切に願っていた末息子を探した。
「ヴェン、元気だったか」
隣に座り、串に刺さった焼き魚を差し出した。
「ありがとうございます。元気にしていました。父上はお変わりありませんでしたか」
「ああ、この通り、健やかに過ごしていた」
「父上、少しお痩せになったのでは?申し訳ありません、ご心配をおかけしました」
ヴェンは目を伏せた。叱責を覚悟していたのだろう。もう、十分だ。
ガルは魚にかぶりついた。
「旨いぞ、ヴェン、食べないのか?」
「いただきます」
ヴェンも大きくかぶりつき、笑った。本当に母親に似ている。いつものように頭を撫でようとして、その手を止めた。ヴェンの杯にはお茶が入っている。酒はまだ許可していなかった。
自分の杯を干すと、ヴェンに持たせ、果実酒の瓶をもらった。
「お前も一人前だ。許可を与える」
ヴェンの持つ杯に酒を注いだ。
「飲め、ヴェン」
顎で杯を指した。ヴェンは頷き、ゆっくりと杯をあおった。耳の端が赤くなっている。小さな拍手が沸いた。父親が息子に酒を勧めるのは、換羽以上の一人前の証。妻を探す許可だ。兄弟たちはつつき合った。
「先を越されるなよ」
「お前こそ」
「でもな、ヴェン。選ぶのは、髪の生え変わった妻にしろよ」
ガルはおどけて言い、兄弟たちは大いに笑った。ヴェンは首まで真っ赤になった。ヴェンの肩を叩いて、席を立った。使用人たちもねぎらいに行こう。
獣医とマルに礼を言いに行った。それから、隊を支えて来た男たちの所を回った。女たちの所に行こうとした時、キリアが歩み寄った。
「父上、アシャにはお会いになりましたか」
二人は人々の輪から離れた。
「テルーの所で会って来た。元気そうでほっとした。新しい美しい水色の服がよく似合って、急に娘になったように見えた。見違えたよ」
「服は俺が贈りました。・・・・・・アシャを望んではいけませんか」
キリアは真っすぐガルを見た。踏みしめる草の、青い香りがした。
「驚いたな。・・・・・・お前も、か」
二人はしばらく黙った。二人が動かないので、沈黙していた虫が鳴き始めた。砂漠では聞くことのない、静かで柔らかな音だ。
「アシャがさらわれるまでは、気付きませんでした」
キリアは小さく答えた。ガルは話の先を促そうと、目で合図した。
「ヴェンが想いを告げ、二人の気持ちが固まったのかと、焦りました」
「・・・・・・焦ったか」
「ヴェンは、容易く、何でも手に入れる。俺だって、譲れないものもあります」
「アシャか?」
「そうだとも言えますし、そうじゃないとも言えます」
「どういうことだ?」
「皆が噂しています。アシャは、ラッカードを継ぐ者が娶るだろうと」
ガルは大きく息を吸った。その間も、虫は鳴く。静寂よりも、静かだと感じた。
「アシャの結婚相手と、ラッカードの跡継ぎは、別だ。お前が望むものはどちらだ?」
ガルは、自分より大きくがっしりとした、キリアの肩に手を置いた。
「・・・・・・分かりません。何が望みか、自分でも。ただ、ヴェンに奪われたくない」
静かだが、真直ぐな目だ。
「勝ち目はあるか」
「・・・・・・それは・・・・・・」
「父の大切な養い娘だ。苦しませるな。アシャを幸せにできない奴には、嫁がせない」
「諦めろと?」
「いや、お前が決めろ、キリア」
ガルは背を向け、隊の女たちをねぎらいに行った。賑やかで華やかな彼女たちは、おしゃべりを聞かせ、笑いを振りまき、つかの間、心配事を忘れさせてくれる。
最後に、同行している薬師の所に行った。
「この紙に付いている粉はなにか、調べてもらえないか」
メルが運んだ薬包紙らしきものを取り出し、わたした。
「残念ながら、旅には最低限の物しか持ってきていません。湖の王城に、私の姉弟子がいます。彼女に助けをお願いしてはどうでしょう」
「連絡を取ってくれるか」
「ええ、今夜、会う約束です。よろしければお預かりします」
「そうしてくれ。隊の者にも内密に」
ガルは薬師に、薬包紙と銀細工の指輪を一つ渡した。薬師は首を振り、返そうとした。
「それは、姉弟子に」
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