6-11 仕掛け
「家の周囲の警戒が厳重なら、山に潜伏、なんていうのは、一番嫌で、す、だね。
山を廻ってくるルートには、何か、仕掛けをしておきたい感じ、だ、ね」
すぐに、言い方を訂正したけれど、おれの話し方、ぎこちなかったようで、さゆりさんと美枝ちゃん、クスクス笑っていた。
北斗君ですら、ニヤッとした。
「そうね…。仕掛けか…。
あなたの言うのは、待ち伏せのような感じのことよね」
「うん、それで、見つかったと考えて、すぐに逃げるのか…。
あるいは、それでも進んでくるのか…。
それ、短時間は戦う…、襲撃、という覚悟で来るって感じで、ね…。
だから、その辺の…、何というかな…、まあ、相手の出方を見極めることも兼ねての、こちらとしての様子見…」
まあ、何とか、うまく言えた。かな?
ちょっと、しゃべり方を気にしすぎて、言いたいこと、うまく通じるように言えたのか、疑問だけれど…。
「なるほどね…。
そうなると、けっこう、規模の大きな仕掛けが必要だよね。
しかも、ある程度のダメージを与える、となると…。
サーちゃん、島山さんを呼ぼうか?」
あやかさんが、さゆりさんに聞いた。
「そうですね…」
あやかさんが聞いたのに対して、さゆりさん、ちょっと考えてから、
「確かに、前に、検討を頼んでいたこと…、うまく使えるかもしれませんね…。
フフフ、その待ち伏せの仕掛け、島山さんに頼むと、おもしろそうですね。
美枝ちゃん、頼める?」
さゆりさん、美枝ちゃんに島山さんへの連絡を頼んだ。
「ええ、ちょっと失礼します。
本当に、それ、おもしろそうですよね…」
美枝ちゃん、そう言いながらニッと笑って立ち上がり、部屋の隅に行きながら、スマホで島山さんに電話した。
はっきりわからないが、なんだか、今回の状況や、待ち伏せのことなどについても話しているような感じだ。
ちょっとした長電話で、島山さんがこっちに来てから説明するのかと思うようなこと、美枝ちゃん、全部、話していた。
しかも、それを、さゆりさんとあやかさん、当然という感じで見ている。
美枝ちゃん、電話が終わり、席に戻って、
「部屋にいましたので、すぐに準備して、こちらに来てくれるそうです。
ホク、島山さんが動き出したら、一緒に、お願いね」
と、簡単に。
簡潔、というべきかな?
「ああ、わかった」
ホク君、そう言えば、美枝ちゃんのこと『
「おれも、手伝うんで、いいのかな?」
と、ちょっと、言葉を考えながら、あやかさんに聞いた。
あやかさん、それがわかって、ニッと笑い、
「そうね…、あなたには、ほかにもお願いしたいこともあるんだけれど…、でも、初めのうちは、島山さんと一緒に動いてもらった方がいいかもしれないわね…」
「その方が、いろいろと様子がわかるからね。
じゃ、そうするよ」
うん、少し、うまく言えるようになってきたぞ。
この調子だな…、フフフ、もうすぐさ。
『あやか、待ってなよ』…なんてね。
「う~ん…、テーブルの方がいいから、食堂に移動しようか?」
と、あやかさん、さゆりさんに聞いた。
「そうですね…。確かに、その方がいいですね」
と、さゆりさん、すぐに賛成し、皆、それに従って、各自のコーヒーカップを持って食堂へ移動となった。
まだ、コーヒーの残っている大き目なコーヒーサーバー、美枝ちゃん、さっととって、北斗君に渡した。
北斗君、ニコッと微笑んで受け取る。
『あんたの仕事よ』
『わかってるよ』
と言った感じ。
そして、二人の感じ、とてもいい感じ。
玄関に出て、食堂に入るとき、
「ここの地図、とってくるわ」
と、あやかさん、さゆりさんに言って、自分のコーヒーカップを渡し、廊下を真っ直ぐに歩き出した。
けれど、すぐにストップ。
振り返って、おれを見て、
「一緒に来てくれる?」
「ああ、もちろん」
と、おれ、返事をしたとき、美枝ちゃん、準備していたように、おれのコーヒーカップをスッととって、持ってくれた。
「あっ、ありがとう」
と、美枝ちゃんにお礼を言って、あやかさんの横に並んで歩き出す。
行き先は、例の『秘密の部屋』のようだ。
地下室へのドアーのところで、あやかさん、おれに電子キーの、8桁の暗証番号を教えてくれた。
階段を降りると、下のドアーの暗証番号も。
8桁なので2つも覚えられるのか心配だったけれど、そのあとで覚え方まで伝授。
中にはいると、
「敷地の地図は、ここにあるんだよ」
と、地図などが置いてある棚を教えてくれた。
いろんな図面があるようだ。
「今度、時間があったら、いろいろと見ておいてよ」
「うん、わかった…。
でも、勝手に見ていいの?」
「もちろんよ、ここに入るのも、あなたは勝手にはいっていいんだからね」
「わかった。
いろいろと、おもしろそうだね」
「うん、けっこう、いろいろあるからね。
さてと…、今日は、これだけでいいかしら?」
と、あやかさん、A4サイズのファイルの薄い束を出す。
ファイルは4枚だった。
ファイルには、新聞紙くらいの大きさの地図が1枚ずつ4つ折りになって入っていた。
この敷地の地図だが、その地図には、すでに、さっきの予想される進入ルートが、オレンジ色の線で示されている。
赤いファイルは原本だそうで、残りの透明な3枚のファイルが、そのコピー。
持っていくはコピーの2枚。
美枝ちゃんの事務室に、A3対応のコピー機が置いてあり、A3でとって2枚を貼り合わせて作っておいたのだそうだ…、やったのは、美枝ちゃんらしいけれど。
「じゃ、行こうか」
と、あやかさん、言うと、急におれに近寄ってきて、耳を引っ張った。
「イテッ! えっ?なに?」
何か言われるのかとおもって、耳を近づけるようにして、おれ、少し屈んだ。
そしたら、あやかさん、チュッと、軽くキスしてくれた。
思わぬ動きで、おれ、うれしくって、つい、あやかさんのこと抱きしめちゃった。
でも、地図のファイルが落ちて、抱きしめ、中断。
「ほら、みんなが待ってるから、もう、行くよ」
と、ニコッと笑ったあやかさん、冷静のまま。
「ですよねぇ…」
と、おれ。
あれ?『だよねぇ…』と、言うべきだったのかな?
あやかさん、何も言わず、スキップを踏むような足取りで、ドアーの方へ。
島山さん、筒やファイルのはいっている大きめな布の手提げ袋を持って、玄関に迎えに出た美枝ちゃんと一緒に、食堂に入ってきた。
島山さん、何となく、うれしそうな顔つき。
その時までには、地図はテーブルの上に広げられ、あやかさん、おれに、この敷地の全貌と、想定しているルートなど、簡単に説明をしてくれていた。
ほかの人は、だいたいのことはわかっているみたいだった。
「お嬢さまに、敵を殺したり、傷つけたりしない程度に痛めつける方法を考えておくように言われたので…、それ、普通の人間を相手に考えていて…」
と、島山さん、話し始めると、
「まあ、たぶん、それより強靱な人たちかもしれないけれど、でも、一応、脅かす程度にはなると思うんだけれど…」
と、あやかさん。
「島山さんの考えなら、たぶん、通ずると思いますよ」
と、さゆりさん。
「そうですか…、今回の敵に、どの程度響くのか不安はありますが、まあ、とりあえず、説明しますと…」
島山さんの、説明が始まった。
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ここで、第6章、終わりです。
もちろん、次章に続きます。と、言うことで、いつもの通り、ちょっと期間が空きます。1週間分を書くのに、2週間かかるという感じですね。
第7章 迎撃 … お楽しみに。
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