6-8 動機
あやかさん、美枝ちゃんに、心当たりを聞かれ、
「ええ…、あるわ…」
と即答し、すぐに質問を返した。
「で、美枝ちゃんが考えている人は、誰なの?」
「山根社長を、疑っています」
美枝ちゃんも即答。
しかも、断定した。
ほんとに、ストレートなんだな…。
山根社長というのは、あやかさんの例の「おじさん」のこと。
あやかさんが本当の敵と考えている人だ。
美枝ちゃんが断言したのを受け、あやかさんが、呟くように答えた。
「そうなの…。山根、和彦…。
あなたもそこに辿り着いたのね。
と、いうことは、これで、その件は、確定的…、ということかしら?」
あやかさん、最後は、さゆりさんに聞く形となった。
美枝ちゃん、ちょっと意外そうな顔。
それを受けて、あやかさんが、説明にはいった。
「あぁ、美枝ちゃん、ごめんね。今まで黙っていたけれど、実は、わたしは、おじさんが陰で糸を引いている、と、みているのよ…」
と、あやかさん、昨日、おれに話してくれた、陰で糸引く敵のことを、美枝ちゃんにも、ゆっくりと、より丁寧に話した。
昨日よりも、細かなことまで話にはいっていた。
おれも聞いているので、おれには昨日の付け足しとして位置付けなんだろうな。
「…と言うことでね、おじさんは敵、と考えていたのよ。
ただね、あなたにこのことを話さなかったのは、わたしの考えが単なる思い込みなのかどうか、間違っていないかどうか、そんなことも含めて、あなたの客観的な目で判断してもらいたかったからなのよ…」
なるほどなぁ…、信頼している美枝ちゃんに話さなかったのは、人間関係の距離の問題ではなく、より客観的に調べたかったからなんだ…。
あやかさんが、美枝ちゃんの力を、高く評価している、ということでもあるわけだよな…。
すると、美枝ちゃん、あやかさんの話の中で、気になると思ったことを指摘した。
本当に、羨ましいくらいに、ストレートなんだよな。
「お嬢さまの今の話ですと…、今までの事件を、山根社長が裏で糸を引いていたということ、そのこと自体はよくわかったのですが…、ただ、どうも、動機が、ですね…、お嬢さまのおっしゃったものでは、どうも、薄いように思えるのですけれど…」
「それ…、どういう意味で?」
あやかさんが聞いた。
「確かに、ここの土地や、櫻谷家に伝わる刀などの品々…、お嬢さまが受け取るであろう遺産は、とても大きなものであることはわかります…。
けれど、山根社長は、ご自身が受け取るであろう遺産を含めて、すでにお持ちになっている財産…、また、持っているのも同然のような意味での財産もありますし…、莫大な財産をお持ちになっています。
そのことを考えた場合、あんな連中と手を組んで、お嬢さまの命を狙うほどの危険を冒すのかどうか、ということなんですが…。
手先として使うにも、相手が、悪すぎます」
「なるほど…」
あやかさん、何かに気が付いたように、急にソファーの背にもたれかかって、沈むように考え出した。
実は、このこと、おれも、少し気になっていたこと。
昨日、話を聞いていて、敵の本当の狙い…、だから、あやかさんが遺産を相続できなくすること、これが、いろいろな襲撃の本当の狙いなんだろうか?と、話を聞いてる最中に、瞬間的であったけれど、考えたことがあった。
でも、昨夜は、あやかさんに結婚のこと話さなくっちゃ、申し込まなくっちゃ、という熱くなったヤツが、頭の中をずっと駆け巡っていたので、このことを考えたのは、少しの時間だけ。
それも、駆け巡っている結婚が休憩した、合間あいまのことで、ブツブツにきれていた。
それなのに、その時の、思考の断片が、1つ急に浮き出てきた。
あやかさんが考え込んでいるような感じで、ちょっとシンとなった場に窮屈さもあったので、その脇で軽い雑談をしています程度に、美枝ちゃんに聞いてみた。
まず、一口、コーヒーを飲んでから、
「ねえ、美枝ちゃん…、おじさんが、誰かの指示を受けている、って言うような可能性はあるのかな…」
「うん?山根社長の上がいる…と言うことですよね。
う~ん…、その場合の目的は?」
「まあ、流れからすると、妖結晶…」
と、気安く答えてみた。
まあ、雑談なんだから…。
でも、あやかさん、今までにないような、キラリとした目をおれに向けた。
うん?こんな話、し始めたの、まずかったかな?
と、思ったけれど、あやかさん、黙ったままではあるが、別に、気分を害したわけでもなさそう。
何の、キラリ、だったのかな?
「リュウさん、いつ、そのようにお考えになりました?」
美枝ちゃんから、今度は、まったく違った方向での質問が来た。
でも、まあ、おれにとっての位置付けは雑談なんだからね、そのまま、お付き合いと言うことで、気楽に、
「昨日、あやかさんから、そのおじさんの話を聞いてね、まあ、さっきの話しだけれど、もちろん、そのまま納得した部分の方が大きかったんだけれど…。
でも、どこか、その、美枝ちゃんが言った動機でね、引っかかりもあったものだから、昨夜、ちょっとね…」
「あら?昨夜は、リュウさん、今日、お嬢さまになんて言おうかっていうことで、いっぱいいっぱいだったんじゃないんですか?
あんな幸せそうな顔をして帰ってきて…」
急に、思わぬことの確認と、からかいとがはいった美枝ちゃんの発言。
まあ、これが美枝ちゃんのパターンなのかも。
「幸せそうか…。
帰ったときはそうでも、そのあとが、けっこうきつくてね…。
まあ…、いまは、それはいいか…。
で、確かに、頭の中はそれでいっぱいだったんだけれどね…。
でも、その、合間合間にね、チラッ、チラッと考えたんだよ。
だからね、しっかりとは考えていないんだけれど…、やっぱり、『山根社長
「いえ、変だというのではないんです。
わたしが、苦労して出した、仮の結論と同じですから…。
それが、この場合、最も説明しやすいと思います」
「そうか、それはよかった。
あの、妖結晶の価値だけれどね…、あの人たち…、妖結晶を舐めると、力の出る人たちね、彼らにとっては、おれたちが考えている以上に価値のあるものなんじゃないのかと思ったんだよ」
「通常のエメラルドよりも重要視している、ということはお話はしましたよね?」
と美枝ちゃん、どうして、こんなこと確認するんだろう。
そうか、おれの、今の発言、説明不足かも…。
今、話したこと、もう少し丁寧に話しておいたほうがいいかもしれないな。
「うん、その話は、妖結晶の話のとき、しっかりと聞いていたんだけれど、その時受けた『重要』の言葉以上に、もっとすごく、重要だっていう意味で言ったんだ。
だから、『高い指輪』と言うことでその値段を70万円くらいと考えていたけれど、実際には、一千万円ぐらいだったとか、そういうレベルの差で…」
「なるほど…。
で、どうして、そんなに…、こちらの想像以上の価値があると?」
さらに美枝ちゃん。
この話、興味を持ってもらえたようだ。
「じつは、これ、妖結晶のこととして、仙台から戻るときに、車の中で考えていたことなんだけれどね…。
まあ、なんで、妖結晶の、しかも質いいものを狙うのか、と言うこと考えていたんだけれど…、金額的に稼ぐと言うことなら、展示されていた指輪なんかで、量を盗るのでもいいのに、『湖底の貴婦人』以外は見向きもしなかったと言うことから…、これが不思議でね…。
質のいい妖結晶は、より力がでるということだったけれど、それだけでなく、もしもね、副作用のような
この辺は、調べたわけではなく、完全な当てずっぽうなんだけれどね。
まあ、ほかに思いつかなかったのもあるんだけれど…。
価値がある、とした場合には、そういう要因も考えられるのかな、とね」
「なるほど…。当てずっぽうにしては、説得力がありますね…。
リュウさん、お嬢さまとの結婚が決まって、少し、頭の回転、よくなったんじゃありませんか?」
と、お褒めの言葉なんだか、茶化されたんだか…。
言っておきますけれど、今のこと、仙台からこっちに来るときに考えたことなんで、結婚が決まってから考えたわけではないんですよ。
おれ、そう、言ったでしょう?
第一、結婚が決まってからなんて、まだ数時間しか経っていなくって、そんなこと考えている余裕、ないじゃないですか。
あれ?褒めついでに、おれ、ただ単に、からかわれた、ということなのかも…。
また、また、ということだよな…。
美枝ちゃん、おれのこと、からかいやすいのかな…。
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