第31話『エルフと魔人と人間と 2』
「もらった地図によるとこの辺りなのだけれど……それらしい家も見当たらないな」
「アーミラさんて大雑把ぽいもんなぁ、ほんとに合ってんのかな?」
シンジは盾の外で、エリシアの隣にふわふわ浮かび森の獣道を進んでいた
アーミラの用意した地図を見る限りこの先に曲がり道はなく、ほどなく目的地が見えてきてもおかしくない距離まで来ているはずだった
「それは大丈夫だろう、だけど私達が道を間違えている可能性も低いとは思うんだけれど……標された目印も解りやすかったし、それほど入り組んだ道のりでもなかったしね」
「確かになぁ、森を抜ける街道から少し外れただけだし」
地図を片手に立ち止まっているとどこからともなく声が聞こえてくる
「ようこそ、珍しいお客さん、ここに人が訪ねてくるなんていつぶりかな?20年?30年?
まぁどうでもいいんだけどねぇ」
「ん?どこから聞こえてるんだ?」
「あれだ!シン」
エリシアが指を指した方向にいたのは、木の枝に止まっている一羽の鳥だった
「気付くのが早いね、さすがは勇者ってとこかな?さすがにこの状態じゃもう一人の方は見えないんだけどね」
「鳥がしゃべってる!?」
「きっと本体は別だよシン、さすがに普通の鳥はしゃべらないしね」
「……、シンとやらがもう一人の名前のようだね、このままじゃ不便だからさっさと来なさいな」
そう言うと、しゃべる鳥の後方の空間がぼんやりと光りこじんまりした家が現れた
「どうりで見つからないわけだ、結界で隠してあったとは……
とりあえず行こうか、シン」
「もう何がなんだか……」
あっけにとられたシンだったが、急かすように羽ばたく鳥に促されて警戒をとかないエリシアと家の中へと入っていく
「失礼いたします」
「お、おじゃましまぁす」
さっきまで後ろについてきたいた鳥は家の前で空へ飛んでいき、玄関の奥の暖炉に近い椅子に座っていた男が口を開く
「ようこそ我が家へ、勇者エリシアと……君がシン君だね、はじめまして」
「アーシェラ様の紹介で参りました、勇者エリシア・アウローラと彼がパートナーのシンです」
「はいはいどうも、ふ〜〜ん君が例の異界の魂ねぇ〜、はっは〜ぱっとしないねぇ」
あいさつもそこそこに、勇者よりも幽霊に興味津々な男にシンはたじろぐばかりだった。
「あの、不躾で申し訳ないのですがあなたは……?」
「あれ?聞いてない?んーめんどくさいなぁ、僕はアルファス、ハーフエルフの法術士さ」
「エリー、ハーフエルフって?」
「人間とエルフのハーフ、ハイエルフほどではないけれど人間よりも寿命が長い種族だよ」
「そんなことよりもまずは君のことを知りたいなシン君、ガネシャからなんとなぁくは聞いてるんだが君の口から話を聞こうか
おーいララ、お茶を用意してくれたまえ……寝てるのか?仕方ない、少し待っていたまえ」
そう言ってアルファスは気だるそうに奥の炊事場から3人分のお茶を運んできた
「いやぁうちの弟子は若いくせに元気がなくていかん、で、まずは君の元いたという世界について聞いていこうか」
アルファスから出る矢継ぎ早の質問攻め、それに一つ一つ細かくシンは答えていった
そのシンの答えの一言一句を聞き漏らさないように、一挙手一投足を見逃さないようにしながら質問攻めは続く
「いやぁ実に興味深い!君は素直な人間のようだ、馬鹿正直とも見えるがね
でも他人をかばって死んじゃうようなら世話無いねぇ」
「あの、お言葉ですがアルファス殿、そのような言い方は無いのではありませんか?」
先程からの様子と今の発言に、エリシアはたまらず口を挟む
「申し訳ありませんが先程からのあなたのシンを見る目が気に入りません、確かに珍しい境遇ではありますが獲物を見つけた獣のような感じがします
それにシンは清く暖かな心の持ち主です、それに望んで死を選んだわけでも、望んでこちらの世界へ来たのでもありません」
「エリー?俺は気にしてないよ、大丈夫だから」
「でもシン!」
「ほほう……大人しいお嬢さんかと思っていたが、はっきり物を言うね、嫌いじゃないよ
そうだね、今のは失言だと認めよう
すまなかったね、気を悪くしないでくれたまえ、僕の溢れる知識欲が止められなくってさ」
「いえ、ほんとに気にしてませんから、エリーもありがとうね」
「シンがいいならいいのだけれど……言葉が過ぎました、お許しくださいアルファス殿」
「なに僕も気にしてないさ、他意はないんだけど一言余計なのが玉に傷でね」
「それよりも、何かわかりますか?」
「んーん、アーシェラ様でもはっきりとはわからないんだろ?今話を聞いただけで僕にわかるようなら苦労しないさ、でも君らの知らない情報なら言えるかな」
「教えてください、なんでもいいんです」
「まず一つ、過去にこの世界に来た異邦人は君以外にもいた」
予想外の発言に2人は立ち上がって顔を見合う
「そんな話は王国でも伝え聞いたことがありませんしアーシェラ様もそんな事は一言も……本当なのですか?」
「嘘言ってどうするんだい、僕に何も得がないじゃないか
それに立場的にあの人の口から不用意に不確かな事は言えないでしょ、だからここに君たちをここに向かわせたんじゃないかな」
「それは、確かにそうなのでしょうが……それで過去に来た者というのは?」
「僕が知ってるのは2人、1人はシン君みたいに魂の状態でさまよってたんで話だけ聞いて神樹へ送り届けたよ
でもう一人は生身の体を保ったままこの世界に迷い込んだ」
「生きたまま転移してきたのですか!?」
「そうそう、確か500年と少し前になるかなぁ、前の勇者が闇の門を目指していた頃かな
その頃はだいぶ魔界からの影響が強くてね、たぶんこの世界の境界というか、次元が不安定になっていたのが原因だとは推察できるけど真相はそれこそ闇ってわけ」
「アルファスさん、もう一人の……さまよっていた魂を見たのはいつ頃だったんですか?もしかしたら俺と同じくらいの女の子じゃなかったですか?」
「シン?」
「ごめん、まだ話してなかったね、実は……」
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