第27話『神樹アルタナ 3』
シンジが入った空間には、真っ黒なフードを被った人物が背を向けて立っていた
「あのぉ……すいません、ってうぉぉいっ!!」
声をかけられ振り返ったフードの人物は、完全な髑髏の顔をしていた、首元から下は隠れていてわからないが出した手もまさに骨である事から、全身そうなのだろうとシンジは思った
「そらビビりますわなぁ、えろぉすんませんわい
あんたがシンジはんでっしゃろ?」
「そ、そうですけど……まぁ骸骨なんだろうなぁとは予想してましたけど、なんで関西弁なの?」
「カンサイ?なんやよぉわからんけども、方言みたいなもんやさかい気にせんといて
それよりもあんさんの事ですわ、シンジはんがあちゃらの方で死んでこっちゃへ来はった時、足元で死んでたっちゅうシンルゥはんの事ですけどな」
「あぁそれ!気になってたんすよ、やっぱり何か関係があるんですよね?」
「いゃ〜それがですなぁ、全くもって関係無かったんですわ、偶然も偶然、たまたまっちゅう事ですな
シンルゥはんの魂は、正規の手順を踏んでちゃあんと旅立ちはりましたわ」
「…………マジっすか、絶対何かあると思ったんだけどなあ……じゃ結局何も収穫なしかぁ」
「いや、そうとも限りまへんで」
「どういう事ですか?」
「実はですな……アーシェラ様の格別の計らいで、シンジはんの世界の死神と交信できまんねや、言うてもほんのちょっと間でっけどな」
「そんな事までできるんですか!?」
死神は懐から手のひらサイズの水晶玉を取り出した
「この水晶には神樹の力が宿ってますのんや、こことは異なる世界とも繋がれるっちゅうお宝中のお宝だっせ」
「事が事ゆえにな、我が一族の秘宝であるがこの際仕方あるまい」
死神との会話に気を取られ背後にいたアーシェラに気づかなかった
「アーシェラさん!あの、本当にそんな事が出来るんですか?」
「我のみでは相当時間を要するがの、この世界から見た異世界という物は無数に存在すると言われておる
その数多の世界の中からおぬしの世界を探し繋げるには、おぬしがおる方が早いからの
シンよ、この水晶に手を触れ、おぬしの世界の事を思い浮かべよ」
アーシェラは死神から受け取った水晶玉をシンジの前へと突き出し、シンジはそれに応えて手を添え意識を集中させる
『意識が吸い込まれていく感じだ……なのに不安は感じないな、元の世界の事……父さん、母さん……』
「うむ、その調子じゃ……そのまま……」
しばらくすると、水晶玉が光を発し始めた
そこにぼんやりと人影が映り、声がこちらに届いてくる
「……ざきさん……かざきさん、坂崎さん!」
「あっはい!坂崎です!」
「これは驚きました、本当に見つかるとは!いやぁまさかとは思ったんですよ、閻魔様の悪い冗談かと思いましたよ」
「ほんとにいたんだ、閻魔様……あなたはそっちの死神さんですか?」
「えぇ、関東支部所属の死神で死野田(しのだ)といいます
あなたの担当だったのですが全く見つからなくて大変だったんですよ?」
肩を落としボヤく死野田と名乗った男は、骸骨ではあったがこちらの死神とは違いスーツにネクタイを締め、眼球がないのに眼鏡をかけているという変わった風貌だった
「いやぁ、なんかすみませんご迷惑をおかけしまして……俺にもさっぱり訳がわかんなくて、それで俺ってそっちに戻れるんですかね?」
「そうですね、時間もあまりない事ですし本題に入りましょう、閻魔様とそちらの責任者の方が協議したところ戻れる可能性はあるそうです
しかし実体がないとはいえ人1人の霊体を転移させるとなれば、相当の力場という物が必要だそうです
詳しい事はそちらの責任者の方にお聞きください」
「わかりました……けどアーシェラさんから話聞くなら、わざわざそちらと俺を繋げる必要があったんですかね?」
「そこなんですよ……実は霊が突然消えたのは今回が2度目でして……」
「どういう事です?」
「そちらの質問に答えると言うより、こちらが聞きたい事があったというのが実情でして……坂崎さん、『光乃絵里子(こうのえりこ)』さんという方をご存知ですよね?」
「…………はい、知っています……俺の幼馴染で小さい時に引っ越していった、よく遊んでいた子です
まだ子供でしたし、連絡を取り合う事もすぐになくなったので今どうしているかは……、もしかして!」
「お察しの通り、消えた霊というのはその光乃さんの事でして……」
「絵里子、死んじまったのか……でもどうして」
「事故……と聞いています、もう10年ほど前になりますがね」
「10年!?全然知らなかった……申し訳ないよ……」
「あなたが気に病んでも仕方ありません、ですがあなたの知人で間違いないのなら、そちらの世界に紛れている可能性があります」
「なら絵里子も幽霊のままこっちの世界のどこかにいるかもしれないって事!?」
「ですが腑に落ちない事がありまして……あなたのように霊体のまま存在しているなら、そちらの責任者の方が気付かないわけはないと思うんです、その辺はどうなんですかね?」
「我の方では感知しておらぬ、シンのような物がうろついておればおのずと違和感を感じるはずなのじゃが
こちらへ来たがすぐに消滅したか、形態を変えてどこかへ潜んでおるのか……理由はわからぬが、我が感知出来ぬのならそういう事なのだろうがの」
「ふむ、10年間そちらで見つかっていないというのも不思議な話ですが……坂崎さんがそちらへ行ったのは光乃さんの霊に『引っ張られた』と考えるのが自然なのですがねぇ
縁のある霊体同士は引き合う、というのが我々の間では常識でして……」
「なるほどのう、ではその件については我の方でも調査をしておこう
ではそろそろ時間じゃ、次にそちらと繋がれるのはいつになるかわからぬゆえ、言い残しがあれば今の内に言うた方がよいぞ」
「お手数をおかけ致しまして……ありがとうございました、私共の方でも引き続き調べておきます
坂崎さん、あなたも大変でしょうが……出来ましたら光乃さん共々こちらへ戻られる事をお待ちしておりますよ
私の査定にも関わりますし……冗談ですよ、ではまたいつか……」
最後に少し笑ったように見えたスーツ姿の骸骨は、そう言って水晶玉から姿を消した
「あやつなかなか有能そうじゃの、うちのとは大違いじゃ」
「そんな殺生な事言わんでくださいな、アーシェラ様
まぁわては、難しい事はわかりまへんよってに足で稼ぐしかありまへんわ
ほな早速調査に出向いてまいりまっさ」
「うむ、何かわかれば報告せい」
ローブ姿の死神が空間から姿を消す、今ここにいるのはアーシェラとシンジの2人だけになった
「さて、またややこしくなってきたが……時間はある
シエナからの報告は聞いておるが、改めておぬしの話を聞いていくとしよう、そのコウノエリコとやらの話も含めての」
「わかりました、長くなりますが……」
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