第11話『予言の王とお姫様 2』


「よく参られた、「聖剣の試練」へと挑みし者よ」



ここは城内、玉座の間

中央奥の数段高い所に大きな玉座があり

国王であるヘルベルト・グレイン・フリオールが鎮座している

その傍らには妃殿下であるサラ・グレイン・フリオール

段の下の両隣に2人ずつ、向かって左から

騎士団長ガイラス・ガーバイン

王国宰相カムラン・ガラン

アナスタシア・グレイン・フリオール姫

法術士長シエナ・シエンタ

の4人が並んでいる



「王国騎士団、千人隊3番隊長エリシア・アウローラ

身に余る光栄、恐悦至極に存じ上げます」


「この世に500年毎に訪れる災厄に対し、我が一族の予言によりそなたが選び出された

聖剣の勇者として、諸国をめぐり選ばれし戦士達とこの世を照らす光とならん事を切に願う」


「はっ!我が身命を賭し、事に臨む所存にございます」



膝をついたエリシアは、国王からの直々の言葉を賜り恭(うやうや)しく応える


その後に宰相のカムランが口を開く



「ではこれより千人隊長彰の返還を」


「はっ!」



軍服の胸につけていた勲章のような物を外し、宰相の持つトレイに乗せた



「続いて後任の者への隊長彰の授与を行う、シリウス・ダラス前へ」


「はっ」



後方で控えていたシリウスが宰相の前へ行き隊長彰を受け取った



「前任のエリシア元隊長の働きに恥じぬよう、全身全霊をもって任務にあたる所存でございます」



一礼をしてまた後方へと下がった



「騎士エリシア・アウローラ、今この時より貴殿は騎士の身分を離するものとし

王国民はもとより、この世界の民たちの希望の光として旅立つがよい

勇者エリシア・アウローラとしての帰還を願う

そなたの旅路に幸あらん事を」


「一同敬礼!」



王の言葉のあと、騎士団長の号令で王以外の全員が敬礼する


その姿を見回し満足そうな面持ちで王と王妃は部屋を出た



「お疲れさんエリシア、頑張れよ!」



ガイラスがエリシアに声をかけた



「同じ女性として私も誇らしく思います

我ら法術士たちも、あなたの無事の帰還を待っています」



法術士長のシエナも優しく声をかける



「ありがとうございます、必ず成し遂げて参ります」



宰相は特に何も言わず執務に戻ったようだ


『一言くらいあってもいいだろうに……』

とシンジが考えていると、その場に留まりこちらに視線を向ける存在に気がつく


『…………やっぱ見られてる?……やっべ!目が合っちゃったよ!うわぁー……なんか睨まれてるよ……』


ジトーっと訝しむ目線をシンジに送っていたのは

縦ロールの金髪に整った顔立ち、優雅な式典用と思しきドレスを着込んだ女性……

アナスタシア姫その人だった


シンジを睨みながらクイッと顎をしゃくり部屋を出ていく


『ついてこい……ってか?

法術士長さんや王様は気づいてなかったっぽいけど……

エリーは話し込んでるし、……行くしかないか』


アナスタシア姫が歩いていった方へシンジはフワフワと進んでいく


姫が出ていったドアをすり抜け少し進むと、階段の踊り場で腕を組んで待っている姿を見つけた



「あの……もしかして俺の事、見えてます?」


「バッチリくっきりハッキリとね!てか何もんなのアンタ?」


『……この人お姫様だよな?お姫様ってもっとかしこまった話し方するイメージなんだけど……』


「ちょっと聞いてんの?アンタが何もんかって言ってんの」


「あ、あぁはい……俺は坂崎真司といいます」


「変な名前っ」


『カッチーン、超生意気じゃん

見たとこ14~5歳の子供じゃんか……』


「俺一応死人なんですけど、この世界の人間でも無いんで……」


「はぁ?意味わかんないんですけど、わかるように説明してよ」


「はぁ…………えぇと何から話したらいいか……」



シンジは腹立つ気持ちを抑えて、順序だてて説明をする





*****





「とまぁ、こういう訳でして……」


「ふーん、ならアンタは魂の状態のままこっち側に来ちゃったんだ

で、それを調べるためにエリシアと一緒にいたって訳ね」


「そういう事です、でもお姫様にも俺が見えるなんて驚きました」


「そりゃそうでしょ、だって今回のエリシアの件は私が予言したんだし」


「えええ!?王様が予言したんじゃないんですか?」


「これはみんなには秘密なんだけどね、パパってそっちの素質ゼロだから

でもパパが予言したって事にしといた方が収まりがいいからね、あぁそれでか……アンタが絡んでたから私が見たビジョンにモヤがかかってたんだ」


「じ、じゃあお姫様は俺が来ることを知ってたんですか?」


「知るわけないじゃないの、バッカじゃない?

わかんないから聞いたんじゃないの」


「で、ですよねー……」


「でも面白くなってきたわね、アンタみたいな変なのに出会うなんて」


「確かに変なのには間違いないですけど……」


「アンタ明日私の部屋まで来なさい、もっと話を聞かせてよ」


「それは構いませんけど、俺みたいなのが行ったらまずいんじゃ?」


「ほんとバカね、見えないんだから関係ないじゃん

私が来なさいって言ったら来るしかないの!」


「は、はぁ……わかりました」


「よろしい!んじゃまた明日!」



そう言って姫は階段を降りていった


『なんかまた別の面倒事に巻き込まれちまったみたいだなぁ、どうなっちゃうんだろ?』


去っていく姫の後ろ姿は、楽しそうに弾んでいた


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