イホウンデーさんは処女を散らしたい


「ニャールーちゃん! セックスしーましょ!!」

「むーりー」


 どうも、いつもへなへな、だけどようやく会場の確保が出来た這い寄る混沌・ニャルラトホテプです。クトゥルーくんからルルイエを借りる許可をもらったので残すは酒と食事の手配を残すのみとなっています。


 なっているんだけど、さっきからこの頭から角を生やした駄女神――もとい鹿の女神・イホウンデーが邪魔してくださるのだった。


「ねーえーニャールーちゃーん!!」

「あーやめろやめろ、揺さぶるんじゃない!! 発注ミスしちゃうだろ!!」

「だってニャルちゃんが全然構ってくれないんだもん!!」


 “だもん!!”じゃない“だもん!!”じゃ。


「小さい子供じゃないんだからそうやって駄々こねるなよ。あー、ほらスカートめくれてるよ」

「見せつけてんのよ。どうよこのカモシカのような足は」

「お前はカモシカじゃなくてイカついヘラジカでしょ」

「イカついゆーな!!」


 でも実際ヘラジカってすごい厳ついんだよね。バッファローかよって感じ。


「ねーえーそんなことよりせっくすしよーよー!!」

「なに? 副王ヤリチン母神ビッチの真似? 今日び流行んないよあんなの」

「ちっがーーーーーーーう!!」

「え? じゃあ、なに? なんなの? 頭打った? 病院いく?」

「…………にさ…………れたの」

「ん? よく聞こえない。なんて言った?」

「っ……だからぁっ!! ゆっこに……ユッコルカムイに処女なこと馬鹿にされたの!!」

「ユッコルカムイって確か……アイヌの?」

「……うん。『えー、イホウンデーってば処女神でもない癖にまだ処女なのー? プークスクス』って言われた」


 ぐすぐすと涙と鼻水を垂れ流す幼馴染さん。処女だの童貞だの気にしてるから捨てられないんだよ。


「気にするなよそんなこと……めんどくさい」

「だって……十七歳にもなって処女とかダサいし」

「盛大にサバ読むんじゃなーい!! お前もうウン千歳だろう? 僕知ってるんだからな!!」

「チッ」


 こいつ、今舌打ちしやがった!!


「大体な、処女は別にダサくないからな? 処女厨がいるくらいなんだ。処女っていうのはある種の特典みたいなもんなんだよ」


 それに比べて童貞は馬鹿にされがちだよね。誰の侵入も許さない牙城と戦経験無しの足軽みたいなもんだからだろうか? それはそれで性差別だと思うんだけどどうだろう?


「特典……じゃあニャルちゃん特典貰おう!!」

「僕処女厨じゃないから別にいらないんだけど」


 むしろそうやってぐいぐい来られると逆に引いちゃうんだよなあ。っていうかそんなことより発注させてほしいんだけど。


「そんなこと言わないで早くセックスしてよー!!」

「だから、無理だって言ってんでしょうよ。今忙しいんだよ、見てわかんない?」

「そこを何とか!!」

「何で今なのさ……もうプロージットまで時間がないから業者にも頭下げなきゃいけないんだぞ」

「だって、明日会ったときまた笑われるもん!! ねえ、おっぱい触らせてあげるからセックスしよ?」

「胸を触らないセックスなぞあってたまるか。というかだなあ、巨乳スキーの僕がそのぺったんこのまな板に欲情すると思ってるの?」

「あああああああ!!!!!!!! ニャルちゃん、今いっちばん言っちゃいけないこと言った!! 謝って!! 私と全世界のAカップの女性に謝って!!」

「発注終わったら謝ってあげるから静かにしてよ」

「今!! 今謝んなきゃ許さない!!」

「ぐえっ!? ば、バカ……首、締める……な?!」

「今ニャるちゃんがバカって言った!! バカって言った方がバカなんだから!! サスラおじいちゃんに言いつけてやるんだからあああああああああぁぁぁ………!!」



 泣きじゃくりながらバタバタと僕の家から飛び出して行くイホウンデーさん。……というか、その捨て台詞の方がよっぽどダサいんじゃなかろうか?






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出演神

ニャルラトホテプ【クトゥルー神話】

最近有名になってきたトリックスター。だけど、ここではただの苦労人。イホウンデーの好意には気づいているけど彼にとっては妹みたいなものだから勃たないらしい。巨乳が好き。


イホウンデー【クトゥルー神話】

ニャルラトホテプの嫁だったり嫁じゃなかったりするヘラジカの女神。この作品ではニャルラトホテプの幼馴染で駄女神と化している。ニャルラトホテプに好意を寄せているものの上手くいっていない。Aカップ。

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