第152話 王子

揺らめく水面を俺はただただ見つめていた。

また出ていっちまった後悔がつのっていく。あの時普通に言い合っていれば……

アイツ、来づらいだろうな……。

(……もしもし?聞こえてる?)

お?幻聴が……

……あれ?でもこの声……

「……あんかけ?あんかけなのか?」

(……うん)

ヘッドホンからあんかけの声が。

(フルル~。フンボルトペンギ~ン。ハムスタ~。)

(グエグエ!グエ!)

(僕もいる)

4色ほのぼなーず……?ってかハムスターて?


(……で、イワビー、プリンセスと喧嘩したんでしょ?プリンセスの様子から分かったぜ?)

「……イカスミに何が分かる」

(ん~。イカスミとイワビーって似てるよね~。)

フルルの天然に思わずツッコミそうになった。だがそれを俺は抑えた。

(で、何で謝んないの?)

「お、俺だって反省してんだよ。でも、あんなに怒ってて、許してくれるはずがない。出ていったんだからなおさら。アイツは絶対ここに来ない。」

(……来たげだったけど。)

「……。」

静かなみずべちほーにあんかけの声が響いた気がした。いや、ただ俺の耳に響いただけかもしれない。

(あっちが来ないならそっちが謝りに行けばいいのに。許してくれなかったら許してくれるまで謝ってさ?)

「……そうか」

何でこの一言が口から出たか分からないまま俺は立ち上がった。

(そのまま告っちゃえよ)

「うるせーな、だったらお前も告れよ?」

(……まあな)

イカスミが鼻で笑うさまがじんわり伝わってきた。

意外。イカスミのことだから照れるかと思ったのに。あんかけに馴れたか?

(……じゃあ通話切るよ。行けるよね?)

「……楽勝だよ!心配すんな!じゃあな!」

そう言って俺は駆け出した。


「……。」グスッ

「プリンセスさん……」

「心配……しないで……」

「おいプリンセス!」

「「「「!?」」」」

「こっち来い!」

「はぁ!?何で……うわぁぁぁぁぁ!?」

「えっと……強引じゃないかあれ……!?」


「……何よ!言いたいことあるなら言いなさいよ!」

言いたいことはたくさんある。

「……ごめん!俺、お前のこと考えてなかった!お前が傷つくなんて知らないで、後先なんて考えてないで……」

「……こっちこそ。今までの中で1番ひどいこと言って困らせてしまったわ……本当にごめんなさい……」

冷めていたハートがだんだんアツくなってきた。プリンセス……。

「ありがとう……寄り添ってくれて……」

「いいんだよ、大事なのは気持ちでしょ?」

「……私、あなたとだったらどんな夢も叶えられそう」

「……俺も。デカい夢、高い壁、上等だ、って感じる。だからさ……」

不思議そうに俺を見るプリンセスをよく見て、俺は申し訳なさそうに言ってやった。


「……俺のプリンセスになってくんね?///」


「……!?///」

そりゃそうだよな。照れるよな。


「……私も思っていたわよ!わがままも言えて、冗談も聞けて、心から笑えるわたしに気づいたのはあなただからよ、イワビー!あなた私の王子になりなさい!というか決定よ!///」


結構早口だったが聞き取ってやった。こんな大事な時だもんな。

「まあいいや。練習に戻ろうぜ?」

「で、でも……///」

「ビビってちゃダメダメ!ほら、行こうぜ!」ピョンピョン

「……全くもう」


その後、他のメンバーに説明したら見事に祝福された。

悩み解決、かな?



今日から俺は王子でプリンセスはお姫様!

パークのフレンズみんなに自慢したかったけど怒られそうだからやめた。

ま、お姫様の言うことは聞かないとな~♪


「……プリンセスさん、イワビーさん……じゃあやっぱり私も……」ボソッ

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