みんなの『悩み』

第151話 姫様

「ワンツーワンツー!」

私は今みんなをまとめている。リーダーじゃないけれど練習中みんなをまとめているのはいつも私。

「ダメダメ、全然ダメ!このステップはもっとこうで……」

でもいつもこんなわがままばかり言っている。

「だらしないわね、もっと気合を入れなさい!」

本当はみんなのことを思って言っている。でも怒った口調になってしまう。ひどいこと言って困らせてしまう。

「「「「はぁ……はぁ……」」」」

「あなた達、すぐにバテるわね……」

ほら、また。

「おいプリンセス……ちょっと怖いぜ?」

「いつものことよ!慣れなさいよ!」

「じゃあヘラヘラしてていいのか?w 慣れちゃったから?w」


「いい加減になさい!私はプリンセスなのよ?お姫様よお姫様!あなたはただの岩でしょう!?岩は岩らしく黙ってお姫様の言うことを聞きなさい!」


「……っ。何だよ、それ」

イワビーは出ていってしまった。

……またやってしまった。

イワビーとはたまに張り合うことがある。それでよくイワビーが出ていってしまうのだけど、これで何度目だったかしらね……。

「……ほら、プリンセス、追いかけないと!」

「そうですよ!きっと今なら間に合います!」

「イワビーさん優しいじゃないですか……!」

「……いいのよ」

「「「え?」」」

「またこんなことになってしまったのよ?どうせ許してくれないわ。私は1番ひどいことを言ってしまった。もう手遅れよ。」

私はそう呟いてその場に座り込んだ。

肩に置かれたコウテイの手も無視した。

そう、手遅れよ。だって傷つけたのは……


……私の、愛するフレンズだったから。


もしかしたら両想いかな、なんて思っていたけれど片想いになってしまう。

だって、あんなの許してくれないわよ。

すごく傷ついたでしょうね……。


(……もしもし?聞こえてる?)


う、幻聴が。

(私だよ、あんかけ)

「……あんかけ?」

「「「え!?」」」

ヘッドホンから……聞こえる。

(フルルもいるよ~。)

(グエ~!)

(ぼ、僕も)

「みんな……何で……?まさかイワビー?」

(イワビー?……分かんないけど何か嫌な予感がして連絡してるよ。第六感ってヤツ?)

(わけ分かんないよな?)

「……イワビーと喧嘩したのよ、それが嫌な予感になるんじゃない?」

っていうかそれしかない。どれだけ勘が良いの……。

(え、またイワビーと喧嘩したの?)

「……。」

(謝り行けや)

「……。」

(……聞いてる?)

「……。」

あんかけの声が耳に響く。

(……何で無言なんだ?)

(話してよ~)

(グエ~)

他の娘も……

……それが嫌で私はたくさん無視し続けた。

4人が嫌なわけじゃない。イワビーに謝るのが嫌だ。どうせ許してくれないもの……。

(……じゃあいいぜ?そっちがその気ならな……)

イカスミの声が聞こえたと思ったら急に通話が途切れた。

「!? ちょっと!そっちがその気ならって……まさか……」

4人の考えが……分かる気がする。

私は他のメンバーの視線を集めながら動かないでいた。



きっと4人は諦めていない。

まだ選択肢は残っている。

やっぱり、イワビーに謝らなきゃいけないのね……。


(……もしもし?聞こえてる?)

「……あんかけ?あんかけなのか?」

(……うん)

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