フルグレのいない頃に

第148話 心配

「はぁ……行っちゃったわね……」

私はPPPのメンバーにそんなことを言った。フルグレは現在旅行に行っている。

「プリンセスは、フルグレが心配……なのか?」

とイワビー。

「ええ」

私はそっけなく返した。


そう……私はフルグレが心配。

いつもはPPPで頑張って、困った時は私を頼りにしているのに……

いつの間にか結婚したり自立したりして……

『大きくなったな』と感心するもやっぱり心配。


「……ま、アイツらはアイツらなりに成長してるよ」

「そうだよ。だからプリンセスは成長した2人を見守るのが1番じゃないかな。」

「コウテイさんの言う通りです!そっとしておくのもあの2人の為です!」

「フルルさんのパートは完コピした私に任せて、プリンセスさんはいつも通り頑張って下さい!」

「みんな……ありがとう。さあ、練習再開……よ」

「ああ」「はい」「おう」「了解です」

私は練習を再開させた。


「ワンツーワンツー……」

どうしましょう……練習して気を紛らそうと思ったけど……頭の中はやっぱり……

「……プリンセス?おいプリンセス?」

「はっ!?な、何イワビー?」

「どうしたんだよ……いつも『ステップは合わせて』って言うお前が合わせてないって……」

「な、何でもないわ!」

……どうしてなのかしら

フルグレはPPPのメンバー……フルグレがどこかへ行ってしまったら……

「……おいプリンセス」

「……ごめんなさい」

「大丈夫か?落ち着いていこう?」

「わ、分かってるわ……」

「ここのステップはこう……でしたよね?」

「そうね……」

「フルルさんのパートってここで合ってましたよね?」

「……ええ」

自分の声が小さくなっていく。自信がなくなって、自分がちっぽけに思えてくる。

「……休憩だ、プリンセスが可哀想すぎる。」

イ、イワビー……!

「ちょっとプリンセス貰ってくぞ」

イワビーは私と外に出た。

……反則よこんなの


「……フルグレがいないから心配……なんだよな?」

私は頷いた。声が出ない……。

「……はは、プリンセスっておかしいな」

「は、はぁ!?」

声が出た。大きな声が。

「俺の言葉を無視する程心配性なんだな」

「そ、それは……あなたが雑すぎるの!私は正常!」

「何だと……そうだったのか……」

絶望するイワビー。それは明らかに冗談だったが……

「……ふふ」

不覚にも笑ってしまった。

「やっぱりフルグレはフルグレなりに成長させるのが1番……なのね」

「……何だよ、分かってんじゃねーか♪」

「あなたもあなたでおかしいわね、ふふ」

「な、貴様……!」

あれ、私……今心から笑えてる?

いや、まさかね。

私はイワビーと帰ることにした。


「お、お帰り。プリンセス、大丈夫か?」

「ええ、なんとか「なんとか大丈夫だぜ!」

「……イワビー被せてこないでよ」

「ワリッ♪」

私は彼女の笑顔を見てまた思わず笑った。

そうよ、きっとフルグレは……



私はメンバーの成長を誇らしく思う。

でも私はリーダーじゃない。

だからリーダーじゃない私のわがままを受け入れてくれるのが……とても嬉しい。

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