第109話 行旅(ろっじ)
ばすはろっじに向かって走っていく。すっかり日が落ちた暗闇に灯りが……確か随分前にもこんなことが……懐かしい。
「あ、着いた~。行こ行こ~。」
もう眠い……でも頑張る。
「あ、フルルさんにグレープさん!ロッジアリツカへようこそ~!今日はお泊まり……ですよね!」
アリツさんの明るい声。
「うん!」
「では何の部屋にしますか?」
「しっとりがいいな~」
即答。僕とフルルの部屋を思い浮かべたのだろうか。
「案内はしましょうか?」
「行ったことあるから別にいいよ~」
「分かりました!ではごゆっくり!」
そして僕とフルルはしっとりへ。
「……食堂だ」
しっとりへの道中、食堂に差し掛かりフルルが反応する。
(もう夕食の時間か?なら食べよう!)
「うん!」
僕とフルルは置いてあるじゃぱりまんを食べることにした。このじゃぱりまんは勝手に食べていいらしい。
「……うん、美味しい♪」モグモグ
(美味しいねぇ……♪)モグモグ
じゃぱりまん食べるの幸せ……と思ったその時。
「……あれ、フルグレじゃん」
「あ、あんかけ!?」
あんかけが歩いてきた。
「フルルもグレープもいたんだねぇ」
「あんかけこそ!」
「自分はパークに滞在する時ここに来るんだ。部屋『ごろごろ』って所でごろごろしてるよぉ……。」
あんかけはそう言いながらじゃぱりまんを4つ取っていく。
普通『大食いなのかな』としか思わないかもしれないけど、あんかけには黒猫の件が……。
怪しい。
気になる。
僕とフルルに背を向けるあんかけ。歩いて食堂を出ていく。
(……ねぇフルル、ちょっとだけあんかけについていっていい?すぐ戻るからさ。)
「へ?駄目ではないけど……」モグモグ
(ありがと)
僕はあんかけにこっそりついていった。
あんかけにはバレてない……。
あんかけが部屋に入る。僕はドアに耳を近づけた。老人だけどサンドスターとやくそくのうたの力で耳は良くなった。ペンギンだから元々耳が良かったから更に良くなって盗み聞きは出来る……へへ。おっと、耳を澄ませて……。
「ん、おかえり」
「ただいま~。暑いから窓開けるね。はいじゃぱりまん、2個ずつね。」
「サンキュ」
「……で?トラウマは?」モグモグ
「昨日のライブでちょっと良くなった……かな?」モグモグ
「良かった……」モグモグ
「ぼ、僕に寄っ掛かるなし///」
「あぁごめんごめん……いい風入ってくるねえへへ」
「ん~……」
……ふぅん、黒猫、もしかして僕と同じでトラウマを持っていて克服しようとしてるのかな……
頭に思い浮かぶフルル。
フルルが僕のトラウマを消してくれて……
フルルが遠くに感じる。フルルに会いに行かなきゃ。
僕は食堂に向かって走り出した。
(フルル……フルル!)
「グレープ?どうしたの?」
僕は勢いよくフルルに抱きついた。
(……やっぱり、離れないで)
「……うん」
頭の整理が追いついてなさそうな状況でも返事してくれる。
フルルが……愛しい。
僕とフルルは寄り添って眠った。
少し離れてしまった距離が、また縮まった。
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