第108話 行旅(ゆうえんち)

ばすは走る。ろっじを越えて走る。フルルの髪をなびかせ……。

そんなフルルの髪は風呂上がりだからか濡れている。


観覧車が見えてきた。

「もうすぐだね~」

あ~ほのぼのってやっぱいい~……

「何乗ろうかな~?グレープが乗りたい物に乗っていいよ~♪」

これからも結婚生活はほのぼのなのかな~♪

「……グレープ?着いたよ?」

(あ!ご、ごめん。ゆうえんち行こう!)


僕とフルルでゆうえんち内部へ歩いていく。

「また観覧車乗ろっか?」

(うん!)

「じゃあ乗りに……ん?誰かいる~!」

フルルの視線の先には椅子に座っている、赤い棒を持った黄色いフレンズと大きな物を持った茶色いフレンズと何も持っていないけど耳が大きなフレンズ。

机にはじゃぱりまん。

「もしかして噂の『せるりあんはんたー』かなぁ?行ってみよ~。」

まさかじゃぱりまんに釣られて……ないか。


「こんにちは~。フルルだよ~。あなた達はせるりあんはんたー?」

「そうですよ。私はキンシコウです。」

黄色いフレンズが優しい口調で返す。

「ほら、ヒグマさんも」

「えっ……私は……ヒグマだ。」

ちょっとふてくされてるフレンズだな……。

「リカオンもだ」

「あ、リカオンです。よろしくお願いします!」

リカオンは結構真面目なフレンズ。

「私達はセルリアンハンター。毎日セルリアンを倒しているのです!今は休憩中ですけどね。

ちなみにミドリデンの異変の大量発生したセルリアンを倒していたのも私達ですよ♪」

「本当!?ありがと~!」

おお、助かった。僕もお辞儀した。


「……で、あなた達アイドルでしょう?どうしてここに……」

「あ、新婚旅行なの。観覧車乗りたいんだ~!」

「そうですか。楽しんできて下さいね♪」

キンシコウ優しい……。

「行ってらっしゃい……」ボソッ

「行ってらっしゃい!」


距離が近づく僕達、蘇る記憶、動き出すゴンドラ。

観覧車に乗った。

「やっぱりこれに乗らなきゃね~。」

キンシコウより、もっと優しくて温かい、そんな存在。

フルルは絶対僕を裏切らない。ずっとそばにいてくれる。

「グレープといると落ち着くよ……」

フルルが呟いた。

(へ?)

「あ、いや、フルルはね、みんなから『天然』とか『フルルはやばい』って馬鹿にされてるの。まあ知ってるよね?でもグレープがそばにいてくれるおかげでフルルは胸を張ってアイドル出来る。だからすっごく嬉しいの……」

考えてることまで同じなのはびっくりするな……

ん?じゃあもしかして……

(ぼ、僕とフルルって同じこと考えてるかな?)

僕がフルルの膝に飛び乗った途端、フルルは笑った。

「きっとそうだよ」

ゴンドラも天辺。


交わる唇と嘴。


今回でキス何回目だろう。ううん、どうだっていい。

幸せな一時を味わおう。

「……へへ、ありがとう」

(こちらこそ……)

僕とフルルは抱き合った。

温かい。やっぱりフルルは僕の大切な……

嫁。


「ただいま~」

せるりあんはんたーの所に戻るとみんな赤面してた。

「お、おかえりなさい。もう日が暮れますので仲良く寝て下さぁぁぁぁぁい!///」

「あ~ろっじ行くからね。グレープ行こ~!みんなじゃあね~。」

明らかに怪しい。絶対キス見たろう……

「さようなら……///」

「じゃあな……///」

「お元気で……///」

すごく怪しいのに全く動じないフルル。いや、心の中では動じているかもしれない。やっぱり嘘をつくのが上手いなぁ……。



僕とフルルを乗せたばすは動き始めた。

ばすを夕闇が包み込む。

暗くてもフルルの温もりは分かるよ。

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