第107話 行旅(ゆきやまちほー)
「温泉まだかな~♪」
フルルがウキウキしている。これから温泉に行くからね。
ゆきやまちほーはフルルのおかげで寒くない。フルルもグレープで寒くない、と……。あぁ~たまらない!
折角の新婚旅行。メインをフルルと楽しまなきゃ!今回の場合温泉!
「あ、着いた~」
そうこうしているうちに着いた。
ばすを降りて建物に入り、あの和風な部屋に入る。そこにはギンギツネとキタキツネがいた。
「あら?フルルとグレープじゃない!いらっしゃい!」
「あのね~新婚旅行なの~。」
「新婚旅行……そう、めいっぱい楽しんでね♪」
めいっぱい楽しむつもりだよ!
「楽しも~!グレープ!温泉行こ~!」
(もちろん!)
それ以外の言葉が見つからない……。
「ゆっくりしていってね」
「あなたもゆっくりしてるじゃない……。」
寝転がるキタキツネにツッコむギンギツネ。
その光景に苦笑いしながらも僕とフルルは温泉へ歩いていった。
「さーて服を……あ……」
腕輪を見てフルルは困った表情をする。
「何か困ったことがあったの?」
ギンギツネが脱衣場の外から話しかけてくる。
「フルル、腕輪を取りたくないの。服着たままでいいかな~?靴?は脱ぐけど。」
うーん……服についてはよく知らないな。
「いいんじゃないかしら?着たままでも駄目ってことは無さそうよ?かばんが来るまで着たままだったし……。」
「服を脱ぐのってただ温泉をもっと温かく感じれるからだと思う。でもグレープがくれた腕輪の方が温かいから……。」
フルル……!
「はぁ~気持ちいい~♪」
フルルは服を着たまま入った。それでも温かそうで何より。
「幸せ~……」
(……!フルル、幸せ?)
「もちろん♪」
嬉しい。
僕はフルルに抱きついた。フルルも僕を抱き返した。
温かい。温泉のおかげかフルルのおかげか。僕はフルルのおかげと思いたい。
「んーでもそっちがフルルを抱いたらグレフルになっちゃうな~。」
(じゃあそっちが何かしなよ~)
でも何を……まさか……
うん、やっぱりキスは最高。
「……ふゎ、急にごめんね~。フルル幸せだから~♪」ニコッ
雪のように眩しいその笑顔を……守りたくて仕方がない。
なんか僕のぼせそう……もう出ようかな……
僕とフルルは温泉を出た。
「おかえりなさい!じゃぱりまんは桃味と葡萄味でいいわよね?うどんもあるからゆっくりしていきなさい♪」
ギンギツネ、気が利くな。
「じゃあ食べよ~。あーん♪」
あぁ……これファーストバイト以来してないな。自分で食べれるようになったから。まあたまにするけどね。
これからまたあーんの日常を送ろう。
(うん……美味しい♪)モグモグ
やっぱり僕達はほのぼの平和が1番!ま、ドッタンバッタンがあってもいいけどね。セルリアンの出ない、ほのぼのしたドッタンバッタン大騒ぎ。フルルの幸せもこれだし……。
すっかり全部食べ終わった。
「そろそろ行かなきゃ~。」
「ふふ、分かったわ。じゃあね。」
「またね」
「バイバ~イ♪」
ばすが出発し、温泉が遠くなっていく。
「温かかったね♪」
(うん♪)
フルルが僕を抱きしめる。
でももちろん温泉よりフルルの方が温かい。
だから笑顔でもっと僕を温めてね。
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