第105話 橙色

練習の休憩中。

寝転がるフルルの視線の先には青空。

フルルは青空を眺めて何を思っているのだろう……

空を飛びたいなと思っていても、空が綺麗だなと思っていても、ただぼーっとしているだけでも。

そこにいるフレンズはフルル。僕が外の世界で、傷心を癒す為恋してた……

そしてその傷心の原因である、とあるフンボルトペンギンの夫婦の夫が……


何故水に隠れてこっちを見ているのだ。


(……そこのお前さん!)

(な、何故バレた!)

(見え見えだよ!そんなことよりお前さんデンカだろ?デンカもフレンズ化してないとは……ってか何故ここに?)

(天国でお前らを見てたらここに来たくなった!そんで来た!ってかここどこ!俺の怪物が出たらしいが何故!)

怪物ってミドリデンのことか……

そんなことより!デンカ、まさか僕とフルルの仲を引き裂こうとしているのか!?

「……へ?デンカ?」

フルルが起き上がる。

「フルルを奪おうとしに来たの?そんなことされないよ!」

フルル……

(そんなことしないよ?まあ気にせず。)

え、しないの?

デンカは水に入っていった。

何だったんだ……


「フルルとグレープはもう結婚してるもんね~」

(なでなで最高……)

うん、やっぱりフルルの愛はデンカには向かない。薄い桃色に橙色はあわないし。やっぱり薄い桃色に紫色は1番あうよね……

「ほらフルル!練習再開の時間よ!」

あ、プリンセス……

「あ~、プリンセス~!今行くよ~」

僕とフルルはプリンセスにつれられ練習に戻った。


「はい、ソロ曲練習するわよ!誰からする?」

「フルルやりた~い!」

そっか……フルルが奪われてしまうかもしれない不安は……

「心の中のきみは」

やくそくのうたで癒され……あれ?デンカが練習を覗いてる……。まさかフルルの歌に惚れてるんじゃ……!と思ったけど。

デンカは僕とフルル、どっちも見ている。僕がそう気付いた途端、デンカは隠れた。何故……?


ソロ曲練習は終わり、人にやさしく練習になった。

みんな楽器で上手く演奏をしながら歌う。そしてサビ……

「「「「「聞こえてほしい あなたにも」」」」」

「「「「「(ガンバレ!)」」」」」

え……!

この中のフンボルトペンギン全員は驚いただろう。

デンカの声が聞こえたから……

「……デンカ?何で歌ったの?」

「「「「え?」」」」

「デンカそこにいないの?デンカ!」

(あ、待ってよ~!)

僕とフルルは外に出た。僕とフルル以外は困惑状態……ごめんみんな。


「デンカ?デンカ?何で『ガンバレ』だけ歌ったの?もしかして来たのはフルルを奪おうとしたんじゃなくて……」

(逆だよ)

「やっぱり……」

フルルの後ろにデンカはいた。フルルが振り返る。

そうか……デンカは……僕とフルルを応援していたんだ。

(時間だ。俺は天国に帰る。そうしなきゃいけないんだ。ま、また来るかもしれないけど……俺が来る来ない関係なしにフルルと仲良くな。)

(そっちこそ、天国からミドリを見守ってあげな?)

(もちろん……)

そう言ってデンカは橙色の光となって空へ消えていった。

「……仲良くしなきゃね」

(そうみたい……だね)

僕とフルルは橙色の光が完全に消えるまで空を見ていた。

光が消えたちょうど直後……

「フルル、グレープ!練習!」

「あ、ごめ~ん」

「何があったの?教えなさいよ!」

「あのね~、デンカが来て~……」

プリンセスが来て、練習を再開した。



橙色は味方になった。それで緑色も味方になった気がした。

トラウマは完全に消えた。

僕とフルルは仲良くするよ。

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