第102話 披露(ぜんぺん)
聞こえてくる……このたくさんの……
たくさんの『おめでとう』の声が!
「グレープ泣いてる~」
(え、あ、本当だ。嬉しすぎて……)
「ありがとう……あ、フルルも泣けてきた……」
(一緒だね……)
幸せ。とても幸せ。念願のフルルとの結婚。でも僕ばかり幸せじゃ駄目だ。フルルまで幸せにしなくては。今のキスに誓って……
……ん?やくそくのキスが終わったってことは……今から披露宴?かな。
「ではフルル……やくそくのキスが終わったので『ブーケトス』をするのです。」
助手が言う。
「ブーケトス?」
フルルが首を傾げる。
「アイツらに背を向けてブーケを投げるのです。それを受け取った未婚のメスは次に結婚出来るらしいのです。パークにオスは少ないですが、グレープみたいに外の世界でフレンズに恋する動物がまた出てくるかもしれませんし、外の世界ではメス同士が結婚することもあるらしいので。」
博士はたくさんのフレンズを指さしながら話した。フレンズ全員がざわつく。結婚出来るかも!って妄想をしているのだろうか。
「そっか~」
フルルは手元のブーケに目をやって、みんなに背を向けた。
「じゃあ行くよ~」
ゆったりボイスが響く。みんな笑顔で構える。
「え~い」
掛け声はふわふわしてるけど意外と高く跳んだ。流石♪
「僕ツチノコと結婚したいです!」
「どうせ飽きるだろうが!///」
「アライさんと結婚するのは私だよ~」
「フェネック!?」
いやぁ……みんな必死だな。そんなことを考えたその時だった。
「みゃあああ!」
ジャンプした黒い影がブーケを取った。
着地したそのフレンズをよく見てみた……
マーゲイやサーバルと同じ服着てるし猫?黄色い瞳と白く尖った歯と真っ黒で短い髪が輝いている。全身真っ黒。普通の黒い猫のフレンズかと思ったが、猫のフレンズのみんなと違うところが1つだけあった。首に何もつけていなかった。
「え?きみ誰かと結婚したかったの?」
「あんかけ……!いや、僕は……」
「自分が結婚首輪をつけてあげようか?」
「せ、性別分からないヒトと結婚したくないよ!いやヒトじゃない!猫の耳があるしお前猫のフレンズだろ!」
「ただ自分が猫に似てるから生やしただけ!自分はヒト!」
「ま、まあパークに来た途端生えたのが証拠か……」
あんかけと仲良し?あんかけの知り合いか?パークに来た途端って?ってかあんなフレンズ、パークにいたっけ……?
「ブーケトスは終了です!」
疑問だらけのブーケトスは司会の助手の掛け声で終わった。
「続いて、ケーキ入刀です!2人とも、この包丁でこのケーキを真っ二つにして下さい!」
助手が大きな包丁を持ってきた。
「美味しそ~……」
(自由時間にね?)
「早く自由時間にしよ!」
(じゃあ切ろ!)
「へへ♪」
僕は包丁を持てないからフルルに支えてもらい、2羽で包丁を持ち……
「え~い!」「グエー!」
一気に真っ二つ。あまりの真っ二つぶりに拍手が起こった。腰にフリッパーを当ててウインク!どや……!
「ケーキも入刀されたのでファーストバイトですね。お互いの口にケーキを運ぶのですが……グレープは出来ないのでフルルだけ。」
「分かった~」
フルルはケーキをすくって
「あーん♪」
食べるしか選択肢はない。頂きます!
……ほっぺた落ちるぅ!そしてこの味、初めてあーんしてもらったじゃぱりまんの味に似てる。やっぱりあーんしてもらうのって最高!
(美味しいよ!永遠に食べてたい!)
「フルルの分なくなっちゃうよ~」
「「我々の分は!?」」
博士と助手のツッコミが入ってファーストバイトは終わった。
まだまだ続く披露宴。これから何をするかは分からないけど……フルルを早速幸せにする!
そう決意した僕の心には、まだあの謎の黒猫が残っていたり。
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