第99話 作戦
「お待たせしてすみません!」
声とともにかばんがとしょかんに駆けつけて来た。
「かばん、やっと来たね?それじゃあ……これより作戦会議を行う!」
あんかけは張った声で叫んだ。
「「おー!」」
「まずミドリデンにどう近づくかだね~……」
フルルが困り顔になる。
(心配しなくて大丈夫。秘密教えるってやくそくしたでしょ?そのやくそくは消えない。つまり倒せちゃうってこと!)
「……そっか」
フルルの顔に笑みが戻る。それが僕にとって何よりも嬉しかったりする。
「みんなで……数人で行けば何とかなるんじゃない?他のフレンズがミドリデンを引き付けてる間に攻撃役がパッッッカーン!って」
「あんかけさん……そうですね、それしかないかもしれません!」
「じゃあどうやって近づくかは決まり。」
「でも数人って……誰~?」
「そっか、自分とかばんは戦えないから……」
「じゃあラッキーさんに頼んで、ベルトで僕の言葉を録音して、他のラッキーさんに再生してもらってPPPの皆さんに来てもらうことにしましょう!」
「いいね!じゃあ自分はかばんを手伝うよ!」
あんかけとかばんは頭がいい。流石ヒト、と言いたいところだがあんかけは……少し馬鹿……かも?
「次、石を破壊するのは誰か、です!」
「石って緑色の腕輪についてたよね~?」
「あれ、フレンズの身長でもギリギリ届かないんだよな……橙色は届くけど」
確かにミドリデンは大きかった。きっと石は届かない……
「……あの岩に乗ればいけるかも」
フルルが呟いた。あんかけとかばんがフルルの方を見る。
「あの岩……?って何ですか?」
「フルルとグレープの部屋の近くに……外の世界で最期までグレープがいた場所、とうぶどうぶつこうえんに立ってて、フルルのパネルが立ってた岩に似てる岩があったの。」
そうそう、あの岩、僕の最期までフルルパネルが立ってた……
「まさかフルル岩!」
「「フルル岩?」」
フルルとかばんの声が重なる。
「フルルのパネルが立ってた岩の愛称。外の世界でみんなそう呼んでるらしくて……まさかフルル岩がパークにまで影響が……?」
「よく分かんないけど……そのフルル岩?に乗れば背が高くなってミドリデンの石に届くんじゃないかなって。」
「いいんじゃない?あの岩、写真でしか見たことなかったけど、踏み台の代わりにはなるくらいの大きさだったし……そういえば自分東武動物公園行ったことなくて写真だけだったわ。来れなくてごめん。」
(いやそれはいいけど……)
「それはいいって。」
「良かった……」
あんかけがホッとした途端、フルルが何かを思い出して言った。
「えっと、フルルがミドリデンの石を壊せばいいの?」
「あ、じゃあフルルが壊して。適役だから。」
「そっか~頑張る~」
「決まり、です!」
「じゃあ早速ラッキーさんを……」「じゃあ早速ボスを……」
「グエー!」
僕は思いきり鳴いた。
「どうしたの~?」
(僕にやることがないのは申し訳ない……)
「そっか……2人とも、グレープに何係やってほしい?」
「係……じゃあ偵察でも頼もうかな?いないし。」
「あ、それいいですね」
成る程、偵察だな……?
「でも無理しなくていいから。万が一のことがあってもミドリデンに見つからないでね?」
(……分かった)
僕はそう言ってとしょかんの外に出て、セルリアンに見つからずみずべちほーに来れた。
ひゃー、やっぱり大きい。
大きさに驚いていると、衝撃の事実が発覚した。
え、嘘、ミドリデン、僕とフルルの部屋に向かってる?あの部屋が踏まれたら……フルル岩も……ビーバーとプレーリーの苦労も……
僕とフルルの思い出も。
『でも無理しなくていいから。万が一のことがあってもミドリデンに見つからないでね?』
いや、見つかった方がいいんだ。僕は気付いたら、ミドリデンの方に歩いていた。ミドリデンが僕に気付き、標的を僕に変える。
僕は自分の足が遅いと分かっていても、この思い出を守りたかった。妻にフラれたカコのあるみじめな自分なんてどうでもいいと思っていた。
あ、追いつかれた……
フルル、今までありがとう。ごめんね、やくそく破って。
僕の様子を見に来たらしきフルルが
「……グレープ?グレープ!?」
そう叫んだ。
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