第95話 紛失
「プリンセスのソロライブ~?」
(そうそう、今日は6月18日。ロイヤルの日だからね、としょかんでするんだってよ!〆のトークに参加するから行こう!)
「お~じゃあ行こ~」
フルルは相変わらずマイペース。じゃぱりまんをポケットに入れて出発する。僕もそれについていく。
いつも通り。僕とフルルは歩幅を合わせ、歩いていく。たまに雑談も交えて、笑い合ったりする。でも歩いていると疲れちゃうからちょっと甘えて抱いてもらう。そうしてとしょかんに着く。
「あ~もう始まってる~」
としょかんではプリンセスが『夢みるプリンセス』を歌っていた。まあ参加するトークは〆だし平気。
プリンセスがソロライブ場所をとしょかんにしたのは、プリンセスがアイドルの勉強をした場所だかららしい。騒がしいのが苦手な博士と助手もいる。敬われているっぽいから誇りに思っているのか?チョロいな。
「ひとりぼっちじゃ無理でも あなたとだったら どんな夢も叶えられる 信じているから」
舞台裏に行き、そこから『夢みるプリンセス』を聴く。ひとりぼっちじゃ無理でも……フルルとだったら……えへへ。ライブ中だけどプロポーズってアリかなぁ?深呼吸深呼吸。よし、腕輪を……あれ……?
(ない……)
「へ?」
(僕のもう1個の腕輪が!)
「えぇ!」
そう、フルル用の腕輪がなかった。もしかして……ゆるくてどこかで落としてしまったか……!?
「どうしよう、探す?」
(でも探してたらトークに……)
「どうしたんだ?」「どうしたんですか?」「どうしたー?」「どうしました?」
やがてみんなが集まってくる。
「グレープの腕輪がなくなっちゃったんだって」
「え!最初からはめてたヤツか!?おしゃれのヤツか!?」
「おしゃれの方……ねえ、探してきていい?」
フルルがうつむいて言う。
「……いいですよ。フルルさん抜きでもやってみせます!なんなら私の声真似でフルルさんがいるように見せますし!」
「へへ、そこまでしなくていいよ~。じゃあ探してくる!」
フルルに笑顔が戻ったかと思うと、フルルは僕を抱いて来た道へ戻っていった。
「さっきまでの場所は草があまりなくて落とし物をしても目立つけど……ここら辺は草がボウボウで怪しい!ここら辺を探そ!」
(うん!)
そして僕とフルルは草をかき分け腕輪を探した。
「うーん……ないな~……」モグモグ
いつの間にじゃぱりまんを……そしていつもの困り顔……それが可哀想で
(フルル)
つい名前を呼んでしまった。
「ん~?」ニコッ
フルルが微笑む……
(み、見つからないね)
「そうだね~……」
……そういえば僕を意識している時、フルルは笑ってることが多い。笑顔じゃなかったりもするけど、ほとんど笑ってた。そっか、フルルはやっぱり……
もうすっかり日が暮れてしまった。途中草が全然ない所も探したけど腕輪も全然なかった。盗られた可能性も低い。パークのフレンズは全員優しいから。
「ごめんね、見つけれなくて……ごめんね……」
(大丈夫……もう今日は帰ろう。)
もしかしたら、またあんかけがくれるかもしれないし。
「手」
(うん)
僕とフルルは手を繋いでみずべちほーに帰った。夕焼けがフルルを包み込むように照らしてる。橙色……まだちょっとトラウマだなぁ……
でも……紛失した腕輪が……セルリアンの進化の元になって、まさかパークの危機を巻き起こすなんて、この時の僕達は知る由もなかった。
ただじゃぱりまんを食べて、談笑しているだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます