第94話 内緒
僕とフルルは今、寝ぼけ眼を擦って楽屋に向かっている。
「なんか聞こえない?」
フルルが言う。……実はペンギンは耳がいい。
(もう練習始まってるの?)
「じゃあ急ご~」
ドアを開ける。
「みんなおはよー」
みんな……驚いてる?みんなは本を読んでいるらしかった。
「プランB!あなた達どっちか出ていきなさい!」
「へ!?」
「あ、ごめん、説明しないと……この件についてはあなた達どっちかにだけ教えたいの。だからどっちか……」
どっちにする!?僕は残りたいが……
「グレープ残っていいよ~」
(いいの!?)
「いいの~」
そう言ってフルルは出ていく。
「……えい」
プリンセスがドアを開ける。そこにフルルが張り付いていた……
「内緒って言ったでしょう?」
「ごめんごめん~!」
「小声で話すわね?」
「うん……」
今度こそフルルは外へ言った。
「……これを見て分かるかしら?」
そこには綺麗な衣装を着た女のヒトと男のヒトが……
いや意味分からん。僕は首を横に振った。
「この本結婚の本よ♪」
え……えぇ!結婚の!
「もう6月も後半だし……早くしないとジューンブライドが……ね?」
ああ、確か6月に結婚すると幸せになれるとか……
「この本の絵を見て参考にしなさい」
僕は頷いた。
うーん……綺麗な衣装。あ、ケーキ美味しそう。でもこんなの用意出来るわけ……
「ここら辺は用意してるわね」
えぇ!←2回目
すごい、こんなたくさんの物を準備出来るフレンズ……すごい。
更にページをめくって……僕は驚いた。輪っかが僕の腕輪と一緒だからだろうか?
「それはエンゲージリングね。」
リング……そういえばこれはフルルの腕のサイズの腕輪だったか……
……そういうことか。『大切な時』が分かった気がする。僕はお辞儀して出ていった。
「ちょっとグレープ!?あぁ……今日はとしょかんで私のソロライブがあるから、後でとしょかん来てちょうだいねー!」
プリンセスのソロライブ……か。
ドアを開けてもフルルはいなかった。僕が来たからすぐ逃げたってこともない。僕は安心した。
フルルはお気に入りの場所にいた。葡萄味のじゃぱりまんを頬張っている。隣には桃味のじゃぱりまん……成る程……
「……あ、グレープ」モグモグ
(フルル)
お互いの名前を呼び合いじゃぱりまんを頬張る。うん、美味しい。
「……ねえグレープ」モグモグ
(何?)モグモグ
「さっきのこと、教えて?」モグモグ
……フルルには悪いけど
(それは出来ないなぁ)モグモグ
「何で?」モグモグ
僕を疑っている感じではない。どうやらただ疑問に思ってるだけらしい。フルルの無邪気な瞳がそう語る。
(これは内緒にしていた方がフルルにとって楽しいかもしれないから、かなぁ?)モグモグ
「そーなの?」モグモグ
(ごめん)モグモグ
「……大丈夫、でもいつか教えてね。やくそく。」ニコッ
(うん、やくそく。)ニコッ
僕とフルルは笑顔でやくそくした。
笑顔でかわすやくそくは永遠に消えない。
それを分かっていて僕とフルルはやくそくしたんだ。
絶対今月中に教えるよ。
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