第93話 秘密

……やってしまった。

羽根フリッパー、お腹、嘴。

全てが僕のやったことを物語っている。やったことは元には戻らない。

「……ん、グレープ?」

(うわっ!)

「どうしたの驚いて?」

寝起きのフルルはジト目だし声も小さくて可愛い……いやでもフルルで忘れてしまおうだなんて思えない。

「……この匂い、もしかして」

(そう……でも悪いことなんだ……今から言うこと秘密にしてね……実は……)ゴニョゴニョ


「……マーゲイが用意したPPPへの差し入れを食べちゃった?」


(そう……)

「じゃぱりまんの匂いするなと思ったけどそういうことかぁ……」

(え?一大事じゃないの?)

「普通に木の下に置いてあるもん!誰だって食べるよ!フルル、グレープが差し入れ食べちゃったこと秘密にするね♪」

(うん……ありがとう……)

味方がいてくれる。カコ、味方が全然いなかったからそれだけで嬉しい。

「あ、マーゲイまだ木の上で寝てる……マーゲイが起きるのも時間の問題だよ……」

木の上を見上げるとマーゲイが気持ち良さそうに寝ていた。

(本当だ……じゃあ急ごう!)

「うん!」

僕とフルルは楽屋へ駆け出した。


「……あら、フルルとグレープ!さあ、全員揃ったし練習始めましょう!」

「「「「はーい」」」」

いつも通り練習を始める……フルルまでいつも通り。このまま誤魔化してくれるのか?


しばらく練習を続け……

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

マーゲイの叫び声が聞こえた。多分この中で1番びっくりしたのは真相を知る僕とフルルだろう。

「何事かしら!?」

「マーゲイの縄張りの方から聞こえたぞ……?」

「大丈夫でしょうか?」

「おいまさかセルリアンに襲われてるんじゃ……」

「行かなくちゃ!」

プリンセスが真っ先に駆け出す。みんなそれに続く。僕とフルルもそうするしかなかった。


「どうしたのマーゲイ!?」

「PPPの皆さんに……差し入れしようと思ったのに……ないのです……」

僕とフルルが唾を飲む。

「じゃぱりまん、折角集めたのに……」

「じゃぱりまんならフルルね」

「そんなことないじゃん」

フルルが平常心を保っている。すごい……

「違うの?」

「大体じゃぱりまんならフルルの部屋にあるじゃん。」

どうしよう、なかったから食べちゃったって言ってない!

「なかったから食べたんじゃないの?」

案の定!

「確かに今調べてもないけど朝御飯に全部食べちゃったからだよ」

返しが上手い!

「となるとグレープ?」

「朝からグレープとは一緒にいたよ?」

僕も頷く。本当は僕が犯人だけど……

「じゃあ一体誰が……」

「マーゲイが寝ぼけて食べちゃったんじゃないの~?」

「いえ、PPPの皆さんの差し入れです!食べるわけないですよ!」

まあそりゃそうか……

「プリンセス?」

「私はイワビーといたわよ!」

「そうだぜ!」

「コウテイ?」

「ジェーンといたよ」

「そうです!」

「……パフィン?」

「「「「有り得る!」」」」

フルル、ナイs……

「パフィンはジャパリチップスをたくさん持ってました。だからそれを食料にするかと……」

スナック菓子が朝御飯って!みんな自由に生きているなジャパリパーク。


「……結局犯人は誰かしら?」

みんな2度同じフレンズを疑わない……優しい……心が痛い……

(……やっぱり、謝るよ)

「グレープ……いいの?」

(うん。僕が言うこと、翻訳して。)

「うん……みんな、今からフルルがグレープが言うこと翻訳するよ」

(……ごめんなさい。やったのは僕です。部屋にじゃぱりまんがなくて食べてしまいました。本当にごめんなさい。)

フルルはそのままみんなに伝えた。僕はただただうつむいた。

「……グレープさん、もうちょっと早く言ってほしかったです。でもいいですよ!また探しに行きますので!」

(……!)

僕はマーゲイに深々とお辞儀をした。

「……一件落着かしら?じゃあ練習再開ね!」

「いつでもプリンセスの頭の中は練習だな~」

「「「「「「あはははは!」」」」」」



フルルは嘘をついてくれた。

だからフルルの僕への愛は……やっぱり、嘘じゃない。

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