第65話 葡萄

「ワンツーワンツー!」

「はっふーはっふー」モグモグ

「フルルまだ食べてたの!?」

練習中でもフルルはじゃぱりまんを食べる。『はっふー』って……可愛い……

「ただじゃぱりまん食べてるだけじゃん。気にしないで?」

「はっふーはっふー言われたら気にするわよ!」

「いやツッコミどころはっふーかよ!練習中にじゃぱりまん食べてるところだろ!」

もうはっふー……名言になってない?迷言?

「はぁ……仕方ないわね……また紫色のじゃぱりまん……葡萄味が好きなのね」

「葡萄じゃなくてグレープが好きなの~」

(フルル……)

「でも葡萄味のじゃぱりまんじゃなくて本当の葡萄が食べたいな~。ちくたいくこさんの記憶にはあるけど……それは外の世界。パークにはあるの~?」

プリンセスは観念したように肩を落とし……

「本当にグレープと食べ物が好きなのね。博士と助手に言えば教えてくれるわ。行ってらっしゃい!」

と言った。っていいの!?

「ありがと~!でもどうしてお休みくれたの~?」

「仲良しだからね……フルルとグレープにはかなわないわ」

「えへへ~。じゃあ行ってきま~す!」ダーーーッ

やっぱり走るのか~


「着いたとしょかん……あれ?トラウマ……」

(ちょっと無理……)

「よーし!目隠しして!よーい!としょかんまで全力疾走~」ダーーーッ


としょかんの中に入ったらしい。目から手が離れる。

「博士~?助手~?」

「……またお前らですか。」

「何の用です?かばんに用事があるからカレーは食べれないのです。」

「食べるのはかれーじゃなくて葡萄だよ~。ちょいちょい出来るでしょ~?」

「葡萄、ですか……分かりました、ちょいちょいして来ます。行きましょう、助手。」

「ちょいして来るので待ってるですよ。行きましょう、博士。」

そう言って博士と助手は飛んでいった。


「……」ガサゴソ

(ん?何して……まさか……)

「続き読も!」

この前の『恋人とするといいこと集』の続き……

「壁ドンかぁ……これグレープがする立場らしいけど出来ないな……」

(へぇ……じゃあフルルでいいからやってみて)

「じゃあ……グレープ壁に寄っ掛かって」

えーと……こうかな?と寄っ掛かった直後、僕の顔の横にフルルの手が……

「これで一気に距離を……」

(……///)


しばらく壁ドンされたままという幸せな時を過ごしたが

「「何やってるですか!?」」

もちろん博士と助手に見つかった。


「全く……葡萄やるです!とっとと食べるです!外は緑色だから中の食材置場で食べていいことを許可します!」


博士と助手って……ツンデレだよね……?

「葡萄……頂きます!!!」

たくさんの粒を1つ1つ口に入れていくフルル。

「グレープって幸せな名前だね~……はい!」モグモグ

(あ、ありがとう。)モグモグ

葡萄味のじゃぱりまんとは少し違うストレートな味と食感……

でも似ているところもあってやっぱり葡萄なんだな、と思う。

「お前らを見てると我々も食べたくなってきて……じゅるり」

「少しぐらい食べてもいいですよね……?じゅるり」

博士と助手も食べ始めた。


「……ふぅ、ごちそうさま!またね~!」

「「では。」」

僕の名前の由来って美味しい……フルルも満足そうで良かった。



パークのじゃぱりまん以外の食べ物は結構食べ尽くしたが、きっとまだまだいっぱいある。

フルル、その時はよろしく。

それに答えるかのようにフルルが「美味しいものをたくさん食べよう」と口ずさむ。

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