第62話 辛味

「はぁ~練習はやっぱり疲れるなぁ~……」

「イワビーが元気過ぎるからよ……」

踊りの練習……イワビーの踊りは結構激しい。

「っていうかじゃぱりまんの色……黄緑だからセーフかしら?何味?」

「ワサビだぜ!俺は辛いのが好き!」

「辛いの……そういえばじゃぱりまんに『かれー』つけたのもあったよね~!あれ少し辛かった~」

あ、ろっじの朝御飯か。

「でもお米と一緒に食べるともっと美味しくなるそうよ」

「博士と助手も毎日食べてるぜ!」

「言っちゃった……イワビー、それ言ったr」

「そういうの『かれーらいす』って言うんだよねー!」ダーーーッ

「行っちゃった……」

「あ……すまん……」


えーと……こっちはとしょかん方面か?

「かれー!かれー!じゅるり!」

真似してるし。


そうこうしているうちにとしょかんが見えてきt……

あ……広がる緑色……

「目隠し~!」

えぇ!?

見えない……何も見えない……

「何なのですか!」

「どうしたのですか?」

博士と助手の声……としょかんに入ったのか……?僕の目からフルルの手が離れていく……

「……これで思い出さない……よね?」

(あ……フルル……ありがとう……)

そういうことだったんだ。トラウマを思い出さないように……ってこと……


「……で!駆け込んできて全く!騒がしいですよ!」

「早く用件を言うのです!とっとと済ますです!」

怒りたいけど我慢我慢……

「フルル達ね~……かれーらいすを食べたいの~!」

「……なんだ、そんなことですか。」ケロッ

「我々も食べたいのです。一緒に食べるです。」ケロッ

急に態度変わった……

「じゃあかばんを呼んでくるです。」

「お前ら、すぐ来るので待つですよ。」

「分かった~」


「……」ウズウズ

(? どうした?)

「本読も~!」

(うぇ!?)

そう言うとフルルは本を漁り出した。


しばらく漁る。


そして急にその手は止まった。

「この本……」

その本には男と女が抱き合い、ハートマークが出てる絵が描かれてあった。

「えーと……字がほとんど読めないけど絵からして『恋人とやるといいこと集』的な?」

(えぇ!それ……)

「やってみよ?」

(へ?)

「グレープを仰向けにして、フルルの手をグレープの首の両サイドに……」

いやフルル近い近い!///

「ただいま帰りました。」

「どうもかばんです、フルルさん!グレープさ……」

「あ……///」

「……ご……ごめんなさあああああい!///」ダーーーッ

「かばん、走るの苦手とか言っていたのに意外と速いのですね。博士。」

「そこですか!?」

待て待て!かばんがいないとかれーが!


「早くよこすのです」

ドッタンバッタン大騒ぎしたけどなんとか収まって、かばんはかれー作り中。

「もう少しですよー!」

「待てないのです……」


「……はい!出来ました!」


「流石かばんなのです。」

「頂きま~す!」モグモグ

みんなのスプーンが止まらない。黙々と食べている。

「グレープも食べよ!」

(はいはい!頂きます!)

かれーはろっじのと同じ味だけどお米や野菜もついていて味が増えて……

少し辛味もあって飽きないところもいい……

辛味……イワビーが好きになるのも納得。

「「おかわりなのです!」」

「そう言うと思ってたくさん作りましたよ♪」

博士と助手がかばんの子供に見える……


「ごちそうさま~!また作ってね~!」

「分かりましたー!」

「「では」」

帰りももちろん目隠し……



料理の美味しい辛味とトラウマの不味い辛味じゃ大違い。

だからトラウマの不味い辛味はフルルの甘味で消してしまうよ。

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