第8話 旅行(ゆうえんち)

ばすはろっじと思われる建物を通過した。

もうすぐ夕方だ。予定通りにどんどん進んでいる。遊園地でフルルともっと仲良くなってやる!

「あ、あれ観覧車でしょうか?」

「お、一番前だからよく見えるな」

「フルルは立ってるから見えるけど……上にかばんもあるから背伸びしないと見えない……」

(僕は高い高いしてもらわないと見えない……)

「高い高~い」

(見えた~)

「ここら辺に停めるそうですよ」

「なるほど、ここからは徒歩ね!」

「私そういうの得意分野だぞ」

「マゾだ~」

え?マゾ……ってなんだろう


そして徒歩で遊園地に来た。ラッキービーストはばすで待ってるらしい。

「あーフルル観覧車乗りたーい」

(僕も~)

「ああ、じゃあ2人で乗ってきなよ」

「プリンセスはいいのか?あ、私はいいが……」

「邪魔しちゃ駄目だもの」

「そうですね!」

「行ってくるといいぜ!」

「私も行きたいけど……2人を思うと行けませんね……」

「みんな……」

(じゃあ遠慮なく行こう!)

「うん!行ってくる!」

「「「行ってらっしゃーい」」」

「じゃあ私達は遊んでましょうか」

「「「はーい」」」


「わー動いてるー」

これって奇跡だよね。触れられないパネルの彼女が、触れられる実物になったから……やっぱりフルルは近くで見ると……

(……美しい)

「え?フルルがって事?それとも景色?」

あ、声に出てた。

(……フルルがって事だよ。可愛くて、優しくて、ちゃんと僕の事を考えていてくれてる。)

「グレープだって、フルルの事ずっと考えてくれてるよね?それに優しいし、どこか甘えん坊で……一緒にいて楽しい!」

(そうなの?)

「うん。『ねぇ どんなきみも 好きだから ずっと そばにいたい』」

(それってやくそくのうた……)

「うん!やくそく……果たせちゃったね。」

(うん……フルルは『ミドリ』とは全然違うから、僕もずっとそばにいたい)

「ミドリってグレープを裏切ったペンギンだよね?後デンカも……ひどーい!フルル、デンカ嫌い!」

(ありがとう……やっぱり緑色と紫色はあわなかったな。)

「あー……そうだね、色に変えるとあまりあわない……」

(でも、桃色に紫色ってあうよね)

「あ!あうあう!」

僕は勇気を出して言った。

(……あわせてみない?もうすぐてっぺんだし)

「え?」


「ここもすっかり変わっちゃったわね。」

「ああ、かばんのパーティーのステージか。懐かしい……」

「あのパーティーがあって以来整備されてないそうよ」

「そうか……だからこんなに汚いのか」


「ここをぴょんぴょん登っていくぜー!」

「私も高い所大好きですぅ!」

「気をつけて下さーい!」


「……なんか寂しいな。」

「でもこの寂しさを乗り越えてこそのPPPだもの。今度遊園地でもライブしましょう!」

「なるほど、博士と助手とマーゲイに頼めばいけるかもな」

「ただいま……」

「お帰……あれ、フルル、顔が赤いわよ?」

「観覧車で恋人といたらあれだろ。口押さえてるし。」

「ああ……あれね!」

(……言う?)

「駄目だよ~!」


楽しい時はあっという間に過ぎ、みんなばすに乗った。

「フルル、勘違いしてた。グレープ、プリンセスに浮気したかと思った。」

「えぇ!?だから冷たい態度だったのね……」

「ほら、やっぱりグレープさんはフルルさんの事を考えていたのですよ!」

(そうだよ!僕はフルル一筋だから!)

「そーだったんだね……ありがとう!」

「あ、動きました!」

「もう夜かー はえーな」



観覧車は、誰かがいて正常な限りずっと動いて止まらない。

僕の心臓の鼓動も、フルルがいて僕が正常な限りずっと動いて止まらないよ。




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