第5話 崩壊組曲
「オマエ達...、このパークの者を全てここに連れてくるのだ...」
「オーダー承知しました...」
「あいよ...」
「はい...」
「ハァ...ハァ...」
疲れ切った様子でその会話を博士は聞いていた。
3人は直ぐに行動を初めて出て行った。
「しかし、驚いた物だ。私のマインドコントロールを一切受け付けない者がここに居るとは...」
コツコツという硬い音を響かせながら
近付きつつ、そう話した。
「あなたの...、手先になるくらいなら....、死んだ方がマシです...」
「ただ、オマエだけじゃ何も意味を成さない。私はこうして完全体となる為に80パーセントの力を既に蓄えた。
星の守護神達も既に意味も無い存在だ。私が宇宙を手中に収めるのも近い」
「....」
一方かばん達は平原へと向かっていた。
「ハッピーさん、どうしてへいげんに?」
『強イ、エネルギーヲ感ジルンダ』
嫌な予感がした。
助手と博士を早く合わせなければいけないのに。
月に叢雲、花に風とはこのことかもしれない。
平原に辿り着くと、いつもの活気は無く、草木がぞうぞうと風に揺らされているだけだった。
「何かおかしいよね?」
サーバルも、そんな雰囲気を感じ取っていた。
「いつもの雰囲気と違うのだ」
「うん...」
一行はヘラジカの屋敷へと向かった。
こちらも、廃墟の様に静まり返っており不気味だった。
「誰かいますか?」
かばんはそう声を掛けながら、奥へと進んだ。
襖を何枚か開けた。
ここが確か、ヘラジカのいた部屋だ。
恐る恐る襖を、ゆっくりと開けた。
「...!」
かばん達の目に飛び込んで来たもの、
倒れ込む二人の大将と、真ん中に正座する彼女は
「ジェーンさん...?」
かばんは信じられなかった。
「お待ちしてました。シリウス様の仰った通り、シリウス様には特別な力があります」
機械的な喋り方をしたが、蚊の羽音の如く声が小さかった。
彼女もマインドコントロールに掛かっていることそれはわかっていた。
「あなた方を倒せと命じられた故に、
ここにいます。夢の世界でお会いしましょう」
鏡に中に消えて行った。
「僕達も後を追わないと!」
「助手...、ちょっと待っててね」
かばん達は、夢の中へと入って行った。
夢の世界は平原だった。
「はじめましょう。ここがあなた達の
最後のステージです」
また小さい声だった。
彼女はリカオン達と同じ様に種を落とし
魔夢を召喚した。
その姿は鹿の様だが立派な鬣があった。
「みんなっ、行くよっ!」
「星の力、僕らに届け...!」
かばん達が変身すると、ジェーンは
エレキギターを出現させた。
「なにあれ...」
サーバルが不安気な声で言った。
「じゃあね...」
そう呟くと、ギターを勢いよく弾いた。
「うみゃっ!?」
「うっ...」
サーバルとフェネックが同時に頭を抑えた。
「どうしたのだ!?」
「あ...、頭が...、痛い...」
「私...、も...」
二人は苦しそうに耳を抑えていた。
かばんとアライさんには全く効かなかったが。
「サーバルちゃん...!」
「許さないのだっ...!」
向かって行くアライさんの前に立ち塞がるのはあの魔夢だった。
果敢に剣を構え、立ち向かう。
それを見た魔夢は突っ込んで来る。
「アライさん、ここは僕に任せてください!」
そう言って、杖を振ると、
勢いよく炎に包まれる。
アライさんはジェーンに向かい、高く飛んだ。
「その音をやめるのだっ!」
勢いよく剣を振り下ろした。
しかし、ギターで受け止められる。
「なんで、あなたに効かない...?」
「は?声が小さくて聞こえないのだ!」
大きな声でそう言い返した。
「ともかくっ、やめるのだ!」
力を込めて入れ、ジェーンを地に叩き落とした。
アライさんも地面に着地する。
ジェーンも着地していた。
「...もうこんなことやめるのだ」
剣を斜めに構つつ、ジェーンを見る。
「...」
一度、沈黙した。
大きく深呼吸して、
「出来るわけない」
と言った。
「くっ...」
炎を扱い応戦するが、魔夢はダメージを受けてなさそうだ。
(早く倒さなきゃいけないのに...)
その時だった。
サーバルがふらつきながら、こちらに来た。
「かばんちゃん、手伝うよ…!」
「だ、大丈夫なの?」
「平気...、平気っ!
私の岩の魔法で浮かばせた岩に炎を移せば...」
サーバルは珍しく名案を出した。
「そうだ、そうしよう!
行くよ、サーバルちゃん!」
「うん...!」
サーバルは地面に両手を付き岩を出現させた。その大岩をトンファーで思いっきり突き上げた。大きな岩が上空に浮かぶ。
その岩に狙いを定め、炎を放つ。
大気圏に突入する隕石のように燃え赤くなった。
「えいっ...!」
腕を振りかざし、燃えた大きな岩を
魔夢に向かって落とした。
魔夢は避けようと身体を動かそうとした。
「逃がさないっ...」
唐突に魔夢に鎖が巻き付いた。
巨岩が激突し、大きく砕け散った。
ズシンと音を立て、うつ伏せになった。
「フェネックさん...!ありがとうございます!」
かばんが礼を述べた。
少しフェネックは右手で手錠を持ちながら、左手で頭を抑えていた。
「いいって...、それより早く魔夢をやっつけてよ」
「それなら...、かばんちゃん」
「うん、行くよサーバルちゃん」
サーバルは地面を叩くと岩は魔夢を囲む様に漂い始める。
かばんは岩を炎と一体化させた。
二人は目を合わせ頷いた。
「「メテオバースト!」」
岩は熱々に熱せられ、魔夢に向かった。
爆発音がし、魔夢は煙に包まれた。
かばん達が魔夢と戦っている一方、
アライさんとジェーンは激しくぶつかり合っていた。
(なんてやつなのだ...)
剣の素早い動きを、ギターの柄の方で防ぎつつ交わす。
「...きえて」
一旦身を引くと、ギターを引いた。
「だからその攻撃はアライさんに効かない...」
そう言った刹那
ビシャッ
「のだっ...」
頬に何かした垂れる感覚がした。
「“メロディスラッシュライン”...
5本の線を放ち、あなたに攻撃した」
「フッ...」
「...何がおかしいの」
「ふはははははっ!」
笑いながら右手の甲で傷跡をなぞるようにし、血を拭った。
「アライさんがこんなので負けるわけないのだ。アライさんはこの世で...
“1番最強”なのだ...」
「何を言ってるの...」
「アライさんが“1番最強“”の理由はなぁ、“1番最強”の相棒がいるからなのだ!」
そう言うと咄嗟に右側に体を逸らした。
「...!!」
ズドドドドドドドド!
その銃声でジェーンは咄嗟に、ギターで銃弾を庇った。
ギターは銃弾を受けボロボロになった。
「あなたは...」
いつの間にか背後に立っていたのは
肩から無数の銃弾を掛けた...
「“1番最強”の相棒さ」
と言い、笑って見せた。
「ジェーン...、博士を返すのだ」
剣を突きつけた。
前には銃を構えたフェネック、後ろには剣を構えたアライさんがいる。
「...っ」
急いで鏡を出し、黙ったまま消えた。
フェネックはすぐさまアライさんに寄った。
左の剣を地に突き刺し、倒れないように体を支えた。
「大丈夫?アライさん...?」
「平気なのだ...、このくらい...
ところで早く二人を起こさないといけないのだ...」
「うん...」
フェネックはアライさんを支えながら外へ出た。
「ハァ...ハァ...」
(あんな奴の近くにいるのは嫌なのです...賢いので、隙を見て逃げてやったのです。もうすぐ図書館の近く...、ここに逃げれば...)
「うぐっ!?」
唐突に首が苦しくなった。
「この首輪はっ...!?」
「ダメじゃないですか...
勝手に逃げたりして...
でも、私からは逃れられませんけどね」
図書館の外壁の崩れた所に座っていたのはリカオンだった。
「やめるのですっ...、
苦しいのですっ.....」
「ふっふふ、もっと苦しくしますよ?」
「...ッ」
(助手...、かばん...、誰でもいいのです...、誰かっ、誰か助けてくださいっ...!)
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