第4話 避けては通れぬ道

「ねぇ、どうしようか?カフェも様子見に行く?」


サーバルは尋ねた。


アルパカさんやトキさんが、

星のかがやきを失っているかもしれない。



「様子だけ見に行こうか・・・?」


僕はそう言った。

アライさんとフェネックもそう肯いたので、

僕達は、カフェへと向かおうとしたのだが・・・


そう言えばロープウェイは、2人乗りであった。

その旨を伝えた。


『ボクガ、イクメンバーヲ、キメテモイイカナ』


「別にいいですけど・・・」


僕も肯いて肯定を示し、他の3人も同意した。


『フェネックト、サーバル。ヨウスヲミニイッテクレルカナ』


「私とフェネックだね。わかった」


『ジャア、ナニカアレバ、ボクガ、カバンタチヲヨビニイクヨ』


早速、フェネックとサーバルの二人はカフェへと向かっていった。






「フゥ...。二人とも・・・、申し訳ないのです」

(博士を守るため・・・、この二人に悪夢を見せないといけないのは・・・

心が痛むのです・・・。星のかがやきは一度取って、持って帰れば

シリウスがパワーアップする・・・。)



助手は机に寝る二人を見つめていた。



懐から鏡を取り出す。

トキを映すと虹色に変色した。


「・・・・・」


その中へ入っていった。






フェネックとサーバルが中に入ると居たのは寝ている二人だった。

しかし、この前見たカバやジャガーとも違い、普通に寝ているようだった。



「もしかしたら、まだ星のかがやきを奪われてないのかもね」


フェネックは憶測を口にした。


「そうだね。でも、一応、見ようか」


ハッピーがドリームゲートを開くと、二人はその中へ入った。





青い空広がる雲の世界


「・・・これが、星のかがやきですか・・・」


助手が見つけたのは、雲の中に置いてある星型の器。

もう一枚のカードを取り出す。


それを容器に当てると、輝きが吸い取られる。



吸い取られたら相手は悪夢を見る。


戻すには、持っているカードを再度器に当てるか、

かがやきを取り戻すかのどちらかである。


とシリウスは言っていた。



完全復活を目指すシリウスにとって、スターガーディアンは

自分を浄化することのできる邪魔な存在、退治しなければいけないのだ。




「こんなこと・・・、したくないですよ・・・」


本音が漏れる。


手を震わせながら、そのカードを近付ける。


その時だった。


「助手!!」


ふっと視線を上げると、そこにいたのは二人の

見覚えのあるフレンズだった。

思わず手が止まった。


「もしかして助手も・・・」


フェネックは息を飲んだ。


「・・・お前達がシリウスの言っていたスターガーディアンですか!?」


「そうだよ...」


息を吐くようにサーバルは言った。


「・・・・」


「・・・どうしたのさ」


フェネックは彼女の様子を見て、違和感を覚えた。


「・・・早く図書館へ行って下さい」


「と、図書館・・・?」


サーバルは反射的に復唱した。


「ハカセをシリウスの手先の奴らから・・・」


下を俯き何かを堪えているようだった。


「助手、もしかして博士を庇って・・・」


フェネックの直感は正しかった。

本人は何も言わなかったが、何となく、そんな雰囲気が感じられた。


「私は最悪なフレンズなのです・・・。この二人に悪夢を見せようとした

悪夢を見て苦しむのは私だけで十分なのです・・・

二人はただ眠らせただけです...」


「助手、シリウスはどこにいるの?」


「遊園地です・・・。あの人は着実に力を手に入れてます。

スターガーディアンの力を超越するのも時間の問題です!

だから一時も早く・・・!」


助手がそう訴えている時であった。


「はーん・・・、やっぱり・・・」


その声で後ろを振り返った。


「力の授与を断った時から、そういう事だろうと思っていました...」


「リ、リカオン!!」


サーバルがそう叫んだ。


「私が裏切り者を直接消しても良いんですけど・・・、

来客者がいるようですからね・・・。

そっちを先に、やっちゃいましょうか・・・。

オーダー遂行の為に・・・」


リカオンは黒い種を地面に落とした。



蕾から花が開くと、カァカァという鳴き声と共に

無数の黒い翼をもった“魔夢”が宙を漂い始めた。


「まあ、二人しかいませんし・・・

これだけ数が多ければ、あなた達も倒せるでしょう・・・

それで...、逃がしませんよ?」


右手を助手に向けた。


「うっ...!?」


動きが封じられる。首に違和感を感じた。

手で触れると、革材質のモノが巻き付けられている。


「シリウス様からの能力・・・。

あなたの首に巻いてあるのは、首輪と言うものです。

私はあなたの様な、他人のいう事を聞かない“犬”を躾ける義務があります...

オーダーを忠実に守らない者には、罰を与えるのが当然・・・」


「な、なにをするのですッ!」


逃げようと必死にもがくが、なぜか前に進めないし飛び立てない。


リカオンは助手の首を乱暴につかんだ。


「シリウス様から貰った、“コレ”

凄い物らしいですね。なにやら、自分の中の

“星のかがやき”を全て失くして自ら“魔夢”に

なるとかならないとか・・・、試してみましょうか」


黒い丸い球体を掴んだ助手の口に近付けた。


「い、いやっ!やめっ!」


「煩いっ!」


その口に無理矢理押し込んだ。


「あうっ...」


助手はバッタリと気を失ったように倒れてしまった。


「じょ、助手!!」


リカオンは指を鳴らした。

それと同時に首輪も消える。


「さあ、とっととやっつけちゃってくださいね...」


助手は黒い光に包まれた。

そして、その姿を現したのだ。


黒くなり、フレンズの姿は維持している物の、

頭は野鳥の様になっていた。黄色の鋭い目を二人に向け、

大きな翼と化した両腕を羽ばたかせる。


「グルルルル...」


唸るような声を出した。


「サーバル・・・、やるしかないね」


「・・・わかった」


二人はそれぞれスターストーンを握った。


「「星の力・・・、私に届けっ・・・!」」










「みーっけ・・・」


「タ、タイリクオオカミ・・・」


博士はその姿を見た瞬間、直ぐに空に飛だった。


「ヘッ、上に逃げる・・・?待ってくれよッ!」


タイリクオオカミも上へと飛び上がった。







「私は、タイリクさんに加勢でもしてきましょう・・・。それでは」


リカオンはそう言うと立ち去った。


場に残されたのは、サーバルとフェネック、そして魔夢の大群と

リカオンによって魔夢化された助手だけだった。



『他人ヲ、魔夢化スルナンテ、聞イタ事ガ無イ。

ヤハリ、他ノ魔夢ト、同様ニ、浄化スル、必要ガアリソウダ』



「とりあえずサーバル、あのザコ達は私が何とかするから、助手を頼むよ」


「う、うん・・・」


フェネックは二丁の拳銃を取り出す。


それと同じタイミングで、魔夢達も、襲い掛かって来た。



バンバンッという無機質な銃声と共に、銃弾が放たれる。

そして、彼女の魔法が発動する。


弾は無数に分裂して、魔夢に向かい、爆発した。


それを横目にサーバルは助手へと向かっていた。


(凄い・・・、フェネック・・・、って感心してる場合じゃないよね)



高く飛び上がり、助手に向かう。


「グルルルルゥゥ...」


低い声で唸った。


刹那、姿勢を変え、流星の如くサーバルの身体目がけて飛び込んで来た。


「・・・!?」


サーバルはその動きに思わず目を疑った。異常なまでの速さで、対応が遅れた。


「ぐっ...!!」


何とか武器で押さえるが、その押す力は半端では無かった。

白い雲の様な地面に押さえつけられる。


その様子を、フェネックも見ていた。


「やっぱダメか・・・」


左手の拳銃を助手に向け、放った。

しかし、その銃弾も大きな翼により撃ち落とされる。


「何なのアイツ・・・」


大空に一度飛び上がると、残っている魔夢をなんと自身の身に

吸収し始めたのだ。


無数の鳥型が掃除機に吸い込まれて行くかの如く

助手の身体に吸収されているのだ。


「何する気っ・・・」


サーバルは腕を擦りながら、立ち上がった。


「ヤバいかもしれない...」


『サーバル...、君ハ、特別ナ、魔法ヲ使エル。

ソレヲ、使ウンダ...。』


「ん...?」


ハッピーがサーバルに語り掛けていた時、

助手は大きな翼を広げ、漆黒の羽を飛ばしてきたのである。


「あっ!」


フェネックは咄嗟に、素早く横へ避けた。


「うあっ...!」


サーバルも避けたものの助手は何故か必要にサーバルを狙う。


「サーバルから離れなよっ!!」


飛び上がり、拳銃を構えた。

拳銃というより、彼女の銃は狙撃銃に変形していた。


「私は友達を助けるのさっ...!」


片目を閉じ、スコープを覗き込む。


(絶対に“外さない...!”)


そして、引き金を引いた。




“ファイナルターゲット...”




ズバーンッ...


鋭い銃弾が空気を裂き、魔夢へと向かった。






「何故、あなたが上空にっ!」


「オレは気体を操る事が出来る...。雲、煙、霧...

それらを足場にすれば、上空なんぞ楽に上がれんだよ

賢いアンタならわかるよな。弱肉強食って言葉の意味...」


鋭い眼光で博士を見た。


「こうなったら、逃げる・・・・」


「待ってくださいよ・・・」


目前に現れたのはリカオンだった。


「リ、リカオン!?」


「鏡を覗いたら、面白いのがいましたんでね...。逃がしませんよ」


「うぬっ!?」


彼女の魔法で首輪を掛けられた。


「何をするのですっ!?」




「決まってんだろぉ・・・」


「怖いことじゃありません。“楽しいこと”ですよ」


二人は不気味な笑みを浮かべゆっくりと博士に近付いた。


「や...、やめ...、やめるのです...!」






「ハァ...、ハァ...」


フェネックは息を乱し、上を見上げた。


助手は地面に降りていた。


「サーバル!」


思わず叫んだ。

サーバルの身体を見ると、黒い無数の羽が突き刺さっている。


彼女は茫然と立ち尽くしていた。


「大丈夫!?サーバル!!」


「大丈夫だよ・・・、フェネック・・・」


思わず足を止めた。


「・・・、そういうことなんだね・・・」


サーバルは一本の黒い羽を抜いた。

その根元には赤い血が付着している。


「えっ・・・」


困惑した顔をフェネックは見せた。


「私の魔法、やっとわかったよ・・・」


次の瞬間、サーバルの身体に刺さっていた全ての黒い羽が抜け落ちた。

傷だらけになった体は、まだ癒えていない。


「“ちょっと”タイイングが遅かったら、穴あきだらけで死んでたね、あはは...」


サーバルは持っていたトンファーで、思いっ切り地面を叩いた。


「ええっ...!」


次の瞬間、何もないハズの白い雲の上から、ゴツゴツとした茶色の岩が、

助手を囲う様に、“岩の砦”を築いた。


「助手は・・・、これを気付かせたかったんだ・・・。今、元に戻すよ!」


サーバルは高く飛び跳ねた。


地上からトンファーに次々と岩が集まる。


『サーバルノ、魔法ハ、“岩”ダ。

ドンナ、状況ニ、オイテモ、絶対ニ、砕ケル事ノナイ、

不屈ノ心、諦メル事ノナイ、彼女ノ、意志ノ強サヲ、体現シテイル...』


岩の盾の様になったトンファーで助手の頭上を狙った。暗黒に染まった星を砕く。


“シューティングロックスター...!”


強烈な光に周囲が包まれた。


「うあっ...!」


フェネックは思わず片腕で目を庇った。










「・・・ハァ、・・・ここは」


目を覚ましたのは、真っ青な青空が広がる、草原だった。

そよ風が助手の髪を揺らした。とても、心地よかった。


「・・・私は、どうなったのですか」






「助手...!起きてよ...!」


サーバルは助手を揺さぶった。


「どういうことなのさ・・・」


ハッピーは暫く黙っていた。

長い沈黙の後、こう言った。


『・・・星のかがやきガ、破壊サレタンダ』


「破壊・・・?」


フェネックは見上げた。


『星のかがやきハ、星の器トイウ、夢ノ中ニアル、容器ニ、入ッテイル。

アノ、飴玉ハ、アノ玉二、星のかがやきヲ、吸収サセ、空ニスル。

ソシテ、花ノ変ワリニ容器ヲ露出サセ、攻撃対象ニスル・・・

簡単ニ言ウト、助手ハ...、“永遠ニ、夢ノ世界カラ出レナイ”』


「星の器が無いってことは、浄化しても星のかがやきを入れられないってこと?」


『ソウダネ』


フェネックの問いにハッピーは淡々と答えた。


「もうずっと助手は眠ったままなの・・・?」


不安げな声でサーバルは尋ねた。


『イヤ...、手立テハアルヨ。星の器ヲ、失ッタ者ハ、

希望ヲ、与エルコトニヨリ、目ヲ覚マスコトガアル。

希望ヲ与エラレルノハ、親シイ人物ダケダ』


「親しい人物・・・?」


「博士・・・!博士の所に行けばっ!!」



「おっと、それはどうかな?」


そう言って後ろから声を掛けられた。

振り返るといたのはタイリクオオカミだった。


「これを見な」


大き目の鏡を出し、見せた。

映し出されたのは、跪き首輪を付けられ、怯えた顔し、

うっすらと涙を浮かべている博士だった。


声は聞こえないが、いつもと違うその様子から、緊迫した様子だという事が感じられた。


「博士に何したのさ・・・」


「“まだ”なにもしてねぇよ。まぁ、シリウス様の意向でどうなるかわからねえけどな

アッハハ...、早く取り返さないと、マズイことになるかもなぁ。じゃあな!」


タイリクオオカミはそう言い残し去った。



「フェネック、早く博士を助けよう!」


「...わかった」


サーバルは助手を担いで、高山を下山するのだった。

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