第3話 喪失への不安

じゃんぐるちほー。

木々が生い茂る森である。


ここではジャガーが毎日大河を渡るフレンズを

対岸まで送っている。

ここに、あるフレンズ訪れた。


「やぁ・・・」


「あれ?タイリクオオカミ...?珍しいね、こんなところまで」


「ちょっと対岸まで頼めるか?」


「ああ、いいよ」






川を渡っている途中、タイリクオオカミはこんなことを聞いてきた。


「お前に、大切な物はあるか?」


「そうだねぇ・・・、勿論、筏が無きゃ川を渡れないだろ?

それにフレンズも・・・」


「一番は?」


「一番・・・、やっぱ一番の親友かな。照れくさいけど...、実は・・・」






いつの間にか対岸に到着した。


「話を聞かせてくれてありがとな。漫画のネタになりそうだよ...」


「ああ、役に立てたなら」


「そうだ、“お駄賃”をあげなきゃね...。この私に」


「えっ?」





かばん達はジャングルの森を抜け、川岸に辿り着いた。


「ジャガーさん、大丈夫かな・・・」


「ほしのかがやきを奪われてたらどうしよう・・・」


「取り戻すしか...、ないよね」


僕の脳内には、カバの夢の中で串刺しになったサーバルの姿が

中々離れようとしなかった。


早くシリウスを倒し、このような思いをサーバルにさせないようにしないと。


「あっ...、かばんちゃん!」


サーバルが指を差した。


「ジャ、ジャガーさん!」


川原に倒れているジャガーを見つけた。

あの時のカバと同じだ。


間違いない...。


彼女もまた、シリウスにほしのかがやきを奪われてしまっていた。




「助けないと・・・!ハッピー!」


『ワカッタヨ』


僕は、サーバルの行動力に感心していた。

自分が危ない目にあったのは、知っているはず。

なのに、自分を危険を顧みず仲間を助けに奔走する。


僕には・・・、出来ない事だ。


ハッピーさんの開けたドリームゲートに、再び入る事となった。






「フェネック、何なのだ?かばんさん達が消えたのだ」


「さぁ、ねぇ~?とりあえず、行ってみる?」


「気になるから、行ってみるのだ!!」






ジャガーさんの夢の中。

一面青い世界だった。


『ココハ、スイチュウノ、ユメノナカダネ』


「水中・・・」


僕は見渡した。

茶色い地面と青い壁が広がっているだけだ。


「...!かばんちゃん、危ないっ!」


「ふぇっ!?」


僕はサーバルのいる左側に引っ張られた。


「な、なに...」


「あっ、アレは!」



僕は前を見た。あの姿は・・・



「よぉ、お二人さん」


変わったしゃがみ方をする彼女は間違えない。



「タイリクオオカミ・・・、さん・・・?」


しかし、何時もの彼女とは雰囲気がまるで違う。

優しく頼もしさを感じる彼女だったが、

今ではまるで、完全なる不良という感じを受ける。


「かばん・・・、オレが何しに来たかぁ、わかるか?」


一人称までも変わっている。

これはリカオンと同じ・・・、マインドコントロール


『カノジョモ、マインドコントロールサレテイルノカ。

シリウスモ、ヤッカイナコトスルネ』


「おい、そこのピンクボス!言葉を慎めぇ...」


その言い方はまるで脅迫しているようだった。


「タイリクオオカミ...、まさか、あなたまで...

“魔夢”を出すの!?」


サーバルは、悲し気な顔をしながらそう言った。


「お前らだけなら、オレが瞬殺するけどな。

まあ、単純に倒しただけじゃつまらないじゃないか・・・、

オレは“良いカオ”が欲しいんだよ...。苦しみ、泣き叫ぶ奴のね!」


丸っきりの別人になってしまっている。

僕は足がすくんだ。


「だ、だからって...」


「ああ?だから何だ。面白い事をして何が悪い。

“良いカオ”貰えりゃ他人がどうなったって知らんさ

喋りの時間は終わりだ。良い感じに泣き叫んでくれよな」


彼女はリカオンと同じように種を取り出し、地面へと落とした。


この前と同じ様に、花の蕾ができ、出てきたのは

地面からニョロニョロと伸びる魚の様な“魔夢”だった。


「ああ、そうだそうだ・・・。大事なもんを忘れてたよ」


背後に出現した鏡の中に手を突っ込み、乱雑に引っ張って来たのは


「コツメカワウソ!!」


サーバルが叫んだ。


「コイツの一番の宝物だとよ。じゃあ大切にしねーとな」


気を失っているコツメカワウソをその魔夢の中にためらう事無く入れた。


「あっ!何するんですか!」


「簡単に倒されちゃあ...、困るんだよ。

まあ、倒せたとしても、コイツが無事かどうかは分からないけど、ハハッ」


不気味な笑みを浮かべた。



「サーバルちゃん・・・、取りあえず、アレを倒してコツメカワウソさんを助けないと!」


「うん...。そうだね」



(星の力・・・、どんなもんなんだ?)


タイリクオオカミは遠くに離れ、その様子を見る事にした。




「星の力、わたしに届け!」


「星の力、僕に届け...!」





「な、何なのだ・・・、アレは・・・

二人ともピカーって光って・・・」


「すごいねー・・・」


アライさんとフェネックは二人の様子を後ろの方で目立たない様に見ていた。


『キミタチ・・・、ドリームゲートガ、ミエタノカイ?』


「ボスが喋ったのだ!?」


『ボクハ、ハッピービースト。ラッキー、ジャナイヨ

ゲートガ、ミエルトイウコトハ、キミタチニハ、ソシツガアルト、イワザルオエナイ』


「そしつ・・・?」


「つまり、私達もかばんさんみたいになれるって話だよー」


(デモ、ナゼダ?カノジョタチハ...、“魔夢”ノチカラヲウケテイル、

ヨウスヲミラレナイ...)




変身した二人は、魔夢を見つめた。


「私がコツメカワウソを助けるっ...」


「何するかわからないから・・・、気をつけて・・・」


「うん...!」


走りながら魔夢に向かって行く。



「そう簡単には行かないぜ...」


タイリクは腕を組みその様子をじっくりと観察する



近寄った時、地中から奇妙な音がするのに、サーバルは気が付く。


「...!」


咄嗟に踏み切り、宙へと跳んだ。

次の瞬間、触手が地中から伸びだしてくる。


僕は杖を振った。


伸びて来た触手は発火。炎に包まれ、その勢いを失う。


(ありがとう!かばんちゃん!これならっ...)


一筋の可能性が見えて来た時、本体から、サーバル目がけ左右に

触手が伸びる。空中から下降する形になっていたサーバルは一瞬にして捉えられた。


「うみゃっ!?」



「なるほどね・・・。素早い割に隙がデカいんだ。

んで、炎攻撃は遠隔でも出来ると・・・」



「サーバルちゃん...!」


助けないと。

炎を出す以外にも、僕は自分の思った場所へワープ出来た筈だ。


サーバルちゃんの近くにっ・・・


「ごほっ...!」


以前にも経験したことある、あの液体の中・・・


(な、なんで・・・)



「所詮、タネさえわかれば対応出来るんだよ・・・。

この魔夢は恐らく“溺れ”の悪夢。

お前はサーバルのすぐ近くに行くとわかったから、

魔夢に触手を伸ばし、お前が現れた瞬間引き込んだ。

因みに、オレは魔夢を操れる...。スゲエだろ?」



(ウッ...、頭がッ...)


かばんは激しい頭痛に襲われた。

そして眠気も襲う。



『タイヘンダ。魔夢ノナカニ、トリコマレ、ジカンガタツト

アクムデ、ウナサレツヅケル、コトニナル』


「かばんさんの危機なのだ!アライさんが助けるのだ!」


「はいよ」


『キョウリョクシテ、クレルカイ?』


「もちろんなのだ!」


「当たり前でしょ?」


二人はハッピービーストから、スターストーンを手に取る。

そして、2人がやったように、彼女達もその力を得るのだった。




「星の力、アライさんに届けなのだ!」


「星の力...、私に届け...」




『カノジョタチカラ...、スサマジイ、チカラヲ、カンジル...

ナンナンダ...、コノチカラハ...』



「あれぇ・・・?侵入者がもう二人もいたのか・・・

しかも、星の力で変身だあ・・・?冗談よせよ・・・」


(いや・・・、待て・・・。

相手が何の能力を持っているかが重要だ・・・)


目を細め、鋭い眼光をアライさん達に向けた。




「うっ...、ぐ、ぐるし...」


締め付けられていた時であった。



「ソニックスラッシュ!」


剣でサーバルを締め付けていた触手切り落とした。



「うあっ!」


解放されたサーバルは、下へ落ちる。


「サーバルッ!」


急いで剣をしまい、地面へと向かう。



『アノ、シュンパツリョク...。スターストーンノケイジョウヘンカ...

カノジョラハ、“トンデモナイヤツ”ダ...』




サーバルが完全に落ち切るより先にアライさんはサーバルを両手を伸ばし抱きかかえた。


そして、地面に降り、体勢を立て直した。


「ありがとう...、アライさん...」


「たいしたことないのだ!早くかばんさんを・・・」


「かばんちゃん!?」


サーバルが敵を見ると、コツメカワウソと共にかばんが飲み込まれている。


「アライさん、行ける?」


「そこら辺は、バッチリなのだ」


二人はスターストーンの力で、飛躍した身体能力を用い、魔夢へと向かって行った。



「切られようが何しようが生やしまくれ!」


タイリクオオカミはそう魔夢に言った。


「ねぇ...、どこ見てんの...」


バンバンッ...


銃声とその声で、タイリクオオカミは後ろを振り向いた。


「はぁ!?」


横に避ける。

自分の元いた場所から爆発音がした。


彼女が見たのは、長いクリーム色のトレンチコートに白いシャツ、

黒いスカートを履き律儀にネクタイを締めたフェネックの姿だった。


「操られてるって言っても・・・、それはさ...

“さつじんみすい”になるんじゃないかなぁ・・・?」


「あぁ?何の事だぁ?」


威圧するような声で言い返した。


「悪いけど...、逮捕させてもらうね?」



二丁の拳銃をタイリクオオカミに向けた。


フェネックが引き金を引くと二発に銃弾が連続で放たれた。


その銃弾を見つめたオオカミは目を光らせ、片手で破壊した。


「バーカ、そんなもんで倒せると思ったのか」


「手を見てみなよ」


「は?」


先程自身が銃弾を破壊した、手を見た。


「...!!」


『フェネック...、カノジョハ、スウシュルイノ、

ジュウダンヲ、アツカエル...、ソレガ、カノジョノ、マホウ...

“悪ヲ制裁スル正義ノ刑事(ヒーロー)”』


手が凍っていた。

指先の感覚が無く動かせない。


「ク...、クソ...」


「時間稼ぎは終わり...」






「うりゃああっ!!」


アライさんは飛び上がり、剣を自分の頭上の真上に振り上げた。

“魔夢”がコツメカワウソとかばんが捕らえられている場所を

切り裂いた。その瞬間にサーバルが飛び込み、二人を両腕で抱えて反対側に飛び出した。






「何時の間にっ...」


後ろの異変に気づき振り返っていた。


「もうやめようよ・・・。こんなこと」


「ッチ、お前に何が出来る」


フェネックを睨んだ。


彼女は何も言う事無く、コートのポケットからある物を取り出した。


『アイテヲ、コウソクスルタメノ、“手錠”

カノジョノ、ドクセンヨクガ、ウミダシタ、モノ。

アイヲ、ドクセンシタイ...』


ハッピーはアライさんを見る。


魔夢を切り裂いたあと、アライさんは再度飛び上がった。

サーバル並みのジャンプを見せる。

背中のマントがたなびく。


「これでトドメなのだ!」


真上に振り上げた剣を魔夢の頭の花目がけて振り下ろした。




一方、手錠を取り出したフェネックはタイリクオオカミの右手を捕らえた。

しかし、彼女はいたって冷静だった。


(なるほど...、鎖が伸びる...)


「ハッピー、どうやったら洗脳は解けるのかな」


『“ジョウカ”ダネ。キミノ、スターストーンヲツカウンダ』


「“浄化”ね...、アッハハ...!馬鹿らしい。実に馬鹿げてる!

君の顔はつまらない!こんなヤツに倒されてたまるかよ...!」


右の手から黒い煙を放つ。

そのまま、手錠をすり抜けた。


「能力を持ってるのは君たちだけじゃないんだ...。

ま、次からは君たちの対策を練ってこようじゃないか。あばよ」


鏡を出現させ、その中に去った。



「・・・洗脳されたフレンズ、厄介だね」


右手の人差し指で、先ほどまでタイリクオオカミの腕を掴んでいた

手錠をクルクルと回した。


「あっ、かばんさん」




「ねぇ!かばんちゃん、大丈夫!?」


サーバルは彼女を揺さぶった。


「う...、サーバル...、ちゃん...」


ゆっくりと目を開けた。


「大丈夫?」


「あぁ...、うん...、まあ...」


『コツメカワウソヲ、サキニソトニダスヨ』


ハッピービーストと協力してコツメカワウソを外の世界へと出した。


4人はお互い向き合う様にし、一斉に“星のかがやき”を“スターストーン”から

放出、ジャガーに星のかがやきを取り戻した。






「う...ううん...」


ジャガーは目を覚ました。


「大丈夫・・・?ジャガーちゃん?」


目の前にコツメカワウソがいた。


その瞬間、胸の奥底から、何とも言えない感情が湧き出した。


「・・・・!!」


焦燥に刈られ、目の前の彼女に抱き着いた。

目からは涙がこぼれた。


「ジャ、ジャガーちゃん?」


「ゴメンね...、ちょっと、怖い夢を見ちゃってさ...」


「どんな夢だったの・・・?」


「君が川で溺れて・・・、私が必死に助けようとする・・・

けど、君は流されて、流されて、届かなくて・・・」


「ジャガーちゃん・・・、どこにも行かないよ!」


「わかってる・・・。けど、失うのが怖かったんだ・・・」


「ありがとうね!」







『ナニカ、タイセツナモノヲ、ウシナウ。

ヒトニトッテ、ソレハ、キョウフソノモノ。

キミタチハ、ソノ、キョウフヲ、トリノゾイタ。

アノフタリハ、イママデヨリモ、カケガエノ、ナイモノニ、ナルダロウネ


タニンニ、シアワセヲアタエル。ソレモ、スターガーディアンノ、ツトメ...』



「まさか、二人が仲間になってくれるとはね!」


サーバルは後ろで手を組みアハハと笑った。


「助かりました・・・」


かばんは胸をなで下ろした。


「アライさんが居れば負けはないのだ!!」


「ところで、タイリクオオカミ...、何か私達と似たような力を持ってたけど・・・?」


『シリウスガ、チカラヲ、ワケアタエタノカモシレナイ。

トイウコトハ、カレモ、スコシズツ、ホシノチカラヲ

トリモドシテイルノカモ、シレナイネ』


「早くそのシリウス?っていうのやっつけないと。

でも、どこにいるんだろう?」


「情報を集めないとね・・・」




四人はシリウスの元へと、進んでいった・・・






「オ前達ニモ、力ヲ、分ケ合タエヨウ...

ホシノチカラニ、値スル魔力ヲ、授ケヨウ...」


「あの・・・、私は要りません。この実力で十分です」


「あぁん?お前今何つったぁ?」


不良被れのタイリクオオカミが鋭い視線を助手に向けた。


「オーダーを無視するんですか?」


「ありがたいことなのに・・・」


他の二人もそう言う。


「では...、それを証明します...」


(全て博士の・・・、為なのです・・・)


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