第2話 孤独、夢の中で


僕は、言葉を失い絶句した。


あの黒くトゲトゲしい物体に向かってサーバルちゃんが飛んだ。

その瞬間、トゲが伸び、サーバルちゃんの身体に・・・


突き刺さり、鮮血を流して・・・







『カバン!カバン!』


「はっ・・・」


ハッピーの声で目を覚ました。


(アレ・・・?)


サーバルはその右手の武器で魔夢が伸ばしてきている

トゲを抑えていた。


「なっ...、一体...」


『スターストーンヲ、ミニツケテテナイカラ、

魔夢ノミセル、アクムニ、カカッタンダ』


「悪夢・・・」


『カバンモ、スターストーンヲトッテ、イッショニ、タタカウンダ』


「そんな、戦うだなんて...、僕には能力もないし...」



「うみゃあ...」


サーバルはそうしているうちに抑えるのを止め、下に降りた。

息を乱している。


「ねぇハッピー、どうやったら倒せるの?」


『アタマノ、ホウニ、“花”ガアル。ソレヲネラウンダ』


(この尖ったのが邪魔・・・、全部壊すより、ピンポイントに

狙った方がいいね)


サーバルはクラウチングの姿勢から、助走をつけて高く飛び上がった。


高く飛んだ頭上からは、その花が確認できる。


片腕を引く。


『サーバル、キミハキョウリョクナ、チカラヲエテル。

ソノ、チカラヲ、ツカウツンダ』


「うん!」


この角度からだと、直接花は狙いにくい。

手前のトゲが邪魔をしているのだ。


(これを壊さないとっ!)


「うみゃあ!!」


片腕を伸ばし、トゲを打ち砕いた。


「後は花を・・・!」



サーバルが花を狙おうとした時だった。











「ウッ...」






「サ...、サーバルちゃん!!」


僕は叫んだ。


サーバルは突如“魔夢”が伸ばしてきたトゲに刺された。

腹部からは血が出ている。


「待って!これも夢だよね!?」


『イヤ、ゲンジツ、ダヨ...』




目を見開き、瞳を揺らがせる。


「・・・かばん、・・・ちゃん」




「サーバルちゃん!サーバルちゃんを助けないと!!」


気が狂った様に僕は叫んだ。


『カバン、マンナカノ、アカのスターストーンヲ、トルンダ

キミニハ。ソレガテキシテイル』


僕は真ん中のスターストーンを取った。


無我夢中で、一心不乱に、サーバルちゃんを助けたい。

その思いだけで、両手を合わせた。


「星の力・・・、僕に届け!」


サーバルと同じ様に僕も眩い光に包まれた。


その間、“何か力強い物”が僕の体に染みついていく感覚を感じた。

そして...



「これが・・・」


『キミモ、ガーディアンノ、ヒトリダ』


僕らしくない感じがした。


赤いスカートに、上半身にはリボンと黒い服の上に赤い上着を羽織る・・・、

薄いピンクの手袋をはめ、頭には、羽根を付けた赤の三角帽。


手には、杖・・・?




『キミハ、ヤサシサト、サカンナユウキノモチヌシ。

“ホノオ”ノチカラガ、ツカエルハズダヨ』




「とにかく、サーバルちゃんを助けないとっ!」


(けど、全体にやったら、サーバルちゃんまで危なくなる・・・)


僕は杖を振った。サーバルが刺さっているトゲ目がけて。

鎖の様に炎が伸び、その根元を焼き尽くした。


「サーバルちゃんっ!!」


僕が駆けだした瞬間、いつの間にかサーバルの近くまでいた。

瞬間的に移動したのか。

僕は急いで、サーバルを抱き、地面に降りた。



「大丈夫、サーバルちゃん!!しっかりして!!」



「うぅ...、かばん...、ちゃん...」


薄目を開けてこちらを見た。



彼女の傷口を僕は手で押さえた。


(お願い...、サーバルちゃんを治して・・・)



僕がそう願うと、傷口が光出した。


『コレモ、ホシノチカラダヨ』


ハッピーが後ろで浮遊しながら、そう言った。



「ハァ...、あれ....」


「もう痛くない?サーバルちゃん」


「大丈夫...」


サーバルを支えながら、僕は立ち上がった。


「えへへ、かばんちゃん、その恰好かわいいね」


「えっ...、そ、そうかな...」


何の脈略もなく唐突に言われたので、少し照れくさかった。


「あっ、そんな事より早くカバを助けなきゃね!」


「うん...」




『アノトゲハ、“コドク”ダ』


「えっ?」


「ハッピーさん...?」


僕とサーバルはハッピーさんを見た。

背中の羽で羽ばたいている。


『魔夢ハ、ソノジンブツノ、ミテイルアクムヲ、カタチニシタモノ。

カバハ、“コドク”ヲ、カンジテイル。サーバルヲ、サシタノハ、ハナレタクナカッタカラ...』


「カバさん・・・」


僕はカバがあの最初さばんなで出会った時、散々「気をつけなさい」と言われていたことに

気付いた。本当は。


仲間が遠くに行く事が、不安で、寂しかったんだ。




「・・・カバに一人じゃないって教えてあげなきゃね」


サーバルはそう言った。


「うん...!」


僕とサーバルは身を寄せた。


「僕があのトゲを炎で何とかするよ。

サーバルちゃんは、花をお願いしていいかな」


「いいよ!」


親指を立てて見せつけた。


「あっ、火...、大丈夫?」


「かばんちゃんのなら、平気!」


笑った顔を見せた。さっきまで苦しそうにしていたのが嘘の様だ。



「行くよっ!」


僕は杖を振った。

先程と同じように、炎は鎖の様に伸び、魔夢に巻きつき始める。


しかし、奴も黙って攻撃を受けている訳には行かない。


トゲを伸ばし始める。


「焼き切れないっ...」


「任せて!」


サーバルは伸びてくトゲに立ち向かって行った。


トゲのない僅かな隙間を見つけて、そこで飛び跳ねる。


「みゃみゃ!!」


炎で脆くなったトゲを破壊し魔夢の頭上へと舞い上がる。


「サーバルちゃん!いい!?」



「いいよ!」



僕はまた杖を振った。


サーバルの持つトンファーが炎に包まれる。


この技は僕とサーバルでしかできない技だと思う。


「みゃーっ!フレイムブレイク!」


両腕を花に向けて突き出した。





魔夢は、全身を炎に包まれた。


そして、光を放ちながら・・・




『ジョウカシタネ!ヨカッタ!』




「ハァー・・・」


「お疲れ、サーバルちゃん」


「フォローありがとうね、かばんちゃん!」


『サア、スターストーンデ、ホシノカガヤキヲトリモドスンダ。

ソレガ、ガーディアンノ、ヤクワリダヨ』


「どうやって取り戻すの?」


『ジブンノ、スターストーンヲ、ニギッテイノルンダ』


僕とサーバルは、リボンにある石を握った。


目を瞑りカバの心を慰めた。


カバさんは一人じゃないって。






「・・・ううん、あら・・・、私・・・」


カバは目を覚ました。


「カバさん、大丈夫ですか?」


「か、かばん・・・?」


「カバ!」


サーバルは唐突に後ろ側からカバに抱き着いた。


「な、いきなりどうしたの?」


「カバさんは一人じゃないって事を知らせたくて・・・」


カバは一体何のことか、分からずちょっと困惑した様子だったが、

何処かしら安心したような表情を浮かべた。












「ホシノ、チカラヲ、ワレイガイニ、モツモノ...、ヤッカイダ...」


「シリウス様よぉ...、オレに行かせてくれよ...」


「オマエカ...、チノニオイデモ、カギタイノカ」


「冗談はやめてくれ、血はニガテだ。

だが・・・、他人の“いい顔”は大好きだ...、へへっ...」

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