第1話 始まりはいつもここから

二人は、流星の落下は気づかなかった。

しかし、異変は彼女達に近付いていた。


ごこくでの旅を終え、サーバルの故郷でもあり、自分の故郷でもある

きょうしゅうのさばんなで過ごしていた。



木の下で昼寝をしていたぼくは、目を覚ました。


うっすらと、ぼやけて見えたのは。


ラッキーさん?


いや、身体は青色ではなくピンク色、背中に虹色の羽が生えている。

変わったラッキーさんだ。


『キミノ、ナマエハ?』


質問が飛んで来た。


「かばん・・・」


『ボクハ、ハッピービースト』


ハッピービースト...?ラッキーさんじゃなくて?


『ネェ、キミ。ボクト、ケイヤクシテ、“ホシノマモリビト”ニ、ナッテクレナイカナ』


星の守り人?契約?

何で僕に・・・?


「んみゃぁ・・・」


サーバルが目を覚ました。


「おはょー、かばんちゃん・・・・」


サーバルも、そのピンク色のラッキー、いや、ハッピーさんを見て

驚いた眼をしていた。


「なにあれ、ボス?」


「アレは・・・」


『ボクハ、ハッピービースト。

ユウシャサマカラ、ホシノマモリビトヲ、サガスタメニ、

ウチュウノ、トオイホシカラ、ヤッテキタンダ』


「うわああああああっ!喋ったああああああああ!!」


サーバルはまた驚いた。


「あの...、さっきから、なんなんですか?

勇者とか・・・、宇宙とか・・・、星の守り人って・・・」


『イマカラ、メッセージヲ、ツタエルヨ』


ハッピーさんは、ラッキーさんと同じように、映像を映し出した。

映し出されたのは、真っ暗な映像であるが、音声だけ聞こえる。


『このメッセージをハッピーに託す。

例の星に着いたら、誰かに見せてくれ。

君たちの星に、シリウスが来ているかもしれない。

それについて、話をしよう。


シリウスというのは、ある星の王様だった。

ある日彼は、“スターストーン”というとてつもなく強い力を秘めた

秘宝を手に入れたんだ。その力を利用し、彼は、周りの星々を全て

自分の物にしていった。


彼は、銀河征服を企てた。

いつの間にか彼は、宇宙で最強の力を使う様になったんだ。

そこで私は、彼を封印したんだ。

彼からスターストーンの力を取り上げ、彼を暗黒面に封印した。

そして、彼がスターストーンの力を二度と使わないように破壊した。

しかし、彼にはスターストーンと似た力を持つ物を見つけた。


それが“星のかがやき”だ。

“星のかがやき”は、一人一人が持っている物だ。

簡単にいえば、夢や希望と言ったものだ。

シリウスはそれを集めてスターストーンと同等の力を取り戻そうと

しているのだろう。


“星のかがやき”を奪われた者は不安や絶望しか抱かなくなり、

永遠と悪夢を見続けて苦しめる。


それを取り戻すには、輝きをとり戻す必要がある。

取り戻すにはスターストーンの力が必要だ。


彼は暗黒面を脱出し、この星に狙いを定め向かった。

彼の目的は星の力を取り戻すことだ。

スターストーンと同様の力を身に着け、銀河征服をするつもりだろう。



私は事情があり、この星には行けない。破壊したスターストーンの

6つのカケラをこのハッピーに託した。

銀河を守る為に、また、星のかがやきを奪われた者がいるかもしれない。

そう言った者達を救う為に、協力してほしい。長々とすまない。話は以上だ』



映像は途切れた。


僕とサーバルは、口を開けてポカンとその長話を聞いていた。


サーバルは僕が噛砕いた話じゃないと、理解できない。

話をの要点を、整理して伝えないと。


「つまり、シリウスって言う悪い人がここにやって来て、

ここのフレンズさんの“ほしのかがやき”を奪いに来るかもしれないってこと・・・、ですか?」


『ソウダヨ』


ハッピーはそう返事をした。


「どうすればいいのかな・・・、かばんちゃん」


サーバルは顔をこちらに向けた。


「サーバルちゃん・・・、僕も、話を理解した訳じゃ無いんだけど・・・」


僕たちが唐突の出来事に混乱していると遠くから声が聞こえた。


「おーい!サーバル!かばん!いるか!!」


トムソンガゼルの声だった。


「どうしたんですか・・・?」


「さっき水場に行ったらさ・・・、カバの様子が変だったんだよ!」


「えっ!?カバ!?」


サーバルは首を振り向かせた。


「なんかよくわかんないけど...」


トムソンガゼルも困惑した表情を隠しきれない。


「行ってみよう、サーバルちゃん」


「うん!」


僕とサーバルは急いで、水場へと向かった。


ハッピービーストはその後ろを付いて来るのであった。





水場に辿り着いた。

僕たちは、驚くべき光景を目にした。


「カ、カバ!!」


サーバルは両手を握り、口のそばで震わせていた。


あのいつものカバさんとは違う、不安そうな表情で横向きに寝ている。


「カバさん・・・、一体何が・・・」


『“ホシノカガヤキ”ヲ、ウバワレテイルネ。

イソイデ、トリモドサナイト、ダメダヨ』


「ねぇ!どうしたらいいの!?」


サーバルが緊迫した声でハッピーに尋ねた。


『コレヲ、ツカウンダ』


箱を頭の上に乗せて見せた。


『スターストーンダヨ。コレヲニギッテ、ホシノチカラヲ、ウケトルンダ』


「わかった!」


「ちょっと待ってよ、サーバルちゃん!」


「なに?」


「危なく...、ない?」


「わたしっ、友達を助けたいから!」


サーバルは自信を持った表情でそう言い切った。

そして、箱から黄色のスターストーンを取った。


「それで・・・?」


『イマカラ“ドリームゲート”ヲ、ヒラクヨ』


ハッピービーストは身体の丸いレンズの所でカバを照らした。


『コノナカニハイッテ』


「うん!」


サーバルは中へと、躊躇いなく入っていった。


「あっ、ちょっと!」


僕も慌てて、中へ入った。






「ここは・・・?」


目覚めた先は、長い草が生い茂ってる、さばんなの様な所。


『ココガ、カバノユメノナカダヨ』


「かばんちゃん・・・」


サーバルは辺りをきょろきょろ見回してる。


「あっ、そうだ!早く、星のかがやきを・・・」


サッ...


「だ、だれ!?」


足音に反応したサーバルは、そう声を上げた。


「・・・サーバルさん、かばんさん・・・・」


「えっ...、なんで...」


僕は目を疑った。

何故、カバの夢の中に、リカオンが居るのか。


「リ、リカオン・・・?」



「・・・・」


彼女もまた驚愕したように、絶句している。



「アッ...うっ、あっ...!!!」


「リカオン!?」


唐突に彼女は頭を抱え苦しみ始めた。





(ヤツラハ...、ホシノチカラヲモッテイル...

ワレワレノ、ケイカクノジャマダ...。シマツ...、シロ...)





「ぐわっ...、あっ...、はぁ...はぁ...」


「あの...、大丈夫ですか?」


僕はリカオンに声を掛けた。




「はぁー...、ふっ...、あー...、君達は...、

始末しなければいけない...、なるほど、オーダー承りました...。

シリウス様...」


「えっ...、今なんて...」


サーバルは現実を理解できなかった。


「私は、忠実なシリウス様にお仕えするもの・・・。

シリウス様のオーダーは忠実に実行する・・・」


「どうしたの!!リカオン!!目を覚ましてよ!!」


サーバルは必死に呼びかけるが、リカオンはうんともすんとも言わない


『ドウヤラ、シリウスニ、“マインドコントロール”サレテルミタイダ...』


「マインドコントロール・・・?」


僕はハッピーさんを向いた。


「邪魔されると困るんですよねぇ...、せいぜい諦めてくれると、嬉しいんですけど」


リカオンは懐から、種の様な物を取り出した。


「ほしのかがやきを奪われたら最後、絶望の森をさまよう事になります。

そんな者が見る夢の悪夢を、見せてあげますよ」


その種を地面に落とした。



地面からは黒い蕾の様なものが生える。

そして、中から黒い物が出て来た。


トゲトゲしい黒い物体の二つの眼がサーバルと僕を見つめる。


『コレハ、“魔夢”ダネ。カバノミテイル、アクムヲ、グゲンカシタ、モノダヨ』


「孤独、寂しさが彼女の悪夢の源...、そういう気持ちを伝えられない...、繊細ですねぇ

まあ、頑張ってくださいよ。私にはまだオーダーが溜まってるんで、失礼します」


リカオンは突如現れた鏡の中に帰って行った。


「あっ、リカオン!」


『魔夢ヲ浄化シナイト、カノジョハユメカラサメナイ。

サーバル、スターストーンヲツカウンダ。

「ホシノチカラ、ワタシニトドケ」ッテ、ネガッテ、

ガーディアンニ、ヘンシンスルンダ』


「へ、変身?」


「わかったよ、カバ...、今助けるからね!」


サーバルは両手を祈るように重ねた。

その手の中には、スターストーンがある。

目を閉じ、その言葉を唱えた。


「...星の力、私に届け!」


すると、眩い光がサーバルを包み込んだ。


「えっ...、なにこれ!!」


僕は咄嗟に片腕で目を庇った。







「・・・、すっごーい」


サーバルのそんな声が聞こえた。


僕が目を開けると、サーバルは、白色のドレスの様な格好に

身を包んでいた。黄色のリボン、そして腕と脚、スカート下部にある横線の

金色のラインが際立つ。


彼女の“純粋さ”を、表してる様に見えた。


『サーバル、ソノブキデ、タオスンダ』


サーバルは二本の長い棒を両手に持っていた。


「ハッピーさん・・・、アレは・・・」


『トンファー、ダネ。

カノジョニ、フサワシイブキヲ、ホシノチカラガヨビダシタンダ』



「・・・、いくよっ!」


サーバルは思いっきり膝を曲げて、得意のジャンプ力を生かし、

その“魔夢”と呼ばれる者へと立ち向かって行った。

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