それは推測
「解呪完了までのカウントダウン? 想いある口づけ、もしくは思いやり口づけの度に数が減っていく。その分、私に呪いが移る。ココリエは回復、する……?」
「なんでえ、存外理解が早かったな」
「どうせ悪い頭だ」
「不貞腐れんなよ、サイ。いや、ここまで早く法則を見破ったのはおめえがはじめてだ。だいたいのやつは転送完了直前になって本来の獲物に気づき、顔面蒼白ってな」
「助けている筈が、自身を贄にしていることに怯えるわけか。結構なご趣味だ」
「お褒めの言葉と受け取っておくぜ」
からから笑うセネミスの声。彼女がこの間で念話のようなことをしてきたからにはなにかしら説明かなにかがあると思って、サイは身構えた。どうせろくでもない。
それに昨日の晩から耳鳴りがうるさい。いつもうるさいがいつも以上にうるさい。急かすように耳に叫ばれ、そのせいで寝不足だ。よって機嫌が悪い。
セネミスもサイの不機嫌に気づいているのか単刀直入に用件を述べてきた。……用件、というよりそれは連絡。
「ウッペの鷹がおめえらを探しに樹海に入っているぜ。よほど想われてんな、おめえ」
「? ココリエを案じてであろう」
「ふふ、どうだか。男か女かで男を取る野郎の方が少ないと思うけどねぇ」
「変な意味を含んで聞こえる。そうではなく、セツキはココリエを大事に、王族を第一に考えて動く男だ。堅いし面倒臭い説教魔だが一途に王家を思う心は天晴だ」
「……おめえ、本当に可哀想なコだな、サイ。好意を知らねえだけじゃなく気づくこともできねえのかい? こいつぁ、ちと野郎の方々に残酷すぎるな、おい」
「イミフ」
「いや。わっちには関係ねえか。当人たちでどうとでもしてくれや。でだ、鷹だが、もう結構おめえらの近くにいっている。雨の中ぶっ通しでイークスを急がせたみてえだな。ネンシ樹海で無茶するぜ。っつーわけでおめえから合図なりしなけりゃ合流しな」
そこまで言ってまたセネミスは念話を切ったのかブツっと大きな音がした。
だが、サイはそんなことどうでもいい。セツキが近くに来ている。これは嬉しい報せ、ではあるがこちらから「ここにいる」できないのは痛い。
うまく見つけてくれればいいが……。しかしまあ、世の中そんなうまいことことが運ぶ筈はない。それでもサイはセツキなら、と考え直して希望を持っておく。
セツキに合流できればウッペの衆が野営するのに陣を構えた露営地に戻れる。おそらく今のサイにそれはできない。左の足首から先が燃えるように熱い。痛い。
ちょっといやだったが、靴を脱いで足袋をずらして確かめ、納得した。左足首から先に刻まれたなにかの式模様。おそらくこれを呪詛式とでもいうのだろう。赤々と輝く
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