魔女を狩る者
1人で舞台を観劇しに行く日。
いつも単独行動ばかりだから…。
こういう日の楽しみは、どっぷりと世界観に浸ること。
友達と観に行くのも、観劇後の感想戦がセットで楽しいんだけどね。
でも、独りだと目立ってしまうモノがある。
それは、劇場内に充満する魔女達の所業…簡単に言ってしまえばマナー違反、ルール違反。
このノイズがなかった舞台を未だかつて経験した事がないかもしれない…。
自分たちの欲を満たすために…。
推しに認知してもらえるなら…。
そのためならどんな手段でも構わなくて…。
例え、運営側が公式声明として禁止事項と掲げていようとそんなの彼等からしたら関係などなくて…。
舞台の終わった後にSNSで行われるのは魔女裁判。
どんなに楽しかった作品でも、毎回こうなるんだなぁ…。
『劇場内飲食禁止なのに、近くで音鳴らしながらペットボトル飲料飲んでる人居て最悪』
『開演前の時間に劇場内でシャッター音聞こえてきたんだけど、撮影禁止だったよね?』
『終演後にスタッフさんのアナウンス無視して劇場付近に居た人って、まさか出待ち目的?』
『〇〇さんのファンめっちゃマナー悪かったから、二度と⬜︎⬜︎と共演しないで欲しい』
『私の数列前に座ってる人開演しても帽子かぶったままで例のシーン観れなかった…』
たくさんの…たくさんの言葉たち。
中には、同業の人がルールを破っているのを目撃して報告していたり。
ある日、観劇した舞台でのカーテンコールで役者さんが語った言葉で、私の心は握りつぶされそうな気持ちになった。
「駅に行く帰り道でも、喫茶店でお茶しながらでも、今観た舞台の感想を話し合って欲しいなって思うんですよ。良かったところとか、カッコ良かったところとかね」
「良いところばっかりじゃないですか」
なんて他の役者さんに笑われてたけど。
どうか…どうか貴方は知らないままでいて……ください。
劇場付近…あるいは、最寄駅付近の飲食店等で俗に言う感想戦をしようものなら、総叩きされるんですよ。
まだ公演観れてない人もいるのに、ネタバレになるから配慮してよね…って。
だからどうか…知らないままでいてください。
貴方の望む世界は、なんだかとっても綺麗なんですね。
そんな貴方の描く舞台を観に行っている私には…何重にも巻き付く鎖があって…。
いつかそんな…貴方が望むような世界になったら良いですね。
なんの枷もなく、ただただ舞台を観に行ける日が…そんな日が来る事を願っています。
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