第110話 ダークエルフの種族内 楚・漢戦争一時休戦? (10)

 それどころか? 劉邦赤帝自身の首を差し出す方が良いかも知れないと。迄劉邦赤帝に告げたものだから。


「う、嘘……?」と、彼は声を漏らしたよ。


 そんな君主の慌てふためいた声に子房様は、「嘘では御座いません……」と、冷たく言葉を返す。


 すると? 今の今迄、呂雉様と夫婦間での口論をおこなって、いつもの赤面の面を更に真っ赤にしていた劉邦だが、子房様の話しを聞いて、今度は血の気の引いた青へと移り代わりを始め出したのだよ。


 そして自身が座っていた玉座から、慌てて立ち上がり。自身の身を乗り出すと──。


「ど、どうにか、ならぬのか? 子房?」


 とにかく慌てふためいて、動揺を隠せない様子と声色で、子房様に訊ねた。


 う~ん、でもね? 劉邦赤帝に訊ねられた当の本人でもある子房様だが。


「此度だけは、韓信先生も覇王軍へと寝返ったので、無理だと思いますよ……。最初は荊州の襄陽城まで逃げ延びる案も思案をしましたが……。敵にはあの国士無双であられる韓信先生と、天下随一の知恵者であられる范増様もついているので。あちらこちらと、伏兵を配備させると思いますから。此度だけは逃げ遂せる事は不可能だと思われます……」


 まあ、こんな感じで、情け容赦のない言葉を劉邦赤帝に告げ。劉邦自身も覚悟をするようにとも述べた。


 あああ、無常……。


 劉邦赤帝は今の張子房様の話しを聞き──。


 彼は思いっきり落胆……。『ドン!』音を立てまた玉座に座り込む。


「ううう……。じゃ、儂はどうすればいいのだ……?」


 落胆した気弱な声色で言葉を漏らし。その後は自身の顔を両手を覆い。


『どうしたものか? 何とかならないか?』と、自身でも思案を始めだした。


 そんな落胆した夫の様子を呂雉様は、周りが凍りつ程冷たい目をして凝視をしたのだ。


(ふん! 本当に情けない男だ……。妾は、もう少し骨のある男だと思っていたが……)


 と、心の中で呟いた。


 そして、先程迄の戦の内容を走馬燈のように、クルクルと思いおこすと? ある事を思い出したのだよ。


 まあ、此方からの陣から見た遠目ではあるが、敵の御大将でもある籍が、覇王妃の作戦を手助けする為にと。


 わざわざ御大将自ら、此方側の猛将でもある、 樊噲はんかい 曹参そうしん 夏侯嬰かこう えいの三隊のおとりとなり、凛とした姿と勇猛な若武者ぶりを発揮する姿を思い出した。


 でッ、そんな勇ましい若武者の姿を思い出すと、呂雉様自身の心も熱くなってきたようだ?


 その上、自身の顔や頬も赤くなってきているのも分かる。



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