　漢の陣から立ち去ろうとね。

「ちよ、ちょっと待ってください、呂雉様──」

　漢の陣を立ち去ろうとする呂雉様に、張子房様が声をかけたよ。

　すると直ぐに、劉邦（赤帝）が子房様に、「放っておけ、子房……」と。

　自分自身に無礼極まりない態度を取る呂雉様など放置しておけて、相変わらず不快感をあらわにしながら言葉を告げただが。

「そうはいきません。殿……。このままだと呂雉様は只の無意味な討ち死に終わります。今の我が軍の状態だと、しんがりなどするだけ無用……。それに今の我が軍の置かれている立場を思案すると、一隊や二隊しんがりをおこなったところで無意味……。先ず残りの隊も本国まで帰れません……。此度の戦は我が軍の完全敗北……。殿も覇王に首を差し出す覚悟をした方が宜しいかと思います……」

　まあ、こんな感じでね、子房様は、劉邦（赤帝）に呂雉様をしんがりさせるだけ無駄と諭（さと）したよ。