第92話 項籍・項羽と韓信! (61)

 う~ん、でも? 当の本人でもある籍はね、全く気にもしていないと言うか?


 相変わらず自身の目をお酒に酔った者のように、虚ろにしながらフラフラとした様子だよ。


 妖艶な物の怪の覇王妃様の虜になっているようだから。


 う~ん、そうだね? 今の籍の状態は、良く日本映画の怪談話に出てくるお化 けに取り憑かれて、墓場まで通う主人公のようだよ。


 だから此方も傍から見ていて『籍、大丈夫なの?』と、訊ねてみたくはなる。


 ……その他にも、籍の部屋の至る所に、魔を退散させるような神々しいお札を張ってみては? とも思うのだよ。


 でッ、そんな覇王妃様の妖艶さの虜になり魅入られている籍はと言うと?


「何で韓信? この度は俺の臣下に加わってくれたの? 今まではあれど劉邦の方が良いと俺に言っては臣下に加わる事を拒否してきたのに?」


 まあ、こんな感じで不思議に思う籍は。自らの口をパソコンのモニター画面にキスをするように当て──その先にある覇王妃様のキュン! と、尖った笹耳に囁いた。


「うぅ~ん、あッあん、あぁ……」


 するとさ、覇王妃様? 籍に自身の大きな御立派な笹耳を刺激されたためか?


 妖艶に自身の身体をくねらせながら、吐息まで漏らしたよ。


 まあ、そんな覇王妃様の様子は、まさに物の怪の妖艶なお姫様のようだ。此方も覇王妃様を見ていて──顔を緩ませ、鼻の下がビヨォ~ンと、伸びてきたぐらいだから。


 と、まあ、此方の様子はどうでも良いが!


 物の怪覇王妃様は、籍に吐息を漏らした後は。


「えぇ~とね、籍?何だか、あの赤面男に。新しい室が出来たらしいから。多分韓信の事が飽きて邪魔になったみたい?」


「えっ? そうなの?」


「うん、多分?」


「へぇ~、そうなんだ?」


「う~ん、何でも? この戦の後に領地をやるからと、韓信自分赤帝に言われたらしい……。そこで、子でもこしらえ育てて、ゆるりとした生活をしろと……」


「フムフム、そうなんだ?」


「うん、だから、籍の住んでいる世界に居た頃の遠い昔の事をふと、思い出して、韓信自身が身の危険を感じるし、赤帝にも愛想が尽きたから、此方に寝返ったと言う訳なの……」





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