第3話:冒険者リリアナ1
10歳で冒険者登録をしたリリアナはギルド長の飛び級試験に合格して最初から【 西の都 】でC級冒険者としてスタートした
本格的に冒険者を目指して訓練したリリアナは経験値でも新人とは思えないほどの活躍をした
固定のチームには入らず、治癒魔法と空間魔法による大規模収納で色々なチームから引っ張りだこだった。
「今日は『銀の杯』から大商隊の護衛の参加指名依頼来てるけどどうする?」
受け付け嬢のルイズが言った
「『銀の杯』か苦手だな、特にリーダー、嫁になれってうるさいし!25歳も離れてるし性格ねちっこいから嫌いだし、まだ11歳になったばかりの子供に何言ってんだって!断る!・・・大商隊は心配だから、『乙女の剣』の皆に頼めばどうかな?」
「うわっまだ言ってたのあのおじさん・・・分かった拒否しとくわ、『乙女の剣』?そうね、お姉さま達なら実力経験値申し分ないし30代独身女子の面々と『銀の杯』30後半から50代殆ど独身男達にはぴったり!」
「お姉さん達にも誰か紹介してっていつも言われてるしね、護衛の途中で恋が・・・無いかな・・・」
そうリリアナが言って二人で笑った
「大商隊にお伺い立ててOKならお願いしてみるわ」
リリアナには便利魔法に目がくらんだ者達からしつこく求婚、勧誘されていた
「後は、指名依頼は無いけど商業ギルド長から時間もらえないかって連絡来てたわよ」
「農業用スプリンクラーの件かな?」
リリアナは5歳の時から冒険者ギルドだけではなく商業ギルドにも顔を出して
幾つか商品開発をし、特許を持っている
まだ孤児院から通うリリアナは、そこで暮らす子供たちの仕事が楽になるよう色々開発して作っていた
動力にもなる大きな水車、自動洗濯機、耕運機、自動野菜洗い機、
大人数(おおにんずう)の孤児院では洗濯は大変重労働だった
かなり広い畑を耕すのも、出荷する野菜を洗うのも水魔法が仕える者達はフル活動だった
魔力切れで午後の勉強が出来ない者も居た
「勉強はとても大事」
小さい時からそれを言っているリリアナ
試作した洗濯機は皆、感動ものだった、動力の魔力は少しで動くので小さい子供達でも作業出来る
皆が勉強や遊ぶ時間が増えて活き活きとしていた
農業用スプリンクラーも何時もは、じょうろでこまめにやるか、水魔法でやるか、だったから
そんな大量の水魔法が仕える者が必ず孤児に居るとは限らない、
今はリリアナが居るので朝水撒きを魔法でしてギルドに来ているが長期護衛などで居ないときは大変であった。
「水圧と弁の仕組みを考えてもらってたんだよね」
「ねぇ・・・リリアナは本当に11歳?」
「・・・一応・・・」
農業用の試作実験は孤児院で行っていた、失敗しても商業ギルドが保障してくれるので孤児院に損はない、
試作品を見に見学者が来て、よく働く子供たちを養子や雇ってくれる所も出て一石二鳥だった
リリアナを見て他の孤児の子供もいろいろ発明案を出していた、子供の発想は無限である
幾つか商品になり、個人特許を取っているのはリリアナだけでは無かった
リリアナの功績はこの町では大きい
「孤児院救済は本当は国がやるべきだと思うんだよね、私の力じゃ【 西の都 】全部の孤児院救済無理だし」
「商業ギルドと冒険者ギルドの人たちと、貧民街に日雇い仲介場作ったの、危険汚い仕事多いけどそうゆうのは高額賃金にしてもらってる、戦闘力が無くて冒険者になれなくても仕事がもらえるのは大きいよね、でも殆ど冒険者ギルドに仕事が行くので、そこの日雇いの仕事の量が少ないのよね、貧民街救済ってこれも国か行政がするものだと思うわ」
「教会に私の特許のお金の一部回して、<寺子屋(勉強)>と<給食>を無償でしてもらってる、貧民の子も朝から昼まで勉強したらご飯が食べれるから来るようになったよ、昼からも居てほしいけどなかなか無理みたい、子供達も仕事しなきゃいけないから難しいね」
「治安維持のため、冒険者に交代で商業マーケット街に小屋を建てて常駐してもらってる
トラブル起きたら対策してもらってるの~
女性でも一人で買い物できるようになったって喜んでもらった、続けられるように稼がなきゃ」
「ねぇ・・・リリアナは何を目指してるの?」
「え?みんなの幸せ?」
「・・・・盗賊には容赦しないよね?」
「盗賊は魔物と同じだと思ってる、<みんな>の中には入ってない、凶悪犯には容赦は必要ないと思ってるから」
「極端だよね、容赦のない姿は悪魔に見えるよ、天使と悪魔両方の顔を持つのがリリアナだね」
そんな貴方が好きだと受付嬢は言った
==========
現在、西の都ではなく、ここは王都。
{学園卒業パーティ会場}
マリアンヌ・サンジェスト公爵令嬢はブラウン王子をそっと見ながら
「ブラウン第2王子、その・・・ミシェル、いえ、リリアナさんとは、一線を越えられたのですか?」
公爵令嬢が聞きにくそうに言った
皆ぎょっとして公爵令嬢を見た後、王子を凝視した
「ああ、昨夜はミシェルと一緒に居た、
思い出とか、今後の生きる糧にするとか言っていた、でも私は彼女を手放すつもりは無かったんだ、父上を説得する気でいたのに、今も騙されていたと分かっても、彼女の温もりが忘れられない」
頭を片手で抱えるように嘆いている王子がいる
「全く容姿が違っても、髪も目の色も違ってもですか?」
「・・・・綺麗だと思った、不謹慎かもしれないが血の海に立つ赤い髪の彼女に、見惚れていた自分に驚いている」
じっとブラウン第2王子の銀色の『王敬印(おうけいいん)』を皆が見ている
「追いかけるべきですわ、彼女があなたの従姉の行方不明の皇女に間違いないと思います、婚約破棄はお受けいたします。是非新たなる新時代の王を迎えに行ってください。」
はっと全員が解った!
(((そうだ行方不明の・・・・先王の行方不明の皇女)))
「王に聞いたことが有ります」
暗殺により先王の周りに居た家臣はことごとく殺されていた、皇女を見たことが有るのは王弟のジークフリートのみになっていた
「父を訪ねた時にたまたま王から聞いたのですが、皇女の特徴を・・・・・
母親譲りの赤い髪に、王と王妃の目の片方ずつを受け継いだ青と金のオットアイの瞳、
<魔力石>は左手の甲に鮮やかな青い石があったと」
そう言ったのは宰相閣下の次男のルードヴッヒだった
《赤の死神》リリアナの特徴そのもの
「部隊長、上着を貸してくれないか?」
「王子殿下?」
「返り血で汚れているので申し訳ないが」
「あっ、かしこましました」
王国兵士の隊長に上着を借り、ブラウン王子はギルド会館に向かって走り出した。
一方ギルド会館では
「はい、ハンカチ」
リリアナは自分でも知らないうちに泣いていた
「ありがとう、えへへ未練がましいね、身分違いでどうこうなることも無いのにさ」
涙をハンカチで拭ったリリアナ、その時<魔力石>がマリーンの目についた
「所でさ、リリアナのその<魔力石>の周りの金色は何?」
「え?・・・ああっ・・・それがさ18歳の誕生日にいきなり現れたんだよね~なんだろ、解らないのよ一向に消えなくてさ」
左手の甲を眺めて言った
「熱っ・・・・何?」
左手の甲が熱くなったかと思うと金色の模様が立体的に変わり腕全体に広がっていった
「おわっ・・・変な病気になった?私」
するとガタガタと後ろで音がした
振り返ると人族の冒険者達がこちらを向いてひれ伏している
獣人も膝をついて床にじかに座って此方を向いて頭を下げている
「ちょっと何?どうしたの?皆!・・・ねぇ・・・やだ変だよ」
マリーンに助けを求めようと見ると
同じく床に膝をついていた・・・
「どうして?・・・何か言ってよマリーン」
「くっ・・・あなたに忠誠を誓います」
「え?・・・どうしたの?マリーンやだ・・・冗談でしょう」
「あなた様から神々しい力を感じます、その下では貴方からの命令は絶対として行使されるでしょう」
「・・・・絶対的な命令?・・・・お願い、普段通りにして皆・・・」
ガクッと獣人とエルフのマリーンは力が抜けたようになり、ひれ伏している人族はゆっくりと上体を起こした
しかし、皆の目が違っていた
「「「「王だ・・・新たな王が降臨された!」」」」
普段通りとはいかないようだった
誰も立ち上がるものは居ない、ひれ伏すものは居ないが皆胸に手を当てて忠誠の仕草をしている
「やだ、皆可笑しいよ・・・そうだ私仕事行かなきゃ・・・ギルド長もう出立したのよね」
「はい、昨日出ました大商隊は港町ホルスに向かっております。リリアナ様の獣馬でしたら半日で追いつくと思われます」
敬語で話すマリーンに悲しい感じがしたリリアナ
「すぐ追いかけるわ、帰ってたらその態度止めてね、私王さまじゃないからね!」
逃げるようにギルド会館の裏に獣馬を取りに来た、馬番がリリアナを見るとひれ伏した
もう、何が何だか分からなくなって、悲しくなってきた
「行ってきます」
馬番からの返答は無い、逃げるように城門に向かって馬を走らせる
走っているそばの人たちが次々とひれ伏す姿を見てまた悲しくなった
(やだ何が起こっているの?)
夕闇せまる街道をリリアナ一人馬を走らせている
リリアナが街道を駆け始めた頃王子がギルド会館に到着した
ギルド会館の様子がおかしいことに王子も気が付いた、
「《赤の死神》リリアナは?」
受付で叫んだ
ビクッとギルド会館に緊張が走った
「失礼ですがご身分をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
うすうす感じていたマリーンだったが、慎重になるべきだと思い聞いた
「【聖クランデイール王国】第2王子ブラウン・クライスターだ」
(((来た~王子!)))
皆が思ったリリアナの思い人
「《赤の死神》リリアナこと、【聖クランデイール王国】先王皇女、マルガリータ・クライスターを迎えに来た」
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