49 二十七日目の4 カウントダウン

 小料理屋の店主に貰ったオニギリを食べながら下山し、バス停まで戻る道すがら、オレたちは二頭の鹿に出会した。


「鹿じゃ」と鉄朗。

「鹿やな」とオレ。


 疲れていたのでそれ以上の会話は無かった。

 二頭の鹿はトロッコ道の脇から逸れて、山奥へ逃げて行った。

 それ以降、山に居る間、不思議と雨は降らなかった。


 午後三時、バス停に戻り、バスを待って小料理屋に戻れば五時を回った。

 昨日と同じようにトラックで風呂に行き、戻ると鍋料理が用意されていた。


 他にもお客が来ていたので、オレたちは料理やの隅で二人で鍋をつついた。

 締めのオジヤを食べながら「帰るまでが旅やな」と鉄朗が言う。

 オレは頷いた。


 明日の昼に屋久島を出るフェリーに乗り、そのまま志布志港に向かう。

 翌日午後のフェリーに搭乗し、明後日には大阪の港に辿り着く。


「あと三日か」

「あっちゅう間やった気ぃすんな」

「今年は実質一週間やしな。鉄朗、残りの夏はどないするんや」

「分からん。一人で東北でも旅しよかな」

「ほんまか」

「野武彦は?」

「旅の記録を書き上げに、爺ちゃんところ行かなあかん」

「カブで行くんか?」


 どうせなら、とオレは答えた。

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