47 二十七日目の2 バトルオブ屋久杉ep.2

 登山口からしばらくはトロッコ用のレールが敷かれていた。枕木を踏みながら一歩ずつ進み、山をくり抜いて作られた洞窟を抜けると、山間を繋ぐ橋に出会した。


 頼り無い足場の橋で、雨に濡れた足場は滑りやすくなっとる。

 橋の上から見た谷底は、雨で緑を深くした木々と、川に沿って並ぶ白い岩石の上に、ふわふわとした霧が立ちこめている。


 夏の盛りだが、冷たい空気が肺を満たした。


 橋を渡りきった所で、雨が降った。

 オレたちは上だけカッパを着て、また歩き出した。


 それから幾度も橋が出てきて、中には手摺りの無いものまであった。雨と覚束無い足場に神経を削られて、実際よりも多く体力を奪われた。


 トロッコの道はしばらく続き、雨も降っては止みを繰り返す。

 勾配はほとんど無かったが、他の登山客がそれなりに居たため、回りとペースを崩さず歩くのにも気を遣った。


 何より、常にカメラを構えながら動くのも疲れた。


 やがてトロッコ道の終りが見え、開けた場所に登山客たちが寄り集まって休憩していた。この時点で二時間歩き詰め。先はまだ長いか、と思って視線を上げると、木作りの階段が見えた。


 ――登山だものね、登るよね。野武彦


 オレはずぶ濡れのズボンに付いた泥を手で払って、歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る