16 七日目 がっかり天丼(美味い)

 早朝に公園を出たオレたちは、苫小牧のフェリーを目指して走り出した。

 道央から南へ入ると、天気は悪かったものの気温は段違いで、路面の状態も良かった。のんびり走っていると、オレのヘルメットの隙間にモンキチョウが飛び込んで来て挟まる、という事件もありながら、日勝峠に入る。


 標高1000メートルにも及ぶ峠で、基本的にギア二速で登ると、もうとにかく遅い。

 現在の高さを示す動物型の看板が満面の笑みで、オレたちはヤツらにしかめ面をしつつ、どうにか峠を越えて、日高町の日本橋という寿司屋で昼食にした。


 ランチタイムの天丼が600円ということで注文すると、値段に似つかわない大きな海老が五本乗った天丼が出た。


 こらええな、と言って一眼レフを構えたら、異変に気付いた。


「カメラぼやけてる」

「マジで?」


 天丼が来る間、どうにかしてカメラを直そうとしたが、全く直らん。

 料理が出て、それを鉄朗が食べて「美味いなあ」と感嘆したが、オレは「おう……」と落ち込みながら食事した。


 カメラ不調のまま食事を終えて、フェリー乗り場を目指して残り100キロほどを進み、午後7時にはフェリー乗り場に着いた。


 フェリーが出るのは明日の朝なんで、駐輪場にバイクを駐めて、フェリー傍の複合施設で待機を始めた。待合所は同じように明日のフェリーを待っている人たちで溢れていて、オレたちは土産屋でカップラーメンを買って食べた。


 軽食の晩飯を終えてから、またカメラの様子を見てたら、不思議なことに元に戻っとる。どうやら標高差でレンズが曇っていたらしかった。

 心配事が無くなったオレは「おい! 昼の天丼美味かったなあ! おい!」と鉄朗の肩を叩いていたら、「うざ」と吐き捨てられた。


 明日のフェリーを待って、オレたちは待合所のベンチに横たわった。

 大きな窓から見えているフェリー乗り場のオレンジのライトが、濡れた路面にじんわりと広がっていて、幾つもの夕陽が海に溶けているようやなと思った。


 貧血で倒れたり転けたりカメラがやられたりと散々な目に遇ったが、まだたったの一週間か、と肩を落として眠った。

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