11 四日目の1 人間性の奪還
目覚めたのは12時を過ぎてからやった。
キャンプ場に泊まったオレたちは、昨夜の疲れを残したまま、のそのそと昼食兼朝飯を作った。米を炊き、持ってきたインスタント食品の中から牛丼を選ぶ。
食事もそこそこに、緑に囲まれたキャンプ場を出るころには、また曇天が空を覆った。今日もたぶん雨が降るやろう。
次の目的地を北海道の端、知床あたりに決めて、キャンプ場を出てしばらく走っていると、オレはついにアレを見付けた。
しまむら
やっとや。これでオレは人間に戻れる。早く人間になりたい。
ところが、先頭を走っとった鉄朗がしまむらを無視してドンドコ向こうへ行き始めた。オレはこの旅で初めてクラクションを鳴らした。
ビィーッ、というけたたまし音がして、鉄朗が戻ってくる。
「どうした」
「どうしたやあらへん」と言って、オレはしまむらを指差した。
「なんやねん」
「オォイ! アホか! パンツ買うんじゃ!」
「ああっ! 忘れとったわ」
「忘れたやあるかい。ほんま悪いことした方は簡単に忘れよるで。しばくぞ」
「悪かったって。買ってこいや」
「じゃかしいわ。そこで待っとけ」
駐車場にバイクを駐め、しまむらに入る。
他の商品には目もくれず、三枚入りのパンツを二セット取って素早くレジに行った。レジには若いバイトの女の子が居て、いらっしゃいませ、と言いながら会計をしてくれた。袋要りません、と言って、その足でしまむらのトイレに向かう。
早速買った商品の外装を剥がして、ズボンを脱いで装備する。
やっぱりパンツがあると違うなぁ。
とホッとしたのも束の間、待てよ、と思う。
店入ってすぐパンツ買ってトイレ直行って、オレ漏らしたと思われたんちゃうか?
絶対そうや、と絶望しながら、担当した店員が可愛かったのも禍し、精神的ダメージは三倍にも膨れあがった。
駐車場に戻って今あったことを鉄朗に説明しながら、お前が通り過ぎようとしたから気が回らんかったんやぞ、とボヤくと、鉄朗は「へへへへへ」と高い声で笑いやがった。イラッとしたが、こんなところで喧嘩しててもしゃあないので、出発した。
目指すは道の駅うとろ。それと、いい加減に風呂にも入ろう。
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