8 二日目 北海道上陸
翌日はほとんどフェリーで移動するということもあって、オレたちは海に昇る朝日を拝むことにした。朝五時に昇った太陽の写真を持参した一眼レフカメラで捕えたあと、お役御免とばかりに寝床に戻って眠り、次の日、昼過ぎに起きてだらだらし、弁当を食って、夜八時には小樽の港に到着した。
フェリーから降りて北海道に上陸すると、夜の路面には深い霧が掛かってて、オレンジの外灯を水彩でぼかしたようになっていた。不気味というよりは、異世界にやって来たみたいだった。
あと、めちゃくちゃ寒い。
夏やって言っても北海道。
しかも今のオレはノーパン。防御力が普段より1少ない。
陽が昇れば暖かくなるやろうと、ともかくバイクを走らせて、それにしても寒い、上着を買おうと古着屋の駐車場に駐まると、地元の人間が「旅の人? その服装、死ぬよ」と余りにも直截の助言を投げてきた。
そらアカンな。とそそくさ店に入って、どんな上着を買うか物色していると緑のポンチョを見付けた。鉄朗と一緒に「誰が買うねん」とバカにしていると、何だか無性にそれが欲しくなって、買ってしまった。
このポンチョが全くウィンドをブレイクせんで、後々後悔することになった。
八時半ごろに古着屋を出て、「道の駅しんしのつ」を目指し始めた。Googleマップ上、60kmと記されてたから、原付の時速30kmで単純に割って二時間や、と考えとったが、そう上手くはいかん。
高低差もあるし、何より雨に降られた。途中でカッパに着替え、外灯も無い道をたった二台のバイクで入っていると、前を走っていた鉄朗がオレのバイクのヘッドライトの明かりに照らされ、その姿が道路の反転して映り込み、まるで暗い海の上をぼーっと浮かんでいるようで、ホラーショーさながら。
北海道に着いて早々、肉体と精神は苛まれ、走り始めて既に三時間。
体もすっかり冷え切ったところに、運良くコンビニを見付け、そこで買ったホットレモンはこの旅で一番美味かった物に認定されるほど、辛かった。
コンビニから数十分後に道の駅を見付け、屋根のあるベンチの傍でテントを張ろうとすると、鉄朗が、
「いや、道の駅のテント泊は法律的にグレーらしい」
「テントはバレたらまずいっちゅう訳か。どないする」
「仮眠はええんや。寝袋と銀マットで寝るしかないな」
「ベンチでか?」
「ベンチでな」
雨の音を聞きながらベンチで寝るんは、夜の海をバイクで走るのと同じくらい辛かった。明日からはなるだけキャンプ場を探そうと思って、寝た。
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